プレミアムクーペ 徹底比較(2/4)

プレミアムクーペ 徹底比較
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本格的な走りのパフォーマンスを手に入れた

フロントスタイルリアスタイル

まず、従来よりもボディサイズがかなり大きくなり、スタイリングのテイストがよりスポーティ方向に振られた。ルックスとしては、写真で見たときはもう少しリアセクションが長いのかと思ったが、実車を見ると短く、初代TTに近い印象でまとめられている。

従来はA3のプラットフォームをベースとしていたが、新開発のASFが採用された。つまり、アウディのスポーツモデルとして独立した位置付けとなったのだ。これには初代TTが予想をはるかに上回る好評を博したことも要因となっているはずだ。ただし、パワートレインについては、A3およびVWゴルフとの共通性もある。TTには、2Lターボと、3.2L V6の2タイプのエンジンが設定され、前者はFF、後者はクワトロとなる。トランスミッションはともにSトロニック(DSGが名称変更したもの)が組み合わされる。

3.2Lエンジンは、ひとことでいうと非常に元気な印象。軽い車重に加えて、余力ある動力性能をもたらす。相対的にエンジンが勝っている。後述するBMWがやはり一段上だが、SCの4.3L V8もそこそこ力感があるのに対し、TTのそれはスポーティな吹け上がりを示すところが身上。レッドゾーンまで遠慮なく使える。

Sトロニックも進化している。ほとんどショックがなく、瞬時に次のギアにシフトチェンジ可能。けっこう高めの回転域でシフトダウンの操作をしても、レッドゾーンに入らない限り、ちゃんとシフトダウンしてくれる。また、今回の中で唯一パドルシフトが備わる。別になくても実際は問題ないのだが、あればあったでやはり楽しい。総じて、しっかり「スポーツカー」しているのだ。惜しまれるのはスロットルがオーバーゲイン気味の開き方をする点で、やや飛び出し感が気になる。最近のアウディ車はこの傾向が強いようだ。

ハンドリングは、FFベースのクルマであることをあまり感じさせない。フロントヘビーな感覚は小さく、リアの接地性も極めて高い。全身が一体となってサスペンションを正確に動かし、路面をガッチリとホールドする印象がある。ステアリングはセンター付近が適度に緩やかで、強い直進性を示す。切り込むとリニアにゲインが立ち上がる。非常にシュアな感覚である。

マグネティックライドのチューニングによるものか、ややバネ上の細かな上下動と、ダイアゴナル(対角線)方向の動きに突っ張り感があることが少々気になるが、コーナリングパフォーマンスはきわめて高い。また、決して不快なものではないのだが、ボディ剛性の高さゆえか、ノイズの室内への侵入と、いろいろな領域の周波数でどこかが共振するところが見受けられた。このクラスにおけるASFの使い方がこなれてくれば、おそらく近い将来に改善されることだろう。

FFベースで走りのパフォーマンスを本格的に追求すると、こういうまとめ方が現時点で最上のアプローチだと思うが、実際、運転してかなり面白いクルマに仕上がっている。後輪駆動にこだわらないのであれば、非常にオススメの選択肢となるだろう。

フロントビューリアビューサイドビュータイヤエンジン

あり余る動力性能を堪能させる

フロントスタイルリアスタイル

一応3シリーズの一員であるものの、セダンとの共通パーツはドアハンドルぐらいで、基本的には専用設計となっている。シンプルながら流麗なクーペスタイルは、ややエキゾチックなテイストを盛り込んだ現行3シリーズのボディによく溶け込んでいる。欲をいうと、個人的にはリアビュー、とくにテールランプにはもう一捻りほしかった気もする。また、3シリーズのセダンは実用車の一端である印象がつきまとうところ、クーペになると一気にスペシャリティな雰囲気が漂う。これはE36以来の3シリーズクーペの佳き伝統といえるだろう。

走りにおける最大の注目は、やはりBMWとして久々の採用となるターボエンジンだ。3L直6に、小径の低ブーストのターボチャージャーをパラレルツインで搭載。空吹かしでも自然吸気のスポーツエンジンのようなレスポンスを示し、その感覚のままトップエンドまで痛快に吹け上がる。わずか1500rpmあたりから鋭いレスポンスと十分なトルクを発揮し、3500rpmあたりから力強いトルクの盛り上がりを感じさせる。回すほどによく回っていく印象である。本当に過給機が付いているのだろうかと思うようなナチュラルでリニアなフィーリングだ。これは圧縮比が高いことや、インジェクターの進化が可能とした恩恵であろう。ターボラグも皆無で、レスポンスへの心配はまったくない。室内で感じる音量はそりなりに大きく、走りを積極的に楽しみたい人向けの設定となっているようだ。

ちなみに335iにはバルブトロニックは採用されていない。スロットルゲインは、おそらく電制スロットル自体のとしては世界屈指のレベルで、一時期のBMW車に見られたような過剰演出の開き方はしない。レッドゾーンは7000rpmからとなっているが、ステップトロニック付きの6速ATは、例外の状況を除き6000rpmでもシフトダウンできる設定となっている。

比較的コンパクトなボディを、ありあまる動力性能の余裕で走らせる、この快感を味わわせてくれるクルマは、現時点でのカタログモデルとしては世界でも数少ない。335iはまさにその1台といえる。なお、同エンジンは、やや遅れてセダンとツーリングにも設定され、代わりに330iが在庫販売のみとなった。

ハンドリングは期待どおりの仕上がり。アクティブステアリングのセッティングも洗練度を深め、非常にリニアな味付けとなっている。初期の5シリーズに見られたような、意図したよりも不要なヨーモーメントが発生してしまうような違和感がなくなり、動き始めがわかりやすくなった。この完成度は、同様の機構を手がける世界中のメーカーにとっても見習うべきものがある。また、この絶妙なセッティングを崩さないよう、下手に車高調など足まわりのパーツは変更しないほうがいいだろう。反面、あくまで「リニアリティ」という部分では、かつてのBMW車にあった感覚からハイゲイン方向に移行しており、そのぶん接地感が薄らいだようにも感じられるところもある。

乗り心地については、タウンスピードレベルではピッチングが多めの印象だが、車速が高まるほどにフラット感を増していく。

フロントビューリアビューサイドビュータイヤエンジン

巧みなデザインと快適性の高い乗り味

フロントスタイルリアスタイル

日本では4代目ソアラとして登場し、レクサスブランドのスタートとともに、世界共通の「SC」のネーミングが与えられた。その際、内外装の設定が変更されるとともに、5速ATから6速ATに換装され、足まわりのセッティングも見直されるなど、より洗練された。さらに、2006年7月にはニーエアバッグやETCが標準装備された。

スタイリングについては、もはやとやかくいうまでもないだろう。いわばデザインのためにデザインされたような印象で、登場からまもなく6年が経過するものの、少しも古さを感じさせない。それどころか、個性的なライバル車の多い中で、独特の存在感を放ち続けている。このデザインセンスは大したものだと思える。けっこう大柄なクルマであり、現時点での日本車にはライバルらしきモデルは存在しない(微妙にZロードスターが挙げられるか・・・?)。おそらくとうぶんこのまま販売され続けるのだろう。

定評ある4.3L V8エンジンは、このボディを引っ張るには十分。とりたててスポーティというわけでもなく、官能的な部分もないが、十分に余力のある動力性能が確保されている。これを6速ATによりイージードライブで流すのがSC本来の姿だろう。すでにLSでは新世代の4.6Lエンジンや8速ATが与えられたが、このSCのパワートレインについても大きな不満はない。

ドライブフィールは、前述のドイツ勢2台に比べるとまったく異質。ステアリングはスローで、ハンドリングの味付けもまったりとしている。乗り心地はあくまでコンフォート性重視で、飛ばして楽しい味付けではない。ボディ剛性もそれほど高いわけではなく、スポーティな走りに期待するのは間違いだろう。あくまで快適にオープンエアモータリングを楽しむためのクルマである。

ただし、日常使用には問題ないとはいえ、ブレーキのキャパシティが物足りないところには注文をつけたい。せめてセルシオ-LSのモノブロックキャリパーか、対向ピストンのものを採用すべきだと思う。

フロントビューリアビューサイドビュータイヤエンジン

デザイン・スペックの総評

見た目の印象では、この中ではSCがいい意味で「浮いて」見える。これは、個性的であるTTに比べても、ディテールの作り込みの巧みさが、独特の雰囲気を放っているのだと思う。走りにおいてはほぼ予想どおり。ただし、TTについては初代のイメージから一気に本格スポーツカーと呼べる領域まで昇華した。335iは、絶品のエンジンを卓越のハンドリングとともに味わえる。走行性能に関しては、SCはあまり多くを期待すべきではないだろう。

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岡本 幸一郎
筆者岡本 幸一郎

ビデオ「ベストモータリング」の制作、雑誌編集者を経てモータージャーナリストに転身。新車誌、チューニングカー誌や各種専門誌にて原稿執筆の他、映像制作や携帯コンテンツなどのプロデュースまで各方面にて活動中。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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