新型クラウンクロスオーバーはセダンとSUVの中間的な存在! 同門ハリアーと比べて分かった新型クラウンクロスオーバーの特徴と欠点とは

  • 筆者: 渡辺 陽一郎
  • カメラマン:堤 晋一/島村 栄二/トヨタ自動車
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トヨタは2022年7月15日(金)、新型クラウンを発表しました。16代目となる新型クラウンは近未来感のある新しいデザインを取り入れ、トレンドとなっているSUVを含む全4タイプのボディを用意します。

そんな新型クラウンの走行性能や価格、スペック、内外装のデザインについて、カーライフ・ジャーナリストの渡辺陽一郎さんが詳しく解説します。

目次[開く][閉じる]
  1. 新型クラウンはSUVを3種類、セダンを1種類そろえる
  2. 新型クラウンクロスオーバーのデザイン
  3. 新型クラウンクロスオーバーの荷室
  4. 新型クラウンクロスオーバーのインテリア
  5. 新型クラウンクロスオーバーの居住性、後席
  6. 新型クラウンクロスオーバーの走行性能、静粛性
  7. 新型クラウンクロスオーバーのボディサイズ
  8. 新型クラウンクロスオーバーの走行安定性、タイヤ
  9. 新型クラウンクロスオーバーの安全装備、運転支援機能、価格

新型クラウンはSUVを3種類、セダンを1種類そろえる

「フルモデルチェンジ」は文字通りクルマのすべてを造り替えることですが、通常は車種の基本的なコンセプトやサイズは継承します。基本コンセプトまで変えると、まったく別のクルマになるからです。

ところがトヨタ 新型クラウンは、基本コンセプトから変更しました。従来型の日本向けの上級セダンでは、売れ行きが低迷して、商品として成り立たなくなったからです。

販売不振が深刻なら、以前のマークXやプレミオ&アリオンのように、クラウンを廃止する方法もありました。しかしトヨタは、それを避けたいです。クラウンは初代モデルを1955年に投入した伝統ある商品になるからです。

そこで新型クラウンは、SUVを3種類、セダンを1種類そろえる「クラウンシリーズ」に発展しました。SUVなら海外でも販売しやすく、合計4種類のボディがあれば、販売総数も高く保ちやすいという狙いです。

その新しいクラウンシリーズの第1弾として、「クラウンクロスオーバー」が登場したので試乗しました。試乗したグレードは、直列4気筒2.5Lのハイブリッドを搭載するGアドバンストと、そのレザーパッケージです。トヨタの上級SUVとしてはハリアーが人気なので、比較チェックも行います。

なお車両の概要は、2022年7月22日に掲載した「トヨタ新型クラウン徹底解説」を参考にしてください。

新型クラウンクロスオーバーのデザイン

新型クラウンクロスオーバーの外観を見ると、大径ホイールとタイヤが装着され、それを縁取るフェンダーには、ブラックの樹脂パーツも備わっています。SUVのデザイン手法ですが、新型クラウンクロスオーバーのボディタイプはセダンです。後席と荷物を収めるトランクスペースは分離され、小さなトランクフードを使って出し入れします。

これは荷室の広さや使い勝手を考えると大きな欠点ですが、後席とトランクスペースの間に骨格や隔壁があることで、ボディ剛性を高められます。後輪が路上を転がる時に発生する音も、車内に伝わりにくいです。

新型クラウンクロスオーバーの荷室

荷室の使い勝手をハリアーと比べると、新型クラウンクロスオーバーは見劣りします。荷室容量は450Lと十分ですが、荷室開口部の広さが大幅に減るからです。またハリアーなら、後席の背もたれを前側に倒して1600mm以上の荷室長を確保できますが、新型クラウンクロスオーバーにこの機能はありません。

新型クラウンクロスオーバーのインテリア

新型クラウンクロスオーバーの車内に入ると、インパネは渋い仕上がりです。造り込みはていねいですが、派手な印象は抑えました。従来のクラウンとは、デザインや手触りが大幅に異なります。メーターの視認性や操作性は良好です。

ハリアーのインパネも華美ではありませんが、新型クラウンクロスオーバーに比べると、光沢の伴うパーツを大胆に使っています。造形も立体的です。インパネは上下方向の厚みが強調され、SUVらしい印象を受けます。

新型クラウンクロスオーバーの居住性、後席

居住性については、新型クラウンクロスオーバーの場合、後席に個性があります。燃料タンクを床下に搭載して、バイポーラ型ニッケル水素電池を後席の下に設置したため、トランク容量は十分に確保できましたが、後席の床が少し高いです。

全高を1540mmに抑えたこともあり、後席は床と座面の間隔が不足しています。座ると膝が持ち上がり、腰は落ち込みます。小柄な乗員は、大腿部を押された感覚になりやすいです。

その代わり後席の足元空間は広いです。身長170cmの大人4名が乗車した時、後席に座る乗員の膝先には、握りコブシが4つ入る余裕があります。背もたれや座面の造りも良好で、腰の落ち込む姿勢に不満がなければ長距離移動も快適です。

一方、ハリアーの後席は一般的です。足元空間は、前述の測り方で握りコブシ2つ分。新型クラウンクロスオーバーの4つ分に比べて狭いですが、床と座面の間隔は十分に確保され、腰が落ち込む違和感はありません。自然な座り心地です。

新型クラウンクロスオーバーの走行性能、静粛性

走行性能についても触れていきましょう。新型クラウンクロスオーバーの試乗車は、先に述べた通り、直列4気筒2.5Lのハイブリッドを搭載しています。駆動方式は全車が4WDで、後輪を前輪とは別のモーターで駆動するE-Fourです。

試乗を開始すると、実用回転域の駆動力に余裕があります。エンジン回転数が下がった状態でアクセルペダルを緩く踏み増した時など、反応の素早いモーターの駆動力が立ち上がり、速度を滑らかに上昇させます。これはほかのハイブリッドや電気自動車にも当てはまるモーター駆動の特徴ですが、新型クラウンクロスオーバーでは特に明確に感じ取れます。

遮音を入念に行い、トランクスペースを分離させたセダンボディの採用で、ノイズは小さいです。ノイズを抑えたことで、4気筒エンジンの粗い音質が逆に聞こえやすくなった面もありますが(夜中に時計の音が大きく感じるのと同じ理由です)、静粛性は良好です。

ハリアーハイブリッドも、基本的には新型クラウンクロスオーバーGと同様のシステムを使います。動力性能の性格も似ていますが、実用回転域の駆動力と静粛性は、新型クラウンクロスオーバーが少し優れています。

燃費(WLTCモード)は新型クラウンクロスオーバーとハリアーの2.5Lハイブリッド車同士で比較すると新型クラウンクロスオーバーが22.4km/L、ハリアーハイブリッドは22.3km/Lで大きな差はありません。

新型クラウンクロスオーバーのボディサイズ

日常的な使い勝手では、新型クラウンクロスオーバーの場合、駐車場などでボディの大きさを意識させます。全長は4930mm、全幅は1840mm、全高は1540mmになるからです。それでも後輪操舵のDRS(ダイナミックリアステアリング)を装着したため、低速域では後輪が前輪とは逆方向に操舵され、最小回転半径は5.4mに収まります。

前方視界は良好で、ボンネットも視野に入ります。注意したいのは後方視界で、サイドウインドウの下端を持ち上げました。ボディ後端のピラー(柱)も太く、真後ろのウインドウは上下寸法が乏しいため、購入時には縦列駐車などを試しましょう。

ハリアーのボディサイズは、全長は4740mmに収まりますが、全幅は1855mmとワイドです。全高は1660mmなので、新型クラウンクロスオーバーと違って立体駐車場の利用性は悪いです。視線の位置が高いため、左側面の死角が大きく、購入時には縦列駐車などを確認したいです。ハリアーには後輪操舵の機能がなく、最小回転半径も5.5〜5.7mと大回りです。

新型クラウンクロスオーバーの走行安定性、タイヤ

新型クラウンクロスオーバーの走行安定性は、低重心のボディで後輪操舵も併用することから、比較的良く曲がります。前後輪を別々のモーターで駆動して、後輪操舵も備わるため、4輪の制御を綿密に行っています。

ただしこの制御のためか、カーブを曲がっている時は、進路が少し曖昧になる印象も受けました。直進時とカーブを曲がる時では、安定性の印象が異なります。

ハリアーはこの点も自然です。新型クラウンクロスオーバーに比べてボディの傾き方が大きく、車線変更時の揺り返しも小さくありません。峠道を走ると、ハリアーは少し曲がりにくく、旋回軌跡を拡大させやすいです。それでもSUVの一般的な挙動ですから、運転感覚は新型クラウンクロスオーバーよりもハリアーが馴染みやすいです。

乗り心地は新型クラウンクロスオーバーが快適です。特に19インチタイヤ(225/55R19)を履いたGアドバンストは、21インチ(225/45R21)を装着するレザーパッケージよりも柔軟でした。

ただしレザーパッケージも、21インチのタイヤサイズを考えると快適です。タイヤが路上を跳ねるような粗さはありません。19インチに比べると操舵感も少し機敏で、ステアリングホイールを保持する手のひらに、路面の状態が伝わりやすいこともメリットです。19/21インチを乗り比べて選ぶ方法もあるでしょう。開発者は「4輪操舵の採用で走行安定性を底上げしたから、足まわりを柔軟な設定にできた」と述べました。

新型クラウンクロスオーバーの安全装備、運転支援機能、価格

安全装備や運転支援機能は、ハリアーも2022年9月に実施されたマイナーチェンジで進化させました。それでも新型クラウンクロスオーバーは、高速道路の渋滞時にステアリングホイールから手を離しても運転支援機能が続けられたり、車外からスマートフォンで車庫入れの操作が行える機能などを採用しています。

注意したいのは、これらの先進機能が、2.4Lターボにハイブリッドを組み合わせた高価格のRSでないとオプション装着できないことです。新型ノア&ヴォクシーでは、同様の装備を大半のグレードに用意したので、新型クラウンクロスオーバーは上級車種ですから、2.5Lハイブリッドにも早急に設定すべきです。

試乗した新型クラウンクロスオーバーGアドバンストの価格は510万円です。ハリアーハイブリッドZ・E-Four(4WD)は484万8000円ですから、新型クラウンクロスオーバーは約25万円高いですが、後輪操舵やパノラミックビューモニターなどを標準装着しています。従って装備と価格のバランスは同程度です。

以上を総合的に判断すると、新型クラウンクロスオーバーは、セダンとSUVの中間的な存在です。ハリアーと違って大きなリヤゲートや背の高い荷室を備えないため、快適な乗り心地や適度に機敏な運転感覚をどのように評価するかにより、新型クラウンクロスオーバーの価値が決まります。

そして新型クラウンクロスオーバーを購入する時には、ハリアーも一緒に試乗すると、その個性やクルマづくりが一層良く分かります。

【筆者:渡辺 陽一郎/カメラマン:堤 晋一・島村 栄二・トヨタ自動車】

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筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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