2019年の東京モーターショーは分散型開催へ!目玉がないと客足は更に厳しい?

  • 筆者: 桃田 健史
  • カメラマン:ダブルクラッチ・重田信哉・オートックワン編集部

TMS2017が盛り上がりに欠けたことは事実

第45回東京モーターショーは、2017年10月25日のプレスデーを皮切りに、三連休の最終日となった11月5日で無事終了した。

主催者発表によると、総入場者数は77万1200人(前回比94.9%)にとどまった。開催期間の最初の週末、関東地方を大型台風が直撃したことで入場者数は伸び悩んだが、開催終盤の3連休で11月3日と4日にそれぞれ10万人を超える盛況となった。

筆者は、プレスデーの2日間に取材者として、また業界関係者向けのオフィシャルデーで併催されたイベントではパネリストやモデレーター(司会)として、さらに一般公開日ではモーターショー主催者と日本自動車ジャーナリスト協会が協力して実施した『自動車ジャーナリストと巡る東京モーターショーガイドツアー』のガイド役を務めるなど、様々な立場で今回も東京モーターショーに直接関わった。

そうした中で、メディアや来場者の多くから「目玉になるようなクルマがなくてガッカリした」「未来のクルマを見に行くといった、昔からの雰囲気がなくなってしまい、正直つまらなかった」という指摘を数多く受けた。

その指摘には、筆者も同意する。ただでさえ、フェラーリ、ランボルギーニ、アルファロメオなどイタリアンブランドの未出展によってショーの華やかさに欠けるのだから、日系メーカーからは迫力満点のスポーツカーなど、万人がワクワクドキドキできるクルマたちが登場しても良かったと思う。

>>東京モーターショー2017最終日の様子

一方で、日系自動車メーカーが置かれた厳しい状況も十分に理解できる。自動車産業界はいま、史上空前の巨大な時代変革の真っただ中にいる。自動運転や通信によるコネクテッドに対応するための技術開発が進む。さらに、アメリカのZEV(ゼロエミッションビークル)規制や、中国のNEV(新エネルギー車)法に対応するための量産型EVやプラグインハイブリッド車の開発を進めるなかで、ジャーマン3(ダイムラー、BMW、VWグループ)が2016年後半からマーケティング戦略として仕掛けた「EVシフトというブーム」に翻弄されている状況だ。

その他、世界的なシェアリングエコノミーの台頭による「所有から共有」という時代の流れの中で、日系自動車メーカーは近未来の自社事業に対して不透明感を抱いている。

このような日系メーカー各社の「心の迷い」が、東京モーターショーの来場者に見透かされてしまったのかもしれない。

2年前から予想できた、2019年までの流れ

今回の東京モーターショー2017が「厳しい状況に追い込まれる」ことは、筆者はショー開催の前に承知していた。なぜならば、前回の第44回東京モーターショーが終了して間もない2015年後半、関係各位と共に第44回の振り返りと反省、さらに第45回(2017年開催)及び第46回(2019年開催)に関する意見交換を行っていたからだ。

その中で、筆者は第45回(2017年開催)では、海外メディアのさらなる招聘を行うことは難しいため、ショー自体よりも併催イベントとしてB向け(ビジネスパーソン向け)のカンファレンスを増やすべきだと主張した。

そうした議論が具現化したのが、筆者も登壇した「フューチャー・モビリティ・サミット」だ。筆者はモビリティ・アス・ア・サービス(MaaS)に関して、日本のベンチャー企業などの経営者や部門責任者らと「日本の自動車産業界を、継続的に発展させるためには、具体的にどのような手が考えられるのか?」という視点での議論を行った。

このようなB向けカンファレンスや、行政機関が参加する市民ミーティング形式のイベントを通じて、日本の自動車産業の今後、および日本における「交通と社会との新しい関わり方」についての多くの方に関心を持って頂ければ幸いだ。

とはいえ、モーターショー本体であるC向け(カスタマー/コンシューマ向け)のショーで「目玉となる出展」が極めて少なかったことは、とても残念に感じる。

東京モーターショー2019は展示が点在?

さて、話題を2年後の2019年開催の第46回に移そう。

主催者からすでに公表されているように、第46回は近隣の臨界副都心エリア、およびその他のエリアで「拡充開催」するとしている。つまり、開催場所が分散するということだ。

その理由は、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に伴い、同大会事務局が東京ビックサイトの一部を2019年から使用するため、モーターショーで使用するスペースが東京ビックサイト内では足らなくなるからだ。

前述の通り、こうした開催プランを筆者はいまから複数年前に承知していたが、その時点で最も気になっていたのは「人の導線」だ。電車移動の場合、無人運転の「ゆりかもめ」が混んでしまう。その代替として、自動運転バスなどを運行するのは当然かもしれないが、どちらにしても「わざわざ移動してまで、見たくなるような展示やイベント」を幾つも同時に運営しなければならなくなる。最悪の場合、会場間の移動が面倒だから「行きたくない」と思われてしまう危険性もある。

逆に考えれば、従来型のC向けモーターショーでネタ枯れしているのだから、「拡充開催」をキッカケとして、東京モーターショーを「東京全体を使ったモビリティイベント」として一気に変貌させることを考えれば良いと思う。

あっという間の2年間。次世代の東京モーターショーに向かって、いまこそ、変革の狼煙を上げて欲しい。いま必要なのは、日本自動車産業界の厳しい現実を踏まえた建設的な議論だ!

[Text:桃田健史]

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桃田 健史
筆者桃田 健史

日米を拠点に、欧州、BRICs(新興国)、東南アジアなど世界各地で自動車産業を追う「年間飛行距離が最も長い、日本人自動車ジャーナリスト」。自動車雑誌への各種の連載を持つ他、日経Automotive Technologyで電気自動車など次世代車取材、日本テレビで自動車レース中継番組の解説などを務める。近著「エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?」(ダイヤモンド社)。1962年東京生まれ。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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