ホンダ 新型フィット・フィットハイブリッド[2013年9月発売予定] 新型車解説・試乗／渡辺陽一郎(3/4)

新型フィットの走行安定性と乗り心地は「VW ポロ」を参考に

プラットフォームは、ボディの下まわりに装着される骨格を含めて大幅な見直しが図られた。

サスペンションはフロント側がストラットの独立式、リア側がトーションビームの車軸式で形式は同じだが、新設計と考えて良い。走行安定性と乗り心地に関しては「フォルクスワーゲン ポロ」が開発する上でひとつの指標となった。

ポロと比較した時に改善課題となったのは「乗り心地」と「操舵感」。

例えば旋回中に段差を乗り越えた時など、ポロは修正操舵の舵角が小さくて済むが、現行フィットは乱れ方がやや大きい。段差を乗り越えた瞬間に車両を曲げる力が削がれ、ハンドルを一度内側に素早く切り込んで、車両が内側を向いたら戻す操作を強いられる。路面からのショックも角が立った印象になってしまう。

新型フィットはプラットフォームの刷新と併せてボディ剛性を高め、サスペンションも入念に煮詰めることで、路面状況の変化に基づく走行安定性の乱れを抑え込んだ。

前述のようにフロント側がストラットの独立式、リア側がトーションビームの車軸式というサスペンション形式は全車共通だが、ショックアブソーバーの減衰力など細かなセッティングは、搭載されるエンジンに応じて分けている。

内訳は1.3リッター／1.5リッターの15X／同RS／ハイブリッド／ハイブリッドSパッケージという具合だ。

装着されるタイヤも、1.3リッターの13Gは14インチ（Sパッケージは15インチ）、1.5リッターの15Xとハイブリッドは15インチが基本で、1.5リッターのRSとハイブリッドSパッケージには16インチが装着される。

タイヤの指定空気圧はいずれもフロント側が220kPa、リア側が210kPa。燃費性能の向上を目的に、むやみに高めることはしていない。ちなみに現行フィットの14インチタイヤは、フロント側が230kPa、リア側が220kPa。新型フィットの1.3リッターは燃費性能を向上させながら、指定空気圧は10kPaずつ引き下げられる。

実際、全般的に乗り心地は現行フィットよりも向上し、粗さが抑えられて重厚感が増している。14インチタイヤは大きめの段差を乗り越える時の突き上げ感が少し気になるが、1.3リッターエンジンを搭載したコンパクトカーの中では優れた部類だ。

15インチタイヤになると、段差でのショックも角が取れた印象になり、上級グレードであることを感じさせる。

以外にもRSの運転感覚は「欧州車風」

意外だったのが「RS」。

16インチタイヤを装着するスポーティグレードとあって硬めの乗り心地を想像してしまうが、実際には適度な引き締まり感と重厚感が伴って、その運転感覚は“欧州車風”。走行安定性は後輪の接地性が高く、安心できる。あくまでも後輪をしっかりと接地させた上で、自然に曲がる性能を追求しているのだ。

「RS」は他のグレードに比べて操舵感が少し機敏だが、基本的な方向性は同じ。曲がる性能を追求して安定性を下げる設定ではない。クルマ好きが運転すると、もう少し回頭性を高めて欲しいと感じるかも知れないが、安全を優先させている。