フォルクスワーゲン 新型ポロ 速攻試乗/8年ぶりのフルモデルチェンジで全てが一新

  • 筆者: 今井 優杏
  • カメラマン:和田 清志・フォルクスワーゲングループジャパン

ボディサイズは3ナンバー枠へ拡大したが、ユーザーの反応はおおむね好調

ポロよ、おまえもか。最初はそう思っていた。

「輸入車ながら5ナンバー」をセールスポイントのひとつとしていたポロが3ナンバーになる=ボディサイズが拡大されるというニュースは、日本のユーザーにとってけっこうな衝撃だろうと考えたのだ。なにせもともと軽いコンパクトカーゆえ、少しの重さの違いで重量税はじめ、ランニングコストもシビアに変わって来る。

しかし、である。

実際のところをフォルクスワーゲングループジャパン広報に聞いてみれば、現状、販売店からのフィードバックを聞く限り、サイズに対してのネガティブはほとんど上がって来ていないのだと言う。それよりも8年ぶりのフルモデルチェンジを歓迎する声のほうが大きく、反響も概ね好調ムードであるとのこと。

>>VW 新型ポロを画像でもっと見る![Photoギャラリー]

おお! ちゃんと走りも3ナンバークラスになってる

むろん、新型ポロは今日まさに情報解禁を迎えたのだから、本格的な反響はこれからだ。しかし、それを聞いてちょっと推測してみるに、ポロを愛車に、と望む層は意外に、5ナンバーであろうが3ナンバーであろうが関係なく、ただポロというコンパクトかつ機敏で小洒落たパッケージに惚れて、ガレージにそれを納めるのだよというひとが圧倒的に多いのではないかな、とも考えられるに至った。

車格やJC08モード燃費だけを追い求めるなら国産・輸入問わずもっとほかに選択肢は用意されているし、だいいちキャラは違うものの、ナンバーだけを気にするならフォルクスワーゲン内にもすでに5ナンバーの弟分「up!」が存在するんだし。

というわけで、コチラ側も変に構えることをせず、3ナンバーになり、すこし大きくなったポロに対して、ネガティブなフィルターを掛けない視点で試乗してみることにした。

結果、おお! ちゃんと走りも3ナンバークラスになってるじゃないですか! ポロの基本性格である“小粒でヒリリと辛い”フィールは根幹に残しつつ、キャラを少しコンフォート方向に鞍替えして来た感じ。

・・・などというインプレッションは後述するにして、まずは何故ポロが大きくなっちゃったかについて。

新型VWポロのボディサイズはなぜ大きくなったのか

現在、自動車業界だけでなく世界中のものづくり業界において、モジュール化とかモジュラー化とよばれる製造戦略が推し進められているのだが、自動車においてのソレは、おもに自社内あるいはグループ内においてのプラットフォームの共用を指す。

各モデル(セグメント)によって散在していた部品群をセグメントも跨いで共通化するというものだ。モデルを跨いで部品や技術を共用出来るということは、製品のクオリティを上げつつコストを下げられるほかにも、工場、またはもっと細かく言えばラインごとに生まれていた製造ムラやばらつきを防いだりもできるというメリットがあるのだ。

フォルクスワーゲンは以前よりゴルフ以上のクルマにおいて、かなり早い段階からモジュール化を敷いている。同社はこの戦略を独自に「MQB」(ドイツ語でModularen Querbaukastenの頭文字)と銘打っているのだが、そのMQBのコンパクトカー用モジュールが新開発された。そしてそれが初めて採用されるのが新型ポロというわけだ。

これにより、上位セグメント車との技術・部品共用が易くなり、上位モデルに採用されていたADAS(先進安全技術)や走りの質感を手に入れた代わりに、コンパクトなボディを失った。なんだかまるで、人間の足を手に入れた代わりに声を失った人魚姫みたい。つまりは、ユーザー的なメリットとして「パサート/ アルテオンクラスのADASやゴルフ並みの走りをポロのお値段で手に入れることが出来る!」、デメリットとしては何回も申し訳ないけど「デカイ」に尽きる。

とはいえ実際問題ナンバーの括りは跨いでもポロはポロ。ゴルフ自体もまあまあ大きくなっているのだから、先代と比較すれば全長+65mm、ホイールベースは+80mmとはなっているもののゴルフよりはもちろんひとまわり小さいのであって。

具体的な数値で言えば4,060×1,750×1,450mm(全長×全幅×全高)。

ゴルフ比で−205×−50×−30mm(全長×全幅×全高)となり、決して扱いにくいほどではない。

4気筒1.2ターボが3気筒1.0ターボへさらにダウンサイジング、その実力を試す

むしろコアなファンが気になるのはエンジンの変更じゃないかと思う。

新型ポロは1.0リッターの3気筒TSIエンジン×7速DSGの組み合わせで、これまでの1.2リッター直4のTSIエンジンからさらにダウンサイジングされる。ボディが大きくなるのにエンジンが小さくなるってどうよ、というところに焦点が当てられるのは当然だ。

しかし、この3気筒がなかなかしっかりよく回り、パワフルで非力感を微塵も感じさせないモノだったので、バッチリ安心して欲しい。

時速0キロからの出足こそややモッタリしてはいるのだけど、そしてスタート時の振動はなかなかのものだけど、それから後は圧倒的にパワフルで、本当に1リッターなのかと二度見するレベル。

試乗コースに選んだのは葡萄畑の連綿と広がるハードな登坂道を含むワインディング・ロードだ。で、ワイン好きな諸兄ならご存知かと思うのだけど、葡萄というものは水ハケが命。よって葡萄畑のあるところに急勾配アリ、なんである。

そんなワイン畑・・・じゃなくて葡萄畑を、新型ポロの3気筒エンジンは軽快に駆け巡る。繊細に良く回るエンジンは全域でコントローラブルだ。

今回のMQBの恩恵でオーバーハングが短くなり、路面にドライバーが近くなったせいか、オンザロード感覚は先代以上だし、しかも見切りもいいのでコーナーの先までよく見渡せて、心までワクワクとスポーティになる。

7速のデュアルクラッチDSGとのマッチングはさすがフォルクスワーゲンの仕事、と唸る。登坂ワインディングで再加速したい時には、アクセルの踏み足しにレスポンスよく反応して即座に下のギアに入ってくれるし、ある程度車速が付いたらコッチも即座に上のギアに入って制振・静音&燃費に貢献。いやはや、たいした小さな巨人っぷりだ。

新プラットフォームMQB化で走行安定性や剛性感もアップ

MQBの恩恵はもうひとつあって、ホイールベースもまた伸びている。これが効果を表すのが直進安定性で、なにも高速道路をタラタラ流さなくたって、やや渋滞気味のまっすぐな一般道でだってカッチリと安定して、ドライバーを疲れさせない。

さらに、プラットフォームが上位車種譲りとあって、とにかく剛性がしっかりしている。左右に激しくステアリングを切り返すようなシーンでも揺り返しがなく、ひとつひとつのコーナーごとにロールも揺れもがきっちり収束するから、むしろ4気筒エンジン搭載の先代よりもレーシングでスポーティに扱える印象。実はエンジンサウンド的に見ても4気筒よりも3気筒のほうがワイルドでいい音がするというのが定説なのだが、今回の3気筒も例に漏れなかった。

さらにスポーティに運転したいなら、“ハイライン”を選んで、パドルシフトを積極的に使えば良い。今回の試乗もまさにこの“ハイライン”だったのだが、インテリアの質感も高く、3ナンバーならではのゆったりした室内空間も手伝って、相当快適なドライブを楽しむことが出来た。

よくコンパクトカーに対して「エンジンのスペックを全部使い切って遊ぶ」なんて比喩が使われるが、いやいやなかなかどうして、このポロで一般道を走るなら、使い切るのがなかなかに難儀なほどに元気いっぱい。

これから出て来るポロGTIも、コレがベースなら相当期待していいと思う。

[Text:今井 優杏/Photo:和田 清志・フォルクスワーゲングループジャパン]

フォルクスワーゲン 新型ポロの主要スペック

Volkswagen New Polo
車種名POLO TSI TrendlinePOLO TSI ComfortlinePOLO TSI Highline

駆動方式

2WD(FF)

全長

4,060mm

全幅(車幅)

1,750mm

全高(車高)

1,450mm

ホイールベース

2,550mm

乗車定員

5人

車両重量(車重)

1,160kg

エンジン

直列3気筒

排気量

999cc

最高出力

70kW(95PS)/5,000~5,500rpm

最大トルク

175N・m(17.9kgf/m)/2,000~3,500rpm

燃料

無鉛プレミアムガソリン(ハイオク)

燃料タンク容量

40リットル

トランスミッション

7速DSG(デュアルクラッチトランスミッション)

JC08モード燃費

19.1km/L

タイヤサイズ

185/65 R15

195/55 R16

価格(消費税込)

2,098,000円

2,299,000円

2,650,000円

フォルクスワーゲン/ポロ
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新車価格:
273.9万円435.7万円
中古価格:
13.6万円405.3万円
フォルクスワーゲン/クロスポロ
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285.1万円285.1万円
中古価格:
39万円139.4万円

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今井 優杏
筆者今井 優杏

自動車ジャーナリストとして、新車や乗用車に関する記事を自動車専門誌、WEBメディア、一般ファッション誌などに寄稿しながら、サーキットやイベント会場ではモータースポーツMCとしてマイクを握り、自動車/ モータースポーツの楽しさ・素晴らしさを伝える活動を精力的に行う。近年、大型自動二輪免許を取得後、自動二輪雑誌に寄稿するなど活動の場を自動二輪にも拡げている。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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