これは紛れもなく“ピュア・スポーツカー”の領域だ!「トヨタ GRヤリス」サーキット試乗(3/3)
- 筆者: 山田 弘樹
- カメラマン:小林 岳夫
[まとめ]モータージャーナリスト 山田 弘樹のGRヤリス評
GRヤリスは、今買うべきスポーツカーで指折りの一台だと思う。
これだけの速さを市販するに当たって、そのサスペンションセッティングは、しっかり作られながらも絶妙にコンサバ。きっちりと安全性を担保して作り込まれている。
本音を言えばメガーヌRS TrophyやRS Trophy Rのレベルまでステアバランスを追い込んで欲しい。そうすれば、たとえ911GT3 RSやケイマンGT4のようなクラブスポーツが買えなくても、純度の高いスポーツドライビングが味わえる。
GRヤリスのポテンシャルは、その領域にあると思う。
ともあれカーボンニュートラルが声高に叫ばれるこの時代に、その先陣を切るトヨタがここまでキレたスポーツカー、いやラリーカーを作り上げてくれたのだ。
そこから先は、オーナーがGRヤリスを自分色に染める番だろう。
トヨタ GRヤリス RZ “High performance” 主要スペック
全長×全幅×全高:3995mm×1805mm×1455mm/ホイールベース:2560mm/車両重量:1500kg/最小回転半径:5.3m/乗車定員:4名/エンジン型式:G16E-GTS型/エンジン種類:直列3気筒 インタークーラーターボ/総排気量:1618cc/最高出力:272ps(200kW)/6500rpm/最大トルク:37.7kgf-m(370Nm)/3000-4600rpm/使用燃料:無鉛プレミアムガソリン(ハイオク)/トランスミッション:6速マニュアルトランスミッション/サスペンション形式:(前)ストラット式コイルスプリング/(後)ダブルウィッシュボーン式コイルスプリング/駆動方式:スポーツ4WD「GR-FOUR」(4輪駆動)/燃料消費率:13.6km/L[WLTCモード燃費]/メーカー希望小売価格:4,560,000円(消費税込)
GRヤリス RZ(標準仕様)を試す
ちなみに“Performance”ではない標準グレード「RZ」は、LSDがないうえにタイヤのグリップレベルも落としてあるから、その走りはもう少しソフト。全ての操作における正確性やソリッドさは和らげられているから、サーキットを視野に入れるなら“Performance”をお勧めする。そしてストリートを中心にその質感を味わいたいなら、標準グレードがベストチョイスだ。
ダートコースの走り、さらに1.5L+CVTモデルも試してみた
ダート路も走らせることが出来た!
当日は、ダート/ラリー用のGRパーツを装着したGRヤリスにも試乗した。
開発陣のお勧めは前後トルク配分50:50の「トラックモード」。これでもさすがに低μ路はニュートラルステアを飛び越えてオーバーステアの領域へと入ったが、等速トランスファーや機械式LSDを装備したトラクション性能は高く、その操縦性は非常にコントローラブル。車体をスライドさせながらもステアリングを真っ直ぐに保ちながら走る4輪ドリフトがたっぷりと味わえた。新車で手に入れたGRヤリスをいきなりダートに持ち込むハードルは高いが、この走りは魅力的。ダッシュ貫通のロールケージをカバーする内装も競技車然とした雰囲気を和らげているし、トヨタとしてもその面白さをより多くのユーザーに知ってもらおうとしているようだった。
1.5リッター+CVTのエントリーモデル「RS」とはどんなクルマなのか
1.5リッターの直列3気筒ダイナミックフォースエンジン(120ps)にCVTの組み合わせ。そして駆動方式はFF。しかしこの「RS」グレードは、単なる“ガワだけGRヤリス”と呼ぶには、ちょっと惜しいユニークな存在だった。
もちろんその速さは4WDグレードを試乗した後だとビックリするくらい遅く、そのギャップに最初は目が点。まるでクルマが止まっているかのような気分になった。
しかしトップスピードが遅い即ちブレーキングはさらに奥にできるということであり、実際RSは、こうした走りに答えるだけのシャシー性能を持っていた。それはそうだろう、ボディはGRヤリスと同じであり、かつその車重(1130kg)はRZより150kgも軽いのだから。
しなやかながらも追従性のよい足まわり。まじめに走らせたRSのターンインはRZよりもヒラリと鋭く、スポーツシフトCVTの追従性もいい。ただこれだけの走りができるのであれば、RSにも6速MTを用意して欲しかった。できればエンジンパワーももう少しだけ……
ともあれアルミパネルやカーボンルーフまで備えたRSは、羊の皮を被った狼ならぬ、狼の皮を被ったシャシーファースター。でもやっぱり、もう少しだけパワーが欲しい……。
[筆者:山田 弘樹/撮影:小林 岳夫]
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