ホンダ N-VAN vs ダイハツ ハイゼットカーゴ どっちが買い!? 徹底比較

話題の軽商用バンを徹底比較!

軽商用バンが話題になることは少ないが、2018年7月13日に発売されたホンダ N-VANは違う。ホンダ N-BOXをベースに開発されたこともあり、注目度が高い。

軽商用バンの一般的なレイアウトは、エンジンを前席や荷室の下に搭載して後輪を駆動する「キャブオーバー型」だ。ダイハツ ハイゼットカーゴ、スズキ エブリイ、N-VANの前身となったホンダ アクティバンは、いずれもこのタイプになる。ボンネットに相当する部分を短く抑えられるから、荷室長が1700~1900mmと長く、例えば長さが1700mm、幅が1100mmのパレットなども収まる。

しかしN-VANは、開発と製造のコストを抑えるためにN-BOXをベースに開発されたから、エンジンはボンネットの内部に収まって荷室長は1510mmと短い。

この不利を補うために、左側はピラー(柱)をドアに埋め込んで、前後ともに開いた時は開口幅が1580mmに達するようにした。助手席も後席と同様に小さく格納できるから、運転席の周囲を真っ平らな荷室にアレンジできる。N-VANは、大きな荷物の積載は苦手だが、小さな荷物をたくさん積む用途に適する。

そこで、N-VANとハイゼットカーゴを比較してみたい。ハイゼットカーゴはエンジンを前席の下に搭載する典型的な軽商用バンで、荷室長も1755~1860mmだから、N-VANに比べて200mm以上も長い。

■【画像】N-VAN vs ハイゼットカーゴ、“買い”はどっち!?

ボディスタイル/サイズ/視界/取りまわし性比較

規格で最大サイズが定められている軽商用バンだから、全長の3395mm、全幅の1475mmは両車とも等しい。2WDの全高はN-VANのロールーフが1850mm、ハイルーフが1960mmだ。ハイゼットカーゴは1765mm・1875mmになる。N-VANは背が高い。

両車ともに水平基調のボディだから、視界は優れている。2WDの最小回転半径はN-VANが4.6m、ハイゼットカーゴはホイールベース(前輪と後輪の間隔)の短い後輪駆動車だから4.2mに収まる。小回り性能ではハイゼットカーゴが有利だ。

勝者:ハイゼットカーゴ

内装のデザイン/質感/操作性/視認性比較

現行ハイゼットカーゴが発売されたのは2004年12月だが、数回にわたって改良を受け、2017年11月にも安全装備のスマートアシストIIIの採用と合わせて内装を見直した。従ってインパネなどのデザインが古い印象はないが、質感は設計の新しいN-VANが勝る。

またN-VANは軽商用バンでありながら、全グレードにフルオートエアコンを標準装着して、この見栄えも良い。高い位置に装着したから操作もしやすい。

勝者:N-VAN

前後席の居住性比較

一般的に運転席と助手席の座り心地は同程度だが、N-VANは異なる。運転席はサイズに余裕を持たせ、肩まわりや座面のサポート性も良好だ。長距離を移動する用途にも適している。

しかし助手席は座り心地がかなり違う。小さく格納することを目的に開発され、座り心地が平板で特に座面のサポート性が不満だ。スライド機能も備わらない。

ハイゼットカーゴは、運転席の座り心地はN-VANに見劣りする。長距離を移動するのに支障はないが、肩まわりのサポート性で差がついた。その代わり助手席は、ハイゼットカーゴが快適だ。

後席はグレードによって造りが異なる。N-VANの場合、GホンダセンシングやLホンダセンシングには、リアシートピローが装着されないが、上級に位置するプラススタイルのファンホンダセンシングやクールホンダセンシングには備わる。

ちなみにリアシートピローとは、通常であればヘッドレストと表記する装備だが、N-VANはヘッドレストの要件を満たせていない。そこでリアシートのピロー(マクラ)という言葉を使う。

後席の足元空間は、乗用のN-BOXに比べると大幅に狭い。商用車には後席よりも荷室の面積が広くなければいけない構造要件が適用されるからだ(その代わり税金が安い)。N-VANに身長170cmの大人4名が乗車すると、後席に座る乗員の膝先は前席の背面に触れてしまう。前述の構造要件のために背もたれも垂直に近く立てられた。座り心地は窮屈だが、床と座面の間隔は相応に確保され、後席に座った乗員の足が前席の下側に収まりやすい。短距離の移動に限れば4名乗車も可能だ。

ハイゼットカーゴの後席も、上級のクルーズと、ベーシックなデラックス以下のグレードでは造りが異なる。試乗車はデラックスSAIIIだったから、後席はサイズが小さく、座面も平板だ。床と座面の間隔も不足して、座ると膝が持ち上がる。

ただしN-VANに比べると荷室長に余裕があるから、前述の構造要件が適用されても後席の面積を広げられた。身長170cmの大人4名が乗車して、膝先には握りコブシ1つ少々の余裕がある。上級のクルーズであれば、N-VANよりも座り心地が快適だ。

居住性はハイゼットカーゴの勝ちだ。N-VANでは助手席の座り心地にも不満が伴うから、満足できるのは運転席だけだが、ハイゼットカーゴであれば設計の古さを感じるものの、少なくとも前席を使った2名の移動に不満はない。

それでも1名だけで乗車する機会が圧倒的に多いなら、N-VANが満足できる。運転席だけはN-VANが上質に仕上げたからだ。用途に応じて選びたい。

勝者:ハイゼットカーゴ

乗降性比較

乗降性はN-VANが優れている。エンジンを車両の前側に搭載した前輪駆動だから床が低い。乗降時に足を大きく持ち上げる必要はない。

ハイゼットカーゴは荷室を含めた有効室内長を伸ばしたために、前席と前輪の収まるホイールハウスの間隔が近づいた。前席の乗り降りでは足の取りまわし性が良くないが、N-VANはN-BOXと同じ要領で乗降できる。

後席もN-VANが注目される。低床設計で床が低く、さらに左側はピラーを前後のドアに内蔵させたことで、開口幅が1580mmとワイドに広がるからだ。ダイハツタントもピラーレス構造だが、開口幅は1490mmだからN-VANが上まわる。

ハイゼットカーゴの開口幅も770mmだから、ピラーを備えたムーヴキャンバスの595mmに比べればワイドに開く。が、N-VANとは機能が根本的に異なる。

勝者:N-VAN

荷室比較

N-VANはN-BOXをベースに開発されたから、エンジンはボンネットの内部に収まる。ハイゼットカーゴはタントのような乗用車とは異なる軽商用車の専用設計だから(乗用のアトレーワゴンも用意するが)、エンジンは前席の下に搭載して後輪を駆動する。そのために前席を前寄りに設置して、荷室を広く確保できた。

カタログに記載される荷室長は、冒頭でも述べたようにハイゼットカーゴは1755~1860mmだ。N-VANは1510mmだから、200mm以上も短くなってしまう。畳のような幅が広くて長い荷物を積む用途には、N-VANは使いにくい。

またハイゼットカーゴは商用車として開発されたから、重い荷物の積載に適する耐久性ももつ。荷物を積んだ時には後輪の荷重が増えるので、後輪駆動の方が駆動力の伝達効率も高い。例えば荷物を積んで雪上の坂道発進をする場合、後輪にはさらに荷重が集中して路面は滑りやすいから、後輪駆動のハイゼットカーゴが有利だ。

一方、N-VANのメリットは、左側の前後のドアを開くと開口幅がワイドに広がり、さらに後席と併せて助手席まで畳めることだ。格納した助手席部分の室内長は2635mmだから、細長い荷物であれば左側面から積み込める。

また比較的小さな荷物をたくさん積む場合、人手が多ければボディの側面とリヤゲートの2箇所から収納できる。使い方によっては作業効率が高まる。

N-VANは荷室の床が低いことも特徴だ。リヤゲートの部分で測った荷室床面の地上高は、N-VANが525mm、ハイゼットカーゴは635mmになる。重い荷物を積む時に、ハイゼットカーゴは110mmも高く持ち上げねばならない。

荷室長の長いハイゼットカーゴとシートアレンジの機能が多彩なN-VANは一長一短だが、たくさん重い荷物を積むという商用車本来の機能で考えると、軽商用バン専用車のハイゼットカーゴが優れる。高いコストを費やしただけのことはある。

■【画像】N-VANの荷室の使用イメージ

またN-VANで助手席を格納すると、荷室がドライバーの左側まで張り出してくる。ガラスの扉が付いた細長い食器棚などを積み、左側から側面衝突を受けたりすると、荷物がドライバーに危害を加えることも考えられる。運転席と助手席の間には、ペダルの部分に荷物が入り込まないようにする小さな「小物侵入防止板」は備わるが、ドライバーを積極的に保護する機能はない。これは今後解決すべき課題で、現状では衝突時の危険にも配慮して荷物を積む必要がある。

なおヘッドレストがリアシートピローになったり、ベーシックなグレードではそれすらも非装着になることまで含めて、N-VANに限らず商用車は全般的に安全意識が低い。N-VANはせっかくホンダセンシングを装着したのだから、ほかの部分の安全性も高めて、安全に配慮した商用車開発の手本を見せて欲しい。

勝者:ハイゼットカーゴ

動力性能&エンジンフィーリング比較

ターボを装着しないノーマルエンジンのグレードを、荷物を積載しない状態で乗り比べると、N-VANの加速力に余裕がある。特に停止状態から発進した時、ハイゼットカーゴでは、メーター読みで時速30kmに達するまでの加速が緩慢だ。ATが荷物の積載に配慮してトルクコンバーター式の4速になり、実用回転域の駆動力が少し乏しく、ボディが若干重いことなども影響した。

その点でN-VANは実用回転域の駆動力が少し高く、ATはCVT(無段変速AT)だから、動力性能を有効活用しやすい。

ターボを装着したエンジンについても、N-VANが幅広い回転域で高い動力性能を発揮する。

走行安定性もN-VANが勝る。乗用のN-BOXに比べると操舵に対する反応が鈍く、峠道などでは曲がりにくく感じるが、ハイゼットカーゴよりは自然な印象だ。操舵した時の反応が遅れにくく、カーブを曲がる時も旋回軌跡を拡大させにくい。前輪駆動だから低床で低重心になり、ホイールベースが70mm長い2520mmになることも良い影響をもたらした。

勝者:N-VAN

乗り心地比較

両車ともに軽商用車だから、重い荷物の積載に対応して指定空気圧が高い。前輪は280kPa、後輪は350kPaだ。乗用のN-BOXの15インチタイヤ装着車は前後輪ともに210kPaだから、N-VANとハイゼットカーゴは空気をかなり充填している。一般的に250kPaを超えると、乗り心地に悪影響が生じる。

N-VANとハイゼットカーゴの乗り心地は、N-BOXに比べると硬いが、突き上げ感は抑えた。ハイゼットカーゴも基本設計は古いが、乗り心地はさほど悪くない。軽商用車という厳しい条件の中で、相応の乗り心地を確保した。

勝者:引き分け

安全&快適装備比較

安全装備はN-VANがミリ波レーダーと単眼カメラをセンサーに使うホンダセンシング、ハイゼットカーゴが2個のカメラをセンサーに使うスマートアシストIIIを備える。両システムともに、歩行者や車両と衝突する危険を検知すると警報を発して、ドライバーが回避操作をしないと緊急自動ブレーキを作動させる。

N-VANは路側帯を歩く歩行者と衝突する危険が生じたり、車線を逸脱しそうになった時、電動パワーステアリングの制御で回避操作を支援する機能も備わる。

またN-VANは、車間距離を自動制御できるクルーズコントロールなど、運転支援機能も充実させた。

勝者:N-VAN

燃費性能&エコカー減税比較

2WDでATのJC08モード燃費は、N-VANのノーマルエンジン(ノンターボ)が23.8km/L、ターボは23.6km/Lとなる。ハイゼットカーゴは、ノンターボが17.8km/L、ターボが17.2km/Lだ。ボディが重くエンジンの負担が大きいため、ターボとノーマルエンジンで燃費にあまり違いが生じない。動力性能はターボが大幅に高まるから、自動車専用道路や峠道を走る機会の多いユーザーは積極的に検討したい。

その上で比べると、N-VANの燃費数値が優れる。ATがN-VANはCVT、ハイゼットカーゴが4速ATになることも影響した。

エコカー減税は、軽商用車の基準が適用される。N-VANではノーマルエンジン搭載車が免税になり、ハイゼットカーゴもグレードに応じて減税される。

勝者:N-VAN

グレード構成と価格の割安感

機能や装備と価格のバランスを見ると、N-VAN・Gホンダセンシング(126万7920円/2WD)と、ハイゼットカーゴデラックスSAIII(115万5600円)が吊り合う。N-VANは左側のピラーをドアに内蔵したり、シートアレンジが凝っているため、価格も少し高くなった。価格の割安感は、両車ともに同等だ。軽商用車は価格競争が激しいから、あまり差が生じない。

勝者:N-VAN

総合評価/どっちが買い!?

最大積載量は両者とも350kgが上限で差はないが、重い荷物を積む用途には、すべてが商用車としての専用設計になるハイゼットカーゴが適する。

一方、食料品や洋服のような、比較的軽く小さな荷物をたくさん積む使い方ならN-VANだ。プラススタイルのファンホンダセンシングやクールホンダセンシングは、外観がN-BOX風でブティックなどにも似合う。

ビジネスではないパーソナルユーザーが楽しく使えるのも、N-VANと思われるが、荷室は入念に確認したい。N-VANは助手席を格納すると床面積が広がり、床が低いから荷物の出し入れもしやすいが、四角のボックス状の荷室が欲しい場合はハイゼットカーゴが使いやすいこともある。

走行性能と運転感覚、安全装備などは、設計が新しいこともあってN-VANが優れている。総合評価ではN-VANが優れているが、実用重視の車種だから、用途に応じて選び分けたい。

勝者:N-VAN

[TEXT:渡辺陽一郎/PHOTO:小林岳夫・和田清志]

この記事の画像ギャラリーはこちら

  すべての画像を見る >

【PR】MOTAおすすめコンテンツ

渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

MOTA編集方針

「車好きのみんなが見ているメルマガ」やSNSもやってます!
カー用品・カスタムパーツ

愛車の売却を、もっと楽に!もっと高く!

  • 一括査定はたくさんの買取店からの電話が面倒?

    これまでの一括査定は、たくさんの買取店からの電話が面倒でした。MOTA車買取なら、最大20社の査定額をwebで簡単比較。やり取りするのは査定額上位の3社だけ。車の査定が楽に完結する仕組みです。

  • 一括査定は本当に高く売れるの?

    これまでは、買取店に会わないと査定額がわからず、比較がしづらい仕組みでした。MOTA車買取は、申込翌日18時に最大20社を簡単比較。加えて、買取店は査定額上位3社に選ばれるために競い合うから、どうしても高く売れてしまいます。

新車・中古車を検討の方へ

人気記事ランキング
最新 週間 月間

新着記事

新着 ニュース 新型車 比較 How To
話題の業界トピックス・注目コンテンツ

おすすめの関連記事

ホンダ N-VANの最新自動車ニュース/記事

ホンダのカタログ情報 ホンダ N-VANのカタログ情報 ホンダの中古車検索 ホンダ N-VANの中古車検索 ホンダの記事一覧 ホンダ N-VANの記事一覧 ホンダのニュース一覧 ホンダ N-VANのニュース一覧

この記事にコメントする

コメントを受け付けました

コメントしたことをツイートする

しばらくしたのちに掲載されます。内容によっては掲載されない場合もあります。
もし、投稿したコメントを削除したい場合は、
該当するコメントの右上に通報ボタンがありますので、
通報よりその旨をお伝えください。

閉じる