トヨタ アベンシス 試乗レポート

ヨーロピアンテイストのトヨタ車

アベンシスはプレミオ系のプラットホームをベースに、トヨタがヨーロッパ市場向けのクルマとして開発したモデル。生産もトヨタのイギリス工場で行われている。ヨーロッパ市場ではトヨタを代表する車種として販売されており、有力なライバル車がひしめくクラスで5位に入る売れ行きを見せている。

クルマ作りに関してはプレミオ/アリオンと共通する部分も多いが、ヨーロッパ市場を意識して作られたモデルだけに、走りを中心としたテイストには大きな違いがあり、装備や仕様、内装の仕上げなども日本向けのクルマとは違った印象がある。当然ながらボディサイズは全幅を中心に、やや大きめで日本では3ナンバー車として登録される。

ボディタイプは4ドアセダンのほかヨーロッパで人気の高いステーションワゴンの2種類が設定される。当初は2.0Lエンジンだけを搭載していたが、昨年から2.4Lエンジンも搭載するようになっていた。

顔が変わり大きくイメージが変わった

今回のマイナーチェンジでは、フロント回りを中心に前後の外観デザインに手が加えられた。フロントグリル、バンパー、ヘッドランプ、フォグランプなどが変更されたので、前から見るとかなり変わった印象がある。

またリヤコンビネーションランプも変更を受けたほか、サイドターンシグナルランプ付のドアミラーを全車に設定している。これはメルセデス･ベンツあたりから採用が始まったものだが、ヘッドランプの光に吸収されて見えなくなる可能性がなくなるため、安全性の向上にも貢献する。

インテリアは、セダンの上級グレードの内装色をアイボリーからグレージュに変更するとともに木目調パネルを採用し、ワゴンの上級グレードではダークグレーの内装色とのコントラストを強調するシルバーメタリックパネルを採用した。

このほかコンライト(オートライト)を全車に標準装備するとともに最上級グレードにはカラーバックガイドモニター付のDVDナビを標準装備とした。

“トヨタ車の走り”の期待をいい意味で裏切る“ヨーロピアンな走り”

アベンシスに試乗したのは久しぶりだったこともあって、乗った瞬間にこんなにヨーロッパ車らしいクルマだったかなと改めて驚かされた。ステアリングの操舵力は重いし、足回りは硬めの乗り心地でトヨタ車とは思えない乗り味を感じさせるからだ。

アウトバーンでの高速クルージングを考慮に入れてシャシーをチューニングすると、高速域での直進安定性に優れたステアリングのフィールや、しゃきっとした引き締まった感じの乗り味が必要になるためだ。

2.4Lエンジンの搭載車は、やはり走りに余裕がある。2.0Lエンジンとのパワーの差は10ps足らずで大したことはないが、トルクに関しては排気量に見合って40N･m近い差があり、より低回転でも力強い走りが可能になる。さほどアクセルを踏み込まなくても良く走るので、逆にエンジンの吹き上がりに軽快さが薄いように感じられたほど。

その点、2.0Lエンジンの搭載車は必要に応じてアクセルを踏み込むことになるため、吹き上がりの軽快さも充分という印象だ。

輸入車のテイストを求めるユーザーに最適なトヨタ車

アベンシスはトヨタ車らしからぬヨーロッパ車的な走りのフィールを持つクルマとして、普通のトヨタ車に不満を感じているユーザーにも満足できる走りの性能を持つ。柔らかすぎる足回りが好きでないユーザーなら絶対のお勧め車といっても良い。

ただ、難点となるは価格の高さ。輸入車なので止むを得ない面もあるが、最上級グレードの2.4Qiは本革シートやDVDカーナビが標準で装備されることもあって、セダンで330万円超、ワゴンでは350万円弱の価格が設定されている。これはミディアムセダンの価格とは思えない水準だ。同じ2.4Lエンジンの搭載車でもLiなら60万円近く安くなるが、それでもワゴンだと290万円に達する。

この価格を考えるとお勧めなのは2.0Lエンジンを搭載したXiで、装備はやや貧弱なものになるが、セダンで230万円台、ワゴンで250万円弱の価格はまずまずリーズナブル。これに手頃な価格の市販カーナビを後付けで装着するのが賢い買い方ではないか。