強いHonda愛ゆえのアツい<NSX論>/ホンダ 新型NSX 試乗レポート(4/4)
- 筆者: 河口 まなぶ
- カメラマン:茂呂幸正・Honda
5年前に想い描いたNSX像、その理想と現実とのギャップ
実は5年以上前に、将来のNSXを予測する原稿を書いたことがある。その時僕が書いたのは・・・・アルミ技術が進化してより軽量化が実現できるから、ハイブリッドで装備充実でも1.5t程度に抑えられるだろう、エンジンだって3.5リッターのV6ターボなら500psは軽くいけるし、そこにモーターを組み合わせた電動4WDならパフォーマンスは世界一級レベルになるだろうと。それでいてエンジン技術に優れるホンダだから、リッター15km/Lなんて軽く超えるだろう・・・といった話だった。
しかし実際には、スーパースポーツと呼べるだけのスペックとある程度の速さは手に入れたが、1.8t近く燃費も13km/L程度に止まる。5年前の僕は5年後にもっと進化しているだろう技術を予測したが、そうではなかった。いやむしろ、そうした凄さは、当時想像もしなかった電気自動車などが実現していたりもするのが実際の現在、だ。
10年後、いや5年後のNSXの姿すら、僕らにはまだ見えて来ないのだ
新型NSXは、スーパースポーツの大市場であるアメリカで、ライバルを凌駕して勝負するビジネスを行なう必要がある。この点に関しての話を聞いていないが、少なくとも日本では来年2017年からの販売開始にもかかわらず、年間100台程度を売る計画しかないようで、当然全て売り切れている。世界合わせて年間で1000台程度と聞いたが、これで長くビジネスを続けていけるのだろうか。
それともここで儲からなくても、他の大衆モデルで稼ぐからよいのだろうか?
しかしそれでは、スーパースポーツを専門に作って売って利益をしっかりとあげているメーカーには、到底太刀打ちできないだろう。
またビジネスという点では、その手法や販売方法も含めて、サステイナブルな感覚が感じられないだけに10年後、いや5年後にどうなっているかも想像ができない。
もっともそこは世界に名だたる大手自動車メーカーだから、きちんとしたロードマップがあり、思わず僕らが「すいませんでした」というような、戦略があるのだろうが・・・。
決して初代が最高だとも絶対だとも思わない、だがそこには深い示唆があった
長々と書いてきたが、僕は何も初代NSXが最高だとも絶対だとも思っていない。そしてあの頃に戻りたいなんてちっとも思わない。昔のクルマよりもむしろ、新しいクルマの生み出す新しい価値観に興味津々なタイプだ。
ホンダならば、現在のスーパースポーツの世界に新たな価値観を持ち込んで違う土俵を築き上げるようなプロダクトと、その手があったかと思わせる新たなビジネスと、いまどきだからこそのユニークなソフトウェアを組み合わせて展開する・・・と思っていた。しかし実際はそうではないようだ。
とはいえ、最高とも絶対とも思わない初代NSXを振り返ると、いろんな部分に深い示唆があったと改めて思う。あらゆる部分に感心させられたり、驚かされたりする部分があったように思う。そうしたことを考えて考えて考え抜いた末のプロダクト、そんな空気感があった。大きな声でいわずとも、聞かれたらちゃんと答えられるロジックが、そこかしこに感じられるクルマだった。
ジェット機だって実現させたHondaだからこそ抱く、強い期待感
いや本当に長くて退屈な文章を延々と続けているが、それはやっぱりNSXに対して、いやホンダに対して、僕自身が並々ならぬ期待を抱いているからに他ならないのだろう。
僕はホンダのビートに始まり、S2000、NSX タイプS、そして02年式 NSX タイプRに育ててもらって今があるから、分かっていてもどうしても期待をしてしまう。
そしてあれから時間が大分たって、21世紀になってジェット機まで世に送り出してしまうホンダだけに、きっとものすごいNSXが出てくるだろうと自然に思ってしまうのだ。
もちろん実際に新型NSXに乗ってみて、クワイエット・モードの他にない感覚や、モーター制御による異次元ハンドリングと呼ぶ世界観は、確かにひとつの特徴になっているとは思う。事実、こうしたスーパースポーツは他にないという時点で、新型NSXは新たな部分を持っている。ただ個人的には、もっともっと強い期待感があったことにも間違いはないわけだ。
でも、そうした僕の期待感こそが幻想であるのかもしれない。もう初代が登場してから26年という長い時間が経過して、世の中はすっかり変わったのだ。
そう思うと26年前に、世の中を一変するかもしれないと思えた企業も、今となっては企業としての成長を大切にする、冒険よりも業績を優先する存在になっていても、なんの不思議もない。
事実40代の後半にいる僕だって、20代の時ほど根拠のない自信と勢いと情熱と想いの強さだけで動けるわけではない。ある程度のことをして、守るべきものも生まれた。そうした中で、明日を顧みずに挑戦していくのは本当に大変なことだと思う。
それをホンダに置き換えれば、執念で作り上げた究極の一台を送り出すよりも、なるほど ”ほどほどに”存在感を示せてビジネスできる一台の方が正解なのかもしれない。
ひと昔前なら妄想でしかなかった世界を現実にし、人々の行動さえも変えたAppleのように
ところでAppleは、iPodとiTunesで音楽機器と音楽業界を一変させただけに止まらず、iPhoneを生み出したことで、携帯電話の概念を崩壊させて、そこには通話も文字コミュニケーションも撮影も視聴も記録も何もかもが可能な、ひと昔まえからすれば妄想の産物としか思えないようなデバイスを現実のものにしてしまった。そして人々の行動さえも変えた。
そんな感覚を、クルマにおいてホンダに求めるのは無理な話なのだろうか? 果たしてそれは、この時代をリードする他の自動車メーカーがなすべきことなのだろうか?
ホンダではなく、テスラやグーグルに期待すべきか、あるいはまだ名も無い新興メーカーが登場するのだろうか。
ホンダなら、きっと世界を変えてくれる・・・今もそう期待する僕がいる
でも、なぜだろう、やはりホンダに期待をしてしまう自分がいる。
そしてやはりNSXには、世界のスーパースポーツが、全くキャッチアップできないような新価値や新次元を作り出すことを期待してしまうのだ。
それと同時に、新たなジャンルやカテゴリーを作った方が良いだろうと思えるような、我々をワクワクさせてくれる新たな時代の新たなホンダのプロダクトの登場を願ってやまない。
なぜならそこにホンダがあって、ホンダは僕らの目を輝かせてくれるはずだと、実は未だに信じてやまないからだ。
世界に新たな何かをもたらしてくれる、と。
僕はそんなホンダが見られることを、心底楽しみにしているのだ。
[レポート:河口まなぶ/Photo:茂呂幸正・Honda]
Honda NEW「NSX」 主要諸元
全長x全幅x全高:4490x1940x1215mm/ホイールベース:2630mm/乗車定員:2名/車両重量:1780kg/エンジン種類:V型6気筒 ツインターボチャージャー付 DOHC 24V ガソリンエンジン/総排気量:3492cc/駆動方式:4WD(SPORT HYBRID SH-AWD)/[エンジン]最高出力:507ps(373kW)/6500-7500rpm/[エンジン]最大トルク:56.1kgf-m(550N・m)/2000-6000rpm/[ダイレクトドライブモーター(後)]電動機種類:交流同期電動機/[ダイレクトドライブモーター(後)]最高出力:48ps(35kW)/3000rpm/[ダイレクトドライブモーター(後)]最大トルク:15.1kgf-m(148N・m)/500-2000rpm/[ツインモーターユニット(前 ・左右)]電動機種類:交流同期電動機x2基/[ツインモーターユニット(前 ・左右)]最高出力:37ps(27kW)/4000rpm【x2基】/[ツインモーターユニット(前・左右)]最大トルク:7.4kgf-m(73kW)/0-2000rpm【x2基】/システム最高出力:581ps(427kW)/システム最大トルク:65.9kgf-m(646N・m)/トランスミッション:9速デュアルクラッチトランスミッション/燃料消費率:12.4km/L[JC08モード燃費]/サスペンション:(前)インホイール・ダブルウィッシュボーン・フロントサスペンション/(後)インホイール・マルチリンク・リアサスペンション/タイヤサイズ:(前)245/35ZR19 93Y/(後)305/30ZR20 103Y/製造元:ホンダ・オブ・アメリカ MFG.,INC.(製造国:アメリカ)/輸入販売元:本田技研工業株式会社/メーカー希望小売価格:28,700,000円[消費税込]
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