フォルクスワーゲン 新型ポロ 徹底解説|ボディ拡大で遂に3ナンバー化、その利点と難点とは

  • 筆者: 渡辺 陽一郎
  • カメラマン:和田 清志・フォルクスワーゲングループジャパン

モデル末期でも人気を維持してきたポロがいよいよフルモデルチェンジ

2017年の暦年(1~12月)で、登録台数が最も多かった輸入車はBMWのミニシリーズだ(全タイプ合計)。2位がVW(フォルクスワーゲン)ゴルフとなる。3位以下はメルセデス・ベンツ Cクラス、同Eクラス、BMW 3シリーズと続き、6位にランクされたのがVW ポロだ。

ポロはVWのコンパクトカーで、ゴルフとup!の中間に位置するハッチバックモデルとなる。5代目ポロの発売は2009年だから設計が古かったが、輸入車の販売ランキングで上位に入った。

このVWポロが2018年3月20日にフルモデルチェンジを受けている。人気車とあって、関心を持たれた方も多いだろう。

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貴重な5ナンバーコンパクトだったポロも新型では遂に3ナンバー化

新型ポロの位置付けは以前と同じだが、プラットフォームは現行ゴルフやパサートと共通の”MQB”を使用する。MQBはホイールベース(前輪と後輪の間隔)などの寸法を自由に調節できるから、ひとつのプラットフォームを幅広い車種で共用できる。

新型ポロは従来と同じ5ドアハッチバックだが、ボディサイズは拡大された。全長は4060mm、全幅は1750mm、全高は1450mmになり、先代型の標準ボディに比べると65mm長く、同じく65mmワイドで10mm低い。ホイールベースは2550mmだから80mm伸びた。

中でも日本のユーザーに大きな影響を与えるのは、ポロは先代型まで5ナンバー車だったのに、新型は全幅が1750mmに拡大されて3ナンバー車になったことだろう。

今は日本車にも3ナンバー車が増えて、レクサスと、軽とOEM車を除くスバルには5ナンバー車がない。マツダも5ナンバー車はデミオだけだ(いずれもOEM車を除く)。ところが販売データを見ると、日本で売られる新車の35%が軽自動車になり、小型/普通車でも、販売ランキングの上位に入るのは圧倒的に5ナンバー車だ。3ナンバー車はプリウスとC-HR程度になってしまう。

そして輸入車となれば、5ナンバー車の選択肢はきわめて少ない。名前とは裏腹に最新型のミニは3ナンバー車で、5ナンバー車はルノー トゥインゴ、スマート、フィアット 500とパンダ程度だ。

その意味で先代VW ポロは貴重な存在だった。5ナンバーサイズの輸入車で、安全装備や運転支援機能が最も充実しており、後席の居住性にも余裕があったからだ。いい換えればポロの3ナンバー化は、日本では少なからずデメリットとして受け取られる。

5ナンバーと3ナンバー、ボディサイズ拡大のメリット・デメリットとは

5ナンバー車が好まれる理由として「身の丈に合っている」「小さなボディに高機能を凝縮した密度感」など情緒的な要素も含まれるが、一番は運転のしやすさだ。

特に左右のフロントピラー(柱)の見え方が大きく影響する。新型ポロと先代型を乗り比べると、新型は3ナンバー化によって左側のピラーが少し遠く感じられ、車両との視覚的な一体感が薄れた。狭い道の通過性も悪化したが、いわゆる車幅感覚がつかみにくい。

さらに最小回転半径も、先代型は4.9mだったが新型は5.1mだ。輸入車では小回りが利く部類に入るが、先代型に比べれば大回りになる。新型ポロの運転感覚は、1997年に発売された4代目ゴルフに近い。

視界は先代型とほぼ同じで、前方は見やすいが斜め後ろは平均的だ。ボンネットは見えにくく、縦列駐車などを試しておきたい。

内装ではインパネが変更された。先代型ではインパネ中央の最上部にエアコンの吹き出し口があり、その下にカーナビやオーディオを配置したが、新型では逆転させた。カーナビなどの画面が最上部にあって視認性が良い。エアコンのスイッチなどを含めてドライバー側に少し傾けたから操作しやすい。

インパネの中央には、インフォテイメントシステムのコンポジションメディアが標準装着され、CDやMP3などの再生、ハンズフリーフォンの機能が備わる。コンフォートラインとハイラインには、SSDナビなどの機能を備えたディスカバープロを22万6800円でオプション設定した。

サイズ拡大で気になる新型ポロの居住性を実際に座って検証してみた

新型ポロの居住性について検証してみよう。新型ポロに乗ってみると、前席は快適だった。シートの背もたれは先代型よりも肩まわりのサポート性が向上して、少し硬めながら座り心地が上質になっている。腰の支え方も巧みだから、長距離を移動する時も疲れにくい。

注目される新型ポロの後席だが、ホイールベースの拡大で特に足元空間を広げたと説明を受けた。実際に新型ポロの後席へ座ってみると、先代型よりも余裕が少し増した程度だ。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ1つ半くらいだ。4名乗車に支障はないが、それでも少し窮屈だと感じるなら上級のVW ゴルフを選ぶ必要がある。

後席の座面は先代型と同じく前側が持ち上がり、膝から先が前方に投げ出されないから、狭い空間に体が収まる。後席に座る乗員の足が前席の下に収まりやすいことも空間効率を高めた。座り心地は前席よりも硬く、拘束感を伴うが、ボリュームも相応に確保した。

荷室容量は、全幅がワイド化されたこともあって拡大している。先代型は280リットルだったが、新型は351リットルだから、数値上は125%になった。

4気筒1.2ターボから3気筒1.0ターボへさらにダウンサイジングされた効果とは

新型ポロが搭載するエンジンは、今のところ直列3気筒の1リッターターボのみだ。最高出力は95馬力(5000~5500回転)、最大トルクは17.9kg-m(2000~3500回転)になる。自然吸気の1.8リッターに匹敵する性能だ。トランスミッションは2組のクラッチを使う有段式の7速DSGを採用した。

新型ポロには実際に試乗してみることも出来たのでその印象をお伝えしたい。

搭載される1.0リッター3気筒ターボエンジンは実用回転域の駆動力こそ高いが、1500回転以下ではターボの過給効果が薄れる。また4000回転を超えると、3気筒特有の粗いノイズが耳障りになる。しかし吹き上がりは活発だ。

ちなみに先代型の標準エンジンは直列4気筒1.2リッターターボで、最高出力は90馬力(4400~5400回転)、最大トルクは16.3kg-m(1400~3500回転)だった。新型の1リッターターボに比べて最高出力と最大トルクの数値は見劣りするが、発生回転数は幅広く、低回転側に広がっていた。つまり新型は活発な吹き上がり、先代型は実用回転域の粘り強さと直列4気筒の静粛性がメリットだった。

新型ポロのJC08燃費は19.1km/L、先代比14%も悪化した本当の理由とは

新型ポロのJC08モード燃費は19.1km/Lだ。先代型は22.2km/Lだったから、フルモデルチェンジして燃費数値が14%悪化した。この理由をフォルクスワーゲングループジャパンに尋ねると「新型ポロの燃費計測は、WLTP(新燃費基準)の導入も視野に入れて、実用燃費に近づけることを意図して行った。従って先代型に比べて数値が下がったが、実際の燃費に近くなっている」とのことであった。

それにしてもLサイズセダンのパサート(ガソリン)ですら、1.4リッターのターボを搭載して20.4km/Lだ。新型ポロと同じ3気筒1リッターターボを搭載するアウディA1スポーツバックは22.9km/Lに達する。新型ポロの燃費数値は、従来モデルに比べて下落が大きい。欧州車には良くあることだが、今後のマイナーチェンジを通じて、ノイズから燃費まで改善を加えるかも知れない。

またポロは今後、上級のバリエーションを追加する。2リッターターボのGTI、新開発の1.5リッターターボを搭載するRラインが控えている。ベーシックな1.0ターボに試乗し物足りなさを覚える方はそちらを待ってみるのも手だ。

新プラットフォーム採用で走行安定性や乗り心地性能も改善

新型ポロのサスペンションはVW ゴルフ 1.2TSIトレンドラインなどと同様で、前輪はストラットの独立式、後輪はトレーリングアームの車軸式だ。

走行安定性は良好で、先代型に比べるとハンドルを切り始める時の正確性が高まった。微小舵角の曖昧さを払拭したから操作しやすく、上質な印象も伴う。車両との一体感も得やすい。4輪のグリップ性能を巧みに引き出して、カーブを曲がる時の接地性も高めた。

乗り心地は低速域で硬めに感じるが、先代型に比べると粗さが抑えられて重厚感を増した。Uターンした後など、前輪をフルに操舵した状態から少し強めの加速をすると、直進状態に戻ろうとするハンドルの反力が唐突に高まる。粗削りな面も少し残るが、安定性と乗り心地は、プラットフォームの一新もあって進歩した。

新型ポロの先進安全装備はグレードによりオプション設定のケースも

新型ポロに付けられる先進安全装備はグレードによって異なる。歩行者も検知して緊急自動ブレーキを作動させるフロントアシストは、ポロ TSIトレンドライン(209万8000円)、TSIコンフォートライン(229万9000円)、TSIハイライン(265万円)のすべてに標準装着した。後方の並走車両を検知して警報するブラインドスポットディテクション、後退しながら車庫から出る時などに警報して緊急自動ブレーキを作動させるリヤトラフィックアラートなどは、TSIコンフォートラインとTSIハイラインにオプション設定した。

安全装備のオプション価格は、TSIコンフォートラインではアダプティブクルーズコントロールとセットで11万8800円。TSIハイラインは、アダプティブクルーズコントロールが標準装着されるから9万7200円とした。余談だが緊急自動ブレーキが装着されていると、同じセンサーを使うアダプティブクルーズコントロールは2万円少々で追加できるのだ。

3ナンバー化を嘆く旧型オーナーがそれでもおススメする「新型ポロはこのグレード・仕様を買え!」

最も推奨できる買い得グレードはTSIコンフォートラインで、前述の安全装備を上級化するセーフティパッケージを装着したい。価格を合計すると241万7800円で、カーナビのディスカバープロパッケージまで加えると264万4600円だ。

LEDヘッドライト、スマートエントリー&スタート、スポーツコンフォートシートなどが欲しい時にはTSIハイラインになり、これにセーフティパッケージとディスカバープロパッケージを加えると合計297万4000円になる。

つまり装備を加えた合計金額は250~300万円だ。先代TSI コンフォートラインも車両本体が226万9000円だったから、価格はほぼ据え置かれている。

それにしてもポロの3ナンバーサイズへの拡大は、日本のユーザーにどのように受け止められるだろうか。

現行型の7代目ゴルフがデビューした2013年、本国の開発者に「次期ポロもMQBを使うと思うが、全幅を1700mm未満に抑えられるか」と尋ねた。この時には「MQBは幅についてもフレキシブルだから、次期ポロを1700mm未満で開発することは可能だ」と返答されたが、結局そうはならなかった。

VWはドイツのメーカーだから5ナンバーサイズへのこだわりが乏しいのは理解できるが、「安心して使える上質な5ナンバー車」を求めて従来型のポロを選んでいた日本のユーザーは困ってしまう。かくいう私も、先代ポロユーザーのひとりとして戸惑っている。

ポロの3ナンバー化で、5ナンバーサイズで選べるクルマがいよいよ減ってきた。スズキ スイフト、マツダ デミオ、それとも日産 ノートe-POWER・・・。

先代ポロの代わりにクルマ好きを納得させる5ナンバー車は、果たしてどの車種だろうか。

[Text:渡辺陽一郎/Photo:和田清志・フォルクスワーゲングループジャパン]

フォルクスワーゲン 新型ポロの主要スペック

Volkswagen New Polo
車種名POLO TSI TrendlinePOLO TSI ComfortlinePOLO TSI Highline

駆動方式

2WD(FF)

全長

4,060mm

全幅(車幅)

1,750mm

全高(車高)

1,450mm

ホイールベース

2,550mm

乗車定員

5人

車両重量(車重)

1,160kg

エンジン

直列3気筒

排気量

999cc

最高出力

70kW(95PS)/5,000~5,500rpm

最大トルク

175N・m(17.9kgf/m)/2,000~3,500rpm

燃料

無鉛プレミアムガソリン(ハイオク)

燃料タンク容量

40リットル

トランスミッション

7速DSG(デュアルクラッチトランスミッション)

JC08モード燃費

19.1km/L

タイヤサイズ

185/65 R15

195/55 R16

価格(消費税込)

2,098,000円

2,299,000円

2,650,000円

フォルクスワーゲン/ポロ
フォルクスワーゲン ポロカタログを見る
新車価格:
279.9万円448.5万円
中古価格:
15.2万円401万円

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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