改めて、運転免許の返納について考える|”返納せよ!”の先を作らなければ未来はない

免許返納件数は8年前の約6.5倍に急増中

昨今、高齢ドライバーによる交通事故が増えていることを背景に、運転免許の自主返納を求める動きが強まっている。

運転免許証は身分証明書としても使われるため、自主返納をすると代わりに「運転経歴証明書」の交付を受けられる。これは運転免許証とほぼ同じ形のカードタイプとなっており、これまでどおり身分証明書として使えるほか、地域により様々な特典も受けられる。

運転免許の自主返納件数は、2010年には全国で6万5600件であった。それが2014年には20万8000件、2017年には42万4000件、2018年も42万1000件に達した。

この背景には、運転免許保有者の多い団塊の世代(1947年から1949年頃の生まれ)が今では70歳近くに達して、自主返納が増えたという事情もある。

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生活のため、運転せざるを得ない高齢ドライバー

返納後のフォローは?

運転免許を自主返納する事情はそれぞれ異なるから一概にはいえないが、運転をやめた後の支援が不可欠だ。例えば買い物や通院にクルマを使っていた場合、運転免許を自主返納すると、日常生活に支障が生じる。自宅まで食材や日用品を届けたり、病院まで連れていく手段が必要だ。

こういった事情を考えると、運転免許の自主返納をやみくもに求めたり、運転を続ける高齢ドライバーを責めることはできない。運転免許を自主返納して困る人と、困らない人がいるからだ。

前者の立場で考えると、好んで運転を続けているわけではないだろう。公共の交通機関を使いにくかったり、高齢になっても仕事を続けねばならない事情があり、不安を感じながらも必要に迫られて運転を続けている。この事情を汲み取った支援を行わず、単に運転免許の自主返納を求めれば、高齢ドライバーの反感を買うだけだ。

安全のための強制返納や、限定免許制度に補助金を

ドライバーの能力に合わせた免許が必要

早急に解決しなければならないのは、認知症になっていたり、体力が極端に衰えているドライバーだ。事情に関わらず安全は最優先され、危険が伴う場合は、運転を直ちにやめていただく必要がある。この支援は特に急いで整えねばならない。高齢者の福祉だから、予算も優先的に拠出すべきだ。

また高齢者の限定的な運転免許も考えたい。一定以上の性能を備えた緊急自動ブレーキやペダル踏み間違い事故防止装置が装着された車両であれば、運転できるようにする。補助金はこのような場面で交付すべきだ(後付け安全装備を中心に補助金交付が開始された)。ほかにも必要に応じて運転可能な時間を昼間に限ったり、運転する地域も制限して、知らない場所へ出かけないようにする対策も考えられる。

基礎体力から高めよう! 遊び心も重要

運転が老化防止になる!?

ドライバーの身体能力を守ることも考えたい。認知症の予防、体力を維持する日常的なトレーニングを行う。体の衰えを抑えれば、運転も続けられるからだ。

ちなみにマツダでは、6速MTの操作を含めたさまざまな運転が老化の防止に役立つという考え方で研究を行っている。毎日の運転が、運転する能力の維持にも繋がるわけだ。

愛車を使って楽しむイベントも実施したい。ジムカーナのような簡単なコースを作り、ゲートボールを楽しむ要領で、クルマの運転を競う。車庫入れ、縦列駐車、Uターンなどセクション別の競争も面白い。運転を積極的に楽しむ気持ちになってもらえれば、運転に対する関心も高まり、能力低下も防げる。

他人事ではない、いつか来る”その時”

自動運転を待ってはいられない

高齢になり、いよいよ自宅付近の坂道を登るのが辛くなった時に「そろそろ免許を返納しませんか」と言われたのでは、クルマが何のために存在するのか分からない。

いずれ自動運転が普及すれば解決可能な課題だが、自動運転技術の開発者によれば「一般公道の日常的な移動にまで自動運転が対応できるのは、いつになるか分からない」とのこと。

運転免許を返納した人の支援と、運転能力を長く保つためのプログラムが急務になっている。

[筆者:渡辺 陽一郎]

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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