ハンドルのカタチ、円形とD字型ではどう違う? 自動車評論家に聞いてみた
- 筆者: 渡辺 陽一郎
D字型ステアリングホイールのメリットとは
ステアリングホイール(ハンドル)の形状は円形とされてきたが、最近は「D字型」も増えた。直進状態にした時に、下側が平らな形状になるものだ。このタイプのステアリングホイールは、日産がノートやセレナなど幅広い車種に採用する。フォルクスワーゲンも、ゴルフからシャランまでD字型を装着する。
そしてプジョー 508のように、下側だけでなく、上側まで平らにデザインにしたステアリングホイールもある。直進時に上下の両方が平らだから、航空機の操縦桿のようにも見える。
このタイプのメリットは、ステアリングホイールがメーターパネルやドライバーの大腿部に干渉するのを防げることだ。上側が平らであれば、メーターがステアリングホイールの陰に隠れにくく可視範囲が広がる。下側が平らなら、チルトステアリングの位置を下げても、大腿部に近づきすぎることはない。
ステアリングホイールを極端に小径にすると、操舵角度の微調節をしにくくなるが、D字型であれば普通のサイズで干渉を抑えられる。
ただし持ち替える動作はやりにくいという欠点も
その代わり欠点もある。ステアリングホイールを10時10分とか9時15分の位置で常に保持できるなら問題ないが、急なカーブを曲がる時には、手を持ち替える時もある。この時にD字型は扱いにくい。特に「たぐりハンドル」や「送りハンドル」の操作をする場合、ステアリングホイールのいろいろな位置を保持するが、平らになった部分は握りにくい。
それでもD字型をスポーツカーに装着するなら相応に理解できる。インパネから着座位置まですべて低く抑えられ、ステアリングホイールとドライバーの大腿部も接近しやすいからだ。そしてスポーツカーのステアリングはギヤ比が概してクイックだから、グルグルとたくさん回すことはない。D字型のメリットが生かされ、欠点はあまり意識させない。
相性の悪そうなミニバンにD字型ステアリングホイールが採用されているケースも
ところが日産とフォルクスワーゲンは、D字型ステアリングホイールをミニバンのセレナやシャランにも装着した。
ミニバンはスポーツカーとは逆で、居住空間の上下寸法が大きいから、ステアリングホイールが大腿部に干渉することは考えにくい。また高重心だから、ステアリングのギア比をクイックにできず、どちらかといえばスローな設定だ。走行状態によっては、ステアリングホイールをたくさん回すから、D字型のメリットは生かされにくく欠点ばかり目立ってしまう。
ミニバンにD字型ステアリングホイールが採用される理由
なぜミニバンにまでD字型を採用するのか。日産の開発者に尋ねると「D字型のステアリングホイールは、今の日産車に共通するデザインで、(大腿部に干渉しにくいから)乗降性も優れている」と説明された。フロントマスクのV字型グリルに相当する日産の共通した表現らしい。
しかしデイズは、普通の丸型ステアリングホイールを装着しているのだ。開発者に理由を尋ねると「D字型ステアリングホイールは、操作しにくいから」という返答であった。
要は日産としては個性的だからD字型を採用したが、操作しにくいという意見もあり、運転のしやすさが重視される軽自動車のデイズには採用しなかった。
結論をいえば、D字型ステアリングホイールは、スポーツカーやレーシングマシンなど着座位置が低くステアリングのギヤ比がクイックな車両に使うべきだ。一般の車両では、オーソドックスな円形がベストな形状である。
[筆者:渡辺 陽一郎]
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