フィアット 500 試乗レポート

  • 筆者: 竹岡 圭
  • カメラマン:原田淳
フィアット 500 試乗レポート
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おなじみ「ルパン三世」や「ローマの休日」にも登場した 新型チンクエチェント上陸

50年振りのフルモデルチェンジである。フィアット500=チンクエチェントという名で親しまれた名車だ。2004年ジュネーブ・モーターショーでデビューしたコンセプトカー「3+1」(トレピューノ)でその兆しを見せ、昨年7月4日、50年ぶりにトリノでデビューを果たし、今年の3月15日に日本に上陸したというワケなのである。

欧州カー・オブ・ザ・イヤーをはじめ、既に19もの賞に輝いているところを見ても、50年越しの期待がファンの心を裏切らなかったというのがよく解るというものだろう。もちろん日本でも話題沸騰中である。

発表会にしても、近年見ない程の大盛況振りであったし、試乗会にしても見知らぬ人が集まってくる始末。というのも、イタリアの名画「ローマの休日」や、日本を代表するアニメ「ルパン三世」に登場したりと、いろんな意味で懐かしく親しみがあるからなのかもしれない。40年以上ぶりに新型が登場したBMW MINIもかなりの話題を席巻したが、こちらもまた同じようなフィーバーが起こりそうな予感がするのだ。

カワイイからってナメないで!小さいけど頼りになる1台

フィアット500の特徴はまずそのデザインにあるといっても過言ではないだろう。とにかくコンパクトな3ドアボディは、50年前のフォルムを上手く生かして、現代風にアレンジされた雰囲気を持っている。全体的なフォルムもそうだが、懐かしのモチーフも各所に盛り込まれている。

例えば、円形のヘッドランプやアクセントラインが中央に配されたエンブレムなどがその代表に挙げられる。しかし、当時を知らない人でも「カワイイッ!」と、直感的に叫びたくなるデザインにまとまっているのだ。というのも、もちろん当時に比べてサイズはひと回り大きくなっているが、これは現代のクルマの使われ方や、衝突安全基準に照らし合わせれば納得いく。

インテリアもかなりキュート。まずオリジナルアクセサリーとなる市松模様が配された鍵からしてカワイイ。そしてドアを開けると、鍵と同じ市松模様のシートが目に飛び込んでくる。派手目ではあるのだが、イタリアンセンスのよさを感じさせる雰囲気作りができていると思う。運転席に座ると、目の前に大きな1眼メーターが鎮座。メーターだけを取り外してオブジェとして置いておいても様になりそうな凝ったデザインだ。

また、運転席上部辺りまで開けているガラスルーフのおかげで、室内が明るいのも雰囲気にマッチしている。しかしカワイイだけでなく、装備されるものはもちろん揃っていて、例えば安全装備を例にとっても、運転&助手席エアバッグ、サイドエアバッグ、ウィンドウエアバッグ、そしてクラス初となる運転席ニーエアバッグと、合計7つのエアバッグが搭載されているのだ。

ESP(横滑り防止装置)、ASR(トラクションコントロール)、HBA(ブレーキアシスト)、ヒルホールドシステム(坂道発進補助装置)、ESS(緊急制動表示機能)等々、アクティブセーフティ面もバッチリ考慮されている。小さいけど頼りになる1台といったところなのだ。

2ペダルMT“デュアロジック”にはいい意味で裏切られた

意外と現代風なフィアット500だが、運動性能もすっかり現代風である。なんと言ってもベースとなったのは、もうすっかりお馴染みの“フィアット・パンダ”なのだ。ちなみに今回上陸を果たしたのは、1.2Lエンジンにデュアロジックという2ペダルのMTトランスミッションを搭載したパワートレインのモデルとなる。

運転席に腰を下ろし、ドライビングポジションを取ってみる。「テレスコピックが欲しいなぁ~」、「シートベルトが締めにくいナァ~」、なんて細かい注文はあるものの、とりあえず大きな問題はない。その後エンジンを始動し、ギアを1速に入れ、パーキングブレーキを下ろそうとしたら…ナントっ!シートが下がってしまった(笑)。

通常パーキングブレーキのレバーがある辺りにシートリフターのレバーがあり、その後も何度も間違えてしまうことになった。こういった小さなことには慣れが必要かもしれない。しかし、もっと慣れが必要だと思っていたデュアロジックにはいい意味で裏切られた。

シングルプレートの2ペダルMTの場合、どうしても発進時にギクシャクしたり、変速ショックが大きかったりしがちなものなのだが、これがまったくスムーズなのである。ベースとなったパンダより良い位に、普通のATとほぼ同じ感覚で走れてしまうのだ。これには少々ビックリさせられた。

ちなみにMTシフトゲートに入れて自分でシフトするのも悪くはないが、こちらはストロークが大きめなので、スポーティという感じではないというのは、あらかじめ知っておいたほうがいいだろう。しかし、ATモードに入れっぱなしでもさして困ることはないのである。このボディサイズならば1.2Lエンジンでも、まったく不足はないからだ。発進でモタつくこともないし、中間加速でも問題なく付いてきてくれる。街中ならばまったく問題ないハズだ。

高速でのロングドライブでも、パワー的にはOKのハズ。ただしホイールベースが短いので、ヒョコヒョコとした動きがあるのは否めない。やはり街中メインモデルと考えたほうが良いだろう。その代わりといってはなんだが、驚くほど小回りは利くし、ボディも剛性感がありシャッキリしている。ベースとなったパンダが“トコトコ”だとしたら、フィアット500は“キビキビチョコマカ”という感じで、かなり楽しめる1台なのだ。

グレード選択は本気で迷うかも

さて、あえてフィアット500に文句をつけるとしたら、それはメーター内の表示だろう。フィアットではすっかりお馴染みの、車庫入れ時等にステアフィールを軽くできるCITYモードが付いたデュアルモード式電動パワーステアリングや、燃費よりの変速スケジュールを選択するエコノミーモード等の表示が、あまりに小さいのである。私はまだ大丈夫だが(笑)、ちょっと年配の方たちは見えないとボヤいていた。これは改善の余地があるポイントだと思う。

またグレードはPOP、SPORT、Loungeの3つが用意され、ボディカラーも6色ラインナップが予定されているが、とりあえず日本に入ってくるのは最上級グレードとなるLoungeのボサノバ・ホワイト、パソドブレ・レッド、モッド・ブルーの3色だけ。

さらに、フィアット500 1.2 8V LoungeSSという200台限定の特別仕様車も販売開始。フロントフォグランプ、クローム仕上げヒーテッド電動ドアミラー、ボディ同色サイドモール、フルオートエアコン、リアパーキングセンサーというオマケ装備が盛り込まれている。こちらの価格は233万円(Loungeの標準仕様の価格は225万円)だが、後日投入される量販グレードのPOPは200万円を切る190万円台で登場すると発表されている。また、トランスミッションも、とりあえずデュアロジックのみだが、そのうちMTモデルが入ってくるというウワサもある。本気で購入を考えている人は、いつ買おうか迷ってしまうところだ。

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竹岡 圭
筆者竹岡 圭

OLを経て、自動車専門誌を皮切りに、モータージャーナリスト活動を開始。国内外のレース、ラリーなど自らモータースポーツ活動に関わりながら、海外のモーターショーを精力的に回るなど、なにごとにも積極的に取り組んできた結果、近年は一般誌、女性誌、Web媒体、新聞、TV、ラジオなど、その活動はとても多彩なジャンルに広がっている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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