マツダ 新型ビアンテ GRANZ-SKYACTIV 試乗レポート/渡辺陽一郎(1/3)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:オートックワン編集部
歌舞伎顔には誕生にまつわる秘密が…
久しぶりに見ましたよ、歌舞伎顔!
5月27日にマツダビアンテがマイナーチェンジを受け、その試乗会が行われた。
なぜ久しぶりなのかといえば、販売台数が少ないからだ。1ヶ月の台数は600~700台前後。ライバル車の日産 セレナが5000~7000台、ホンダ ステップワゴンも4000~6000台に達することを考えると、ビアンテの売れ行きは低い。
この販売格差は、マツダとしては不本意だろう。なぜならクルマの実力には、さほど遜色がないからだ。
売れ行きに差が付いた理由は大きく分けて3つあり、1つ目はボディサイズ。ビアンテは全長が4715mm、全幅が1770mmに達し、明らかに3ナンバー車となる。日本でミドルミニバンを売るには、5ナンバー車であることが求められ、ビアンテは辛い。
正確にいえば、セレナもエアロパーツを備えたハイウェイスターは全幅が1735mmに達した3ナンバー車。トヨタのヴォクシー&ノアも同様だが、顧客の抱くイメージとしては標準ボディの5ナンバーサイズが定着している。
2つ目の理由は外観、特にフロントマスクだ。切れ長のヘッドランプを備えた歌舞伎顔は、保守的なデザインが受けるミニバンの売れ筋路線から、明らかに外れている。
ただしこの顔立ちには、ビアンテの誕生にまつわる秘密が隠されている。
ハンディキャップを克服し、マツダらしさも表現されているフロントマスク
ビアンテは初代アクセラのプラットフォームを使って開発され、骨格の構造から、ペダルの位置を高めることができなかった。背の高いミニバンを開発する上では、致命的な問題になる。
なぜなら、全高が1700mmを超えるミニバンの基本的な開発手法は、燃料タンクをカバーできる位置まで床全体を高め、その表面をほぼ平らに仕上げることにあるからだ。床を持ち上げることで、3列目の足元に位置する燃料タンクの張り出しがカバーされ、3列目の乗員も膝の持ち上がらない快適な着座姿勢を得られる。背の低いトヨタ ウィッシュの3列目に座ると膝が持ち上がる窮屈な姿勢になるが、ヴォクシーでは自然に座れる。ヴォクシーが床全体を持ち上げたからだ。
ところがビアンテはペダルを持ち上げられない。となれば床の位置も前側は低いままだ。ドライバーの着座位置と視線も下がり、側方視界を確保するにはサイドウインドウの下端も低めねばならない。実際、サイドウインドーの下端は可能な限り低く抑えた。
しかしボンネットはあまり下げられない。高い天井と低いボンネットをあからさまに組み合わせると、外観が日産初代プレーリー、三菱トッポのようになってしまう。
となればボンネットはある程度高く、サイドウインドウの下端は低くなり、ボディサイドに段差が生じる。この段差の整合性を図り、同時にマツダらしい走りの楽しさをアピールする役割まで持たせたのが、歌舞伎顔のフロントマスクだ。
なので漠然と「顔立ちを目立たせよう」と採用したものではない。「ペダルの位置を持ち上げられない」という背の高いミニバン開発では致命的なハンディキャップを克服し、なおかつマツダらしさも表現するという、無理難題をブレークスルーできる超絶的に素晴らしいアイデアだ。
ボディの後方に向けて、床の位置が段差を付けながら持ち上がる「シアターレイアウト」も同じ。前側の床は持ち上げられず低く、後部は燃料タンクをカバーするために高い。この整合性を図り、同時に2/3列目シートに座る乗員の見晴らしも向上させた。これまた素晴らしいアイデアだ。
マツダ車には、スカイアクティブ技術を満載したアテンザ、運転の楽しいロードスターなど注目車が多いが、このメーカーの本質を最も明確に表現した車種はビアンテだと思う。普通の開発者なら、ペダルの位置を高められないプラットフォームで背の高いミニバンを造るなど、最初から不可能だと言うだろう。その不可能をビアンテの開発チームは可能にした。
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