清水草一が警鐘を鳴らす!不要不急であれば我慢せよ
- 筆者: 清水 草一
ガソリン不足ぐらいで冷静になれないと損をするぞ!
東日本大震災により、東日本が深刻な燃料不足に陥ったのはご存知の通り。
被災地ではともかく、東京周辺でも一時、信じられないような長い給油待ちの列ができた。
私の知る限り、東京周辺でガソリンスタンドに列ができ始めたのは、震災翌々日の3月13日から。ただしこの日は、列はまだ数台からせいぜい10台余りだった。
しかし、翌14日には、どのスタンドも数十台のクルマが並ぶ事態になり、ガソリンスタンド待ちの大渋滞が発生した。
震災の影響で、都内の一般道は明らかに交通量が少なかったのだが、スタンドの手前に来るとピタリと動かない、という事態が頻発した。
この時、給油待ちしていたクルマのかなり多くが、「ガソリン不足だから、一応満タンにしておこう」という、不要不急の給油客だったと言われている。
もちろん、どこまでは不要不急客で、どこからがそうでないかを判定することはできないが、いつの世も、品不足だと聞くと焦って買い急ぐ人が一定割合存在する。
被災地でガソリンを買い急ぐのは、命がかかっているのだから仕方ない。しかし、被災したわけでもないのに、「一応満タンにしておこう」という人がこれほどいたとは、日本人として情けないではないか!
15日にはすでに、「来週には首都圏のガソリン不足は収束する」と報道されていたが、そんなの知ったことかと、相変わらずスタンドの行列は続いた。
不要不急の給油は、まったくもって、被災者の方々に対する思いやりのカケラもない、自分勝手な行動だったと言わねばならない。
この頃、ガソリンとともにコメやパンを始めとする食糧、トイレットペーパーも店頭から消えた。その多くが買いだめだった。テレビでは、スーパーに買い出しに来た老婦人が、「どこにもないのよ~、大変~」と恥ずかしげもなくコメントしていたが、「ホントに大変なのか!」と言いたくなった。
仮に本当に家のコメやパンがなくなっていたとしても、何か別のものを食べることもできたはずだし、レストランだって営業していた。本当に困っている被災者のことなど、まるで頭にないようだった。
今後もし、世の中が何かの品不足の状況に襲われたら、米にせよガソリンにせよ、今の状態であとどれくらい自分の家の“在庫”が持つか、それを計算してほしい。
たとえばガソリン。愛車の燃料計が、残り3分の1を指していたとする。仮にクルマがフィットなら、燃料タンク容量は42リットル。その3分の1なら14リットルだ。燃料計は、残量が1割から2割になったところでゼロを指すので、実際にはタンクにはまだ20リットル近いガソリンがあるはずだが、安全を期して14リットルと考えよう。
フィットは、平均してリッター14キロ強は走る。つまり、あと200キロくらい走れる計算だ。日本の乗用車の平均走行距離は月700キロ前後。ということは、ふだん通りの走行を続けても、1週間以上持つわけだ。
被災地は戦場のような状況で先が読めないが、首都圏はそんな状況ではなかった。確かに鉄道が止まったり、計画停電が始まったりしていたが、今後あらゆるモノの供給が止まる、なんてことはあり得ないことはわかりきっていた。
15日の段階で、「来週には改善される」と言われていたのだから、節度ある市民ならば、「それじゃあと1週間待ってみよう」と思わねばいけない!
実際のところ、21日には東京周辺のガソリンスタンド行列は消滅した。実質9日間という、振り返れば実に短期間の品不足だった。
残り1週間余というガソリン残量があれば、一度も行列に並ばずとも、何事もなかったかのように過ごせたはずなのである。
私が小学生の頃、日本はオイルショックに襲われ、トイレットペーパー騒動というものが起きた。今回のように、トイレットペーパーや洗剤がなくなる!という群集心理が働き、店頭では奪い合いが展開され、多くの人が必要以上のトイレットペーパーや洗剤を買い漁った。
その結果、騒動が治まってみたら、狭い家の中はトイレットペーパーだらけだった……という笑い話がそこらじゅうでおきた。
私は当時まだ小学生で、世の中のことがわかっていなかったら、「どうなるんだろう」と不安だった。それだけに、結末がそんなズッコケなものだったことも、深く心に刻まれた。
よってわが家では今回、ガソリンやコメ、パンなど、品不足になったものは意地でも一切買わなかった。それで何一つ困ることはなかった。
首都圏にも、被災地に救援物資を届けるトラックはじめ、どうしても給油が必要なクルマは多数いた。しかし、どうしても必要かそうでないかは、見分けがつかない。
それをいいことに、不要不急の給油をした人々のことを、私はあえて「愚民」と呼ばせていただく。
愚民は群集心理に弱く、何かが足りないと聞くと、一刻も早く買わないと大変なことになる、という強迫観念に襲われてしまう。
実際にそれが一時なくなったところで、冷静に考えればそんなに困るわけじゃないのだが、冷静になれないのが愚民の特徴だ。愚民は常に損をするようにできている。
我々は、愚民ではないはずだ!
今後もし再び、ガソリンの品不足が起きたら、ぜひ冷静になって、愛車があと何キロ走れるか、まずはそれを計算してみてほしい。
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