トヨタ クラウン、アスリートに初の“2リッターターボ”搭載、世界初採用「ITS Connect」も [詳細解説](2/2)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:トヨタ自動車株式会社
ボディには構造用接着剤を初採用
今回のクラウンマイナーチェンジでは、ボディに構造用接着剤を初採用。スポット溶接箇所は90箇所以上も増やした。そのため、ボディ剛性が向上している。
これに伴いショックアブソーバーやブッシュといった前後のサスペンション、電動パワーステアリングなどの設定も見直した。結果として、走行安定性や乗り心地が全般的に高まっている。
世界初採用の「ITS Connect」に期待
装備で注目されるのは、ITS専用周波数を使った「ITS Connect」を世界初採用したことだ。
この機能は「路車間通信システム」と「車車間通信システム」によって成り立つ。「路車間通信システム」は、路上のセンサーと車両を通信機能で結んで安全性を向上させる。
例えば交差点で右折しようとしている時、対向車線に直進車両がいたり、横断歩道上に歩行者がいるのに発進しようとすれば、表示とブザーでドライバーに注意をうながす。また直進する先の信号が赤なのにアクセルペダルを踏み続けている時も注意を与える。赤信号で停車した時、信号待ちの時間を表示する機能も備わる。
「車車間通信システム」は、車両同士を通信機能で結ぶシステム。車間距離を自動制御できるクルーズコントロールを作動させて追従走行している時、先行車両も同じ機能を備えればアクセルやブレーキの操作に関する情報を車車間で共有できる。
となればミリ波レーダーやカメラを使う以上に、綿密な追従走行が可能だ。緊急車両にも同じ機能を備えれば、進路を譲る指示を早期に受け取ることも可能になる。
「ITSConnect」以外にも、走行中にドアミラーで確認しにくい後続車両をレーダーで検知し、ドライバーに注意を促すブラインドスポットモニターなどを設定した。クラウンマジェスタにも「ITSConnect」が採用され、ボディ剛性の強化、サスペンション設定の見直しなどが図られている。
2リッターターボはアスリート専用ではなくロイヤルにも設定を
マイナーチェンジを受けたクラウンロイヤル&アスリートの価格を同じエンジンタイプ同士でマイチェン前と比べると、12~14万円の値上げになった。
ディスチャージヘッドランプをバイビーム式LEDに変更したり、ボディ剛性の向上などを行った対価と考えられる。
またアスリートに加わった2リッター直4ターボは、2.5リッターV6を搭載した従来型に比べて約25万円高い。なのでターボ化による価格上昇は、共通する値上げ分の12~14万円を差し引いた12万円前後だろう。従来の6気筒が4気筒に減ったこととターボの装着はコストが互角だから、ターボは少し高めの価格設定と考えて良い。
注意したいのはエコカー減税だ。小排気量のターボでありながら、減税に合致していない。エコカー減税を受けるには、クラウンアスリートの車重では、最も減税率が少ない平成27年度燃費基準プラス5%でもJC08モード燃費が13.9km/Lに達する必要がある。それが13.4km/Lにとどまるから、減税対象外になった。
とはいえ2リッターターボは高い動力性能と低燃費を両立させた高効率なエンジンだから、アスリート専用にするのはツジツマが合わない。
「ロイヤルには排気量に余裕があって運転感覚の自然な2.5リッターが最適」という判断だと思われるが、V6はアイドリングストップも装着していない。なので設計の新しい2リッターターボを搭載すべきだ。
「ITSConnect」は、グレードに応じて2万7000円、あるいは3万240円でメーカーオプションとなる。機能を考えれば割安だが、緊急自動ブレーキを作動できる衝突回避の支援機能は、従来型のプリクラッシュセーフティシステムを踏襲した。
ランドクルーザーのマイナーチェンジなどから採用が開始された、ミリ波レーダーと単眼カメラを併用するToyota Safety SenseP(トヨタセーフティセンスP)は装着されていない。なので歩行者を検知して安全装備を作動させることもできない。
以上のようにクラウンのマイナーチェンジは若干腰が引けた印象で今後の課題を残す部分も多いが、「ITSConnect」は発展が期待される分野だ。世界初採用のシステムでもあるから、今後も継続的に力を入れ続ければ、トヨタが、そして日本車が通信機能の分野をリードできるかも知れない。
ちなみに衝突の回避を支援するプリクラッシュセーフティシステムは、2代目ハリアーが世界で最初に採用しながら、ドイツ勢に抜かれた経緯がある。
「ITSConnect」が世界のクルマを安全にする日本の技術に成長したら、日本のクルマ好きとしては素直に嬉しいと思う。
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