THE NEXTALK ~次の世界へ~ トヨタ ハイブリッドカー開発責任者・小木曽聡インタビュー(4/5)
- 筆者: 御堀 直嗣
- カメラマン:佐藤靖彦
トヨタのシステムは複雑・高コストだから普及に手間がかかるのではないか?
3月11日に起きた東日本大震災は、反原発や脱原発などの世論を動かし、ドイツ、イタリア、スイスなどは、脱原発の動きを国民が支持した。エネルギーに関わる関心が国内外を問わずにわかに持ち上がった。
その結果、化石燃料の高騰や需給への先行きの不安が起きようとしている。震災の影響は、ハイブリッドカー普及への勢いをいっそう加速させるのか?
【小木曽聡】:エネルギーの需給が逼迫する恐れが早まったとはいえるでしょう。そしてエネルギーを確保するには、あらゆる方法を上手に使えるようにしていかなければなりません。消費する側も、効率よく使っていくことが大事になります。将来的に、水素はさまざまな方法で入手できますから、燃料電池車の可能性もあるでしょう。
とはいえ、10年という短期間にコストを含めた可能性を高めていけるのはハイブリッドカーであり、そこを頑張るのがエンジニアの務めだと思っています。震災によって、ガソリンスタンドが一時的に営業できなくなりましたから、一回の給油で長い距離を走れるハイブリッドカーの普及がますます大事になってきたといえます。
1997年に初代プリウスが登場した折、ドイツの自動車メーカーは「一時しのぎの技術」と無視しようとし、トヨタ以外の自動車メーカーは「構造が複雑で、コスト高」と、トヨタのハイブリッドシステム(THSおよびTHSⅡ)を評した。
それを鵜呑みに、メディアもトヨタのハイブリッドシステムは複雑だと評してきた。対して、トヨタのエンジニアは、「非常にシンプルな構造で、最高の燃費を実現している」と話す。
真実は何処にあるのか?
【小木曽聡】:まず初代プリウスを開発するに際して、トヨタのエンジニアが集まってあらゆるハイブリッドシステムを検証しました。その中から、THSを確定したのですが、選択の条件は次の二つです。
①燃費改善の可能性が一番高いこと
②構造がシンプルであること
THSおよびTHSⅡ(2代目プリウス以降のシステム:筆者注)を構成するのは、エンジンの他に、遊星歯車が1つと、モーター/発電機が2個だけです。たったこれだけで、EV走行/エンジン走行/エンジンとモーターを併用した走行/エンジンを停止して回生といった、4つのモード全てをまかなえるのです。
それに対し、モーター/発電機が1つというハイブリッドシステムでは、エンジンの他にトランスミッションのCVTがあり、そのCVTには、2個のプーリー、ベルト、ニュートラルを実現するためのクラッチ、プーリーを動かすための油圧ポンプ、さらにエンジン始動用のスタータモーターが必要になります。こちらのほうがよほど部品点数は多くないですか?
確かに、初代プリウスでは、モーター/発電機やコントローラーが大きくて、コストが高かったのは事実です。しかし3代目プリウス以降は、モーター/発電機が1つのハイブリッドシステムと、コストは変わりません。そのうえで、なおTHSおよびTHSⅡが複雑だと言われる背景には、見た目の判り難さがあるかもしれません。遊星歯車と2つのモーター/発電機の仕組みが、理解しにくいという訳です。
今後は、他の自動車メーカーでも、2モーター/発電機のハイブリッドシステムが出てくるかもしれません。またトヨタでは、2012年にプリウスより小型のハイブリッドカーを発売予定です。本当に高くて複雑なハイブリッドシステムなのかどうか?――小型のハイブリッドカーが出てくれば、やがて、我々の言っている「非常にシンプルな構造で、最高の燃費を実現している」ということが、理解されていくのではないでしょうか。
ハイブリッドカーの開発に18年間邁進してきた小木曽聡の言葉一つ一つには、絶対の自信が満ちている。
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