スズキ 新型スイフト[2013年マイナーチェンジ/デュアルジェットエンジン搭載車] 新型車解説(2/2)

スズキ 新型スイフト[2013年マイナーチェンジ/デュアルジェットエンジン搭載車] 新型車解説
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デュアルジェットエンジン搭載車は選ぶ価値の高いグレード

スズキ スイフト(2013年マイナーチェンジ)

売れ筋になる買い得グレードの価格を見ると、アイドリングストップも備わらないノーマルタイプの「XG」が127万9,950円、「XG・DJE」が139万7,550円になる。デュアルジェットエンジン搭載車は11万7,600円の価格アップだ。

「XG・DJE」にエコドライブの支援機能を含んだマルチインフォーメーションディスプレイが装着されることを差し引くと、デュアルジェットエンジンの搭載による価格上昇は、実質的に10万円ほど。

例えばフィットを例に上げて、1.3リッターエンジンを搭載したフィットとフィットハイブリッドとの実質的な価格差がエコドライブの支援機能を含んで約20万円。

スイフトのDJEがフィットハイブリッドと同じ燃費性能を達成できたことを考えれば、スイフトDJEは10万円近く安くお買い得だ。

スズキ スイフト(2013年マイナーチェンジ)

ならば、10万円の実質価格差を走行コストで埋めるには、どの程度の距離を走れば良いのか。エコロジーは損得勘定では語れないが、スイフトを買おうとしているユーザーが、グレードを選ぶ時には重要な問題だろう。

ここではエコカー減税の違いも加味したい。デュアルジェットエンジン搭載車は「免税」、ノーマルエンジン搭載車は「50%減税」だから、税額だけで約4万8,000円の差が付く。これを実質価格差から差し引くと、実質負担額の違いは5万2,000円まで縮まる。

さらに、実用燃費がJC08モードの85%、レギュラーガソリンが1リッター当たり155円とすれば、ノーマルエンジンを積んだXGが1km走るのに必要なガソリン代は「9.4円」。対するデュアルジェットエンジン搭載のXG・DJEは「6.9円」になる。

1km走行当たりで2.5円の差が生じることになり、5万2,000円の実質負担差額が埋まるのは2万800kmを走った時点。アイドリングストップの使用頻度によっても差は生じるが、1年間に1万kmを走るユーザーなら、購入してから2年後以降はトクをする計算が成り立つ。

このように考えると、デュアルジェットエンジン搭載車は選ぶ価値の高いグレードといえるだろう。

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軽自動車の需要が拡大している今、コンパクトカーの商品力を高める

スズキ スイフト(2013年マイナーチェンジ)

今回の変更では、ESP(横滑り防止装置)を全車に標準装着した。フロントマスクのデザインも変わり、XS、XS-DJEではLEDイルミネーションランプなどが備わる。外観のグレードアップも施した。

このほかクルマ好きに注目されるのは、1.2リッターエンジンを搭載した特別仕様車「RS」の一部変更だ。欧州仕様と同じ設定のショックアブソーバーを備えるなど、基本部分は従来型と同じだが、エアロパーツに手直しを加えて全長を25mm拡大させている。

不可解なのは、このRSでは4WD仕様のみがデュアルジェットエンジンを搭載し、2WDはノーマルエンジンになること。

スズキ スイフト(2013年マイナーチェンジ)

そのために2WDのJC08モード燃費が20.6km/L、車両重量が100kg重い4WDが21km/Lになり、2WDと4WDの間で「燃費の逆転現象」が生じている。

4WDはノーマルエンジンでは減税対象外になるからデュアルジェットエンジンを与え、2WDは50%の減税だからノーマルで済ませたとも受け取られるが、先の計算からも分かるようにデュアルジェットエンジンは買い得。機能的に5速MTの搭載は困難としても、2WDのCVT車はデュアルジェットエンジンにして欲しい。

それにしてもスズキは頑張っている。ほかのメーカーには、低価格車部門は軽自動車に軸足を移し、コンパクトカーの手を緩める傾向も見られるが、スズキは軽自動車中心のメーカーなのにスイフトにも力を入れる。となれば近々ソリオも変更を受けるだろう。

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今日の軽自動車は、税額が安い上に便利で快適になったが、そこに捕らわれて商品開発が行われると、ユーザーの選択肢が狭まってしまう。

さらにいえば、軽自動車の国内販売比率は現時点で40%に達した。今後50%を超えれば、税収不足を補うため、国税に含まれる重量税の値上げにも発展しかねない。

仮にそうなれば、公共の交通機関が未発達な地域では、移動の手段を奪われるユーザーが生じてしまう。コンパクトカーの商品力を高め、小型&普通車の販売を維持することは、軽自動車のメリットを守ることにも繋がるのだ。軽自動車の需要が急速に拡大している今だからこそ、スイフトが機能を大幅に向上させた価値も大きい。

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

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