テスラで往く”オトナの遠足”|世界最先端のロボット工場へ潜入(2/3)

  • 筆者: 嶋田 智之
  • カメラマン:オートックワン編集部 取材協力:FANUC
テスラで往く”オトナの遠足”|世界最先端のロボット工場へ潜入
テスラ モデルS P100D(右)とモデルX 75D(左奥) レポーターの自動車ライター、嶋田智之さん FANUC(ファナック)が誇る多関節ロボット。自動車をはじめ、あらゆる分野での自動化に貢献。2016年6月には累計生産42万台を突破している! ファナック株式会社の社屋と並ぶテスラ モデルS。黄色いカラーはファナック社のイメージカラーだ。 <テスラ モデルS P100D> <テスラ モデルS P100D> <テスラ モデルS P100D> <テスラ モデルS P100D> <テスラ モデルS P100D> <テスラ モデルS P100D> <テスラ モデルS P100D> 画像ギャラリーはこちら

■知る人ぞ知る世界企業が富士山の麓に存在する

山梨県忍野村にあるファナック株式会社は、51万坪の敷地の中に数え切れないほどの工場と研究所を持ち、世界45カ国に合計257の拠点も持つ、巨大な企業だった。そのわりに名前が知られていないのは、同社の業務が一般に向けたものではなく、製造の現場に向けたものだからだろう。

元は富士通の一部門としてNC(Numerical Control/数値制御)装置やサーボモーターなどの研究から製造までを担い、1972年に富士通から分離するかたちでファナックは設立された。現在ではCNC(Computerized Numerical Control/コンピューター数値制御)装置、各種サーボモーター、レーザー発振器などのファクトリーオートメーション、産業用ロボット、ロボット技術を用いた切削・射出成形・超精密加工などのロボマシンを主軸とした世界的なメーカーとして、産業界では知らぬ者のない存在だ。

世界の自動車メーカーの多くが工場でファナックのロボットを活用しており、もちろんテスラも例外ではない。その縁で今回の“オトナの遠足”が可能になったようだ。

■奥深く楽しい、産業用ロボットの世界

狭い作業スペースの中、流れてくる目薬の容器。ファナックの多関節ロボットは器用に容器を整列させてみせた。<FANUC(ファナック株式会社) 本社(山梨県忍野村)>

僕達は主として自動車製造に関わるロボットを見せていただいた。同社の取締役でありロボット事業本部長でもある稲葉清典さんの解説とともに見学することのできた産業用ロボットは物凄く多岐にわたっていて、こんな作業までロボットがまかなえるのか!と唖然とさせられたほど。それこそ車体を持ち上げて向きや角度を変える巨大なロボットから、ボディの形状に沿って塗料を吹き付けていくロボットから、パーツの形状に合わせてシーリングをしていくロボットから、小さなパーツを切削加工するロボットから、と多種多様。パーツを選別して加工機へと運び、加工が済んだパーツを別の加工機へと運び、加工済みのものを一箇所へ集める、全てがロボットによる作業で完結するラインもある。

1機のロボットが車体の構成部品を持ち上げ、回転させ、さらに回転させ、それにもう1機のロボットが絶妙のタイミングでバチバチとスポット溶接を行っていく、なんて組み合わせもあった。しかもそれらは人工知能による学習機能を備えており、ただでさえ人の手とは較べものにならないほど短時間で作業を終えてしまうというのに、さらに10%ほどの高速化が見込めるのだという。つまり10%も生産性を向上させることができる、ということだ。

■人とロボットとの共同作業

今回の見学には、ファナック(株) 取締役専務執行役員・ロボット事業本部長の稲葉 清典氏自らご説明頂いた。<FANUC(ファナック株式会社) 本社(山梨県忍野村)>

もうひとつ驚かされたのは、それらのロボットは人の立ち入らない専用エリアで稼働させないと危険が伴うわけだが、人と同じエリアで協力し合いながら作業を進められるロボットまで開発されていたことだ。作動している状態でロボットもしくはロボットが持っているものに人が触れると動きを停め、人の手で引き寄せたり向きを変えたりすることが軽々とできるため、安全な状態で共同作業ができるのだ。

何台ものロボットをネットワークで繋いでファミリーのようなかたちを形成したり、深層学習によってロボット自身が自分の異常を感じとったり、ロボットがまた別のロボットを製造していたり、とまだまだ面白い話はたくさんあるのだけど、いずれにしてもそれらは──もしかしたら僕が知らなかっただけなのかも知れないけど──ちょっと昔の時代には想像するしかなかった領域の話だったのだ。そして稲葉取締役のお話をうかがっていると、この分野がまだまだ進化していく余地はたくさんあって、それも目まぐるしいスピードで推移していきそうな感じを受ける。時代はどんどん進むのだ。

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嶋田 智之
筆者嶋田 智之

本人いわく「ヤミ鍋系」のエンスー自動車雑誌、『Tipo』の編集長を長く務め、スーパーカー専門誌『ROSSO』の総編集長を担当した後、フリーランスとして独立。2011年からクルマとヒトに照準を絞った「モノ書き兼エディター」として活動中。自動車イベントではトークのゲストとして声が掛かることも多い。世界各国のスポーツカーやヒストリックカー、新旧スーパーカー、世界に数台の歴史的な名車や1000PSオーバーのチューニングカーなどを筆頭に、ステアリングを握ったクルマの種類は業界でもトップクラス。過去の経歴から速いクルマばかりを好むと見られがちだが、その実はステアリングと4つのタイヤさえあるならどんなクルマでも楽しめてしまう自動車博愛主義者でもある。1964年生まれ。記事一覧を見る

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