THE NEXTALK ~次の世界へ~ トヨタ ハイブリッドカー開発責任者・小木曽聡インタビュー(5/5)
- 筆者: 御堀 直嗣
- カメラマン:佐藤靖彦
『こだわり』の成果
その小木曽聡の座右の銘は、『こだわり』だと言う。
【小木曽聡】:私のことをよく知っている人は、座右の銘が「こだわり」だと聞いて、なるほどと言うでしょうね。とくにプリウスの開発以降は、どのような物を出すかにこだわってきました。そして、燃費性能にこだわり続け、またお客様が喜ぶクルマの提案にこだわり続け、常に、ものすごく高い目標を掲げてきました。その高い目標をやり抜くことに、こだわってきました。
そんなに高い目標はできそうにないと思えても、みんなでデータを見ることにこだわっていくと、時間は掛かっても、裏に答えが見えてくる。コンセプトを立てる際には、営業や企画担当から市場の調査レポートが出てきますが、その内容は本当か?と、自分でお客様に直接聞いてみたい、とこだわって、ユーザーの声を収録したビデオを何度も観なおします。
こういうビデオってけっこう長くて、10時間くらいのものを何度も繰り返し、2か月くらい、毎週末自宅で観ていたなんていうこともありました。裏返すと、「しつこい」ということなのでしょうが(笑)…
技術だけでなく、クルマ作りにも、すべてにこだわるのが、私は好きなんですね。
筆者は、プリウスLに乗っている。3代目プリウスのグレードの中で最高燃費性能を備える車種だ。そのクルマで、私はリッター28~30kmの燃費を当たり前のように出す。燃費運転はするが、交通の流れに齟齬を起こすような速度で走っているわけではない。最高記録は、900km以上を走った際の平均燃費で、リッター30.8kmである。
クルマは、完全ノーマル、市販のままだ。 そういう低燃費運転を続けていると、モーター走行で発進後、加速途中にエンジンが始動し、なお加速している最中、そこでアクセルペダルを一旦戻すとエンジンが停止し、そこでモーターがスッと加速させる状況があるのがわかる。こうして、燃費を稼ぐ。
この話を小木曽にしたら、モーター走行中に10kW以上の出力要求があるとエンジンが始動し、加速していくが、目指す速度の少し手前でアクセルを戻すことによって、そこでは10kW以下の出力要求領域になるため、モーターのみで残りの加速をすることができるという。この技を使えば、クルマの流れに逆らうことなく、燃費をより大きく改善できる。その結果が、私の燃費記録だ。そして、こんなに燃費性能に優れるクルマは他に類を見ないのではないかと私は日々自分のプリウスに感動しているのである。燃費性能に、異次元感覚がある。だから、ハイブリッドカーのスタンダード化を期待するわけだが、まだ道半ばと小木曽は答えた。とはいえ、あと10年で乗用車の半数をハイブリッド化したいと語った小木曽の言葉は、彼自身の信条である〈こだわり〉によって、達成されるのではないかと思えてくる。
10年後に、このインタビューを読み返してみたい。・・・END
御堀 直嗣(みほり なおつぐ)プロフィール
1955年東京出身。自動車ジャーナリスト。玉川大学工学部機械工学科卒業。1978年から1981年にかけてFL500、FJ1600へのレース参戦経験を持つ。現在ではウェブサイトや雑誌を中心に自動車関連の記事を寄稿中。特に技術面のわかりやすい解説には定評がある。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。また現在では電気自動車の普及を考える市民団体「日本EVクラブ」副会長を務める。
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