40年ぶりに復活した新型アルピーヌ A110試乗! WRCで名を馳せた初代A110の再来(2/4)

  • 筆者: 嶋田 智之
  • カメラマン:アルピーヌ・ジャポン
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新型A110は“復活”ではなく“継承”

新しいA110は、初代A110の再来であり、かつての名車を現代流に再解釈し直して開発されたものであると見られがちだ。が、どうやら開発に携わった人達の話を聞くと、開発アプローチはどうやら少し違っているらしい。新生アルピーヌに初期の頃から携わってきた副マネージングダイレクターのベルナール・オリヴィエ氏によれば、「A110がずっと作られ続けていたとしたらどうなっただろう? と想像しながら開発してきた」というのだ。つまり、A110が時代とともに必然的な進化を繰り返してきた結果としての最新型はどうあるべきか、を模索してきたということだろう。“復活”ではなく“継承”なのだ。だからこそ新型A110のスタイリングは初代のイメージを大きく受け継いだものとされているのだろうし、だからこそ“A110”という車名もそのまま継承された、ということであるに違いない。

初代A110がヴァージョン1であるとするなら、新型A110はヴァージョン2。ヴァージョン1からヴァージョン2へと進化してくるプロセスのひとつひとつを想像しながら開発を進めてきたのだとすれば、彼らのストーリーの中には例えばヴァージョン1.3だとか1.63のようなものも存在しているのだろう。そうしたまどろっこしいことをやってきたことが何を意味するのかといえば、それは“A110らしさとはどういうことか”ということを徹底的に吟味しながら着地点を決めてきた、ということに他ならない。そのお話を聞いたのは、まだ試乗前の段階。旧き佳きA110を過去に何度か体験し、憧れを持ち続けてきたひとりのファンとして、期待感は膨れ上がる一方だった。

トヨタ86とほぼ同等サイズのA110

初めて実際に目にした懐かしいような新しいような姿の2シーター・クーペの第一印象は、“写真で見るより全然小さいな”ということだった。考えてみれば、それも然りである。僕達はすでに新型A110が初代と並んでフレームに収まっている写真を何度となく見てきたからだ。初代と較べたら、確かに巨大ではある。が、むしろ初代が極端に小さいのだと考えるべきだろう。衝突安全の問題や様々なレギュレーションがハッキリと立ちはだかっている現在、昔のようなサイズのクルマを作るのは不可能だ。新しいA110のサイズは全長が4.2mを下回り、全幅も1.8mを切っている。ライバルの1台であるポルシェ718ケイマンよりおよそ20cm短く、10cmもスレンダーだ。ザックリいうならトヨタ86と同じくらいの寸法である。充分にコンパクトといえる範疇にあるといえるだろう。

初代がバックボーン・フレーム+FRPボディだったのに対して、進化を遂げてきた結果といえる新型A110は構造的には大きな変更を受けていて、アルミ+アルミ、オール・アルミ製だ。ドライ・カーボンを採用しなかったのは価格にはっきりと跳ね返るからだろうと思われるが、精密に作られたアルミ製の車体は、それでもしっかりと硬く、そして軽い。油脂類などを含めた、いわゆる日本でいうところの車両重量で1080kg。今回のプレミア・エディションは幾つかのオプションを備えた使用だが、それでも1103kg。プリプレグ方式のカーボンを基本骨格に据えるアルファロメオ4Cより約50kg重いが、それでも賞賛に値する数値である。

その重量の小ささを活かしながら重心の位置や高さを最適なところへ持っていくため、新型A110は初代と異なり、RRではなくミドシップ・レイアウトを採用している。ミドシップの採用にはもうひとつ明確な理由がある。車体の後端にエンジンを置くと、その下側にディフューザーを備えさせることができない。御覧のとおり新型A110にはGTウイングのような派手な空力的付加物というのが見当たらない。だからこそA110らしいエレガントなスタイルに、僕達はニンマリすることができているわけだ。けれど、今やエアロダイナミクスを無視したクルマ作りなどあり得ない。このクルマがターゲットとしたパフォーマンスに必要なだけのダウンフォースを生み出すためには、フロント下側の造形で空気の侵入を制限し、車体の下面をフラットボトムとし、そこを流れてきた空気を効果的に抜くためのリア・ディフューザーは不可欠、というわけだ。

もうひとつ大きく進化している点は、サスペンションが4輪ダブルウィッシュボーンであり、レイアウト上結構なスペースが必要になるその一式を、巧みに1.8mの車幅の中に収めている。しかも聞いたところによれば、かなり早い段階でサスペンションの位置を決め、そこからクルマの設計を進めていったようなものだという。それが真実であるなら、相当にフットワークへこだわりを持って開発が進められた、ということだ。

リアサスペンションに挟まれるようにしてマウントされるエンジンは、直列4気筒の1.8リッター・ターボ。これはルノー日産アライアンスによる新開発で、まずアルピーヌのために開発され、チューニングを変えたものが新しいルノー・メガーヌRSに搭載されているのだという。A110では252ps/6000rpmに320Nm(32.6kgm)/2000rpm。ゲトラグ製の7速デュアル・クラッチ・トランスミッションと組み合わせられる。静止状態から100km/hに達するまで4.5秒、最高速度は250km/hと発表されている。

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嶋田 智之
筆者嶋田 智之

本人いわく「ヤミ鍋系」のエンスー自動車雑誌、『Tipo』の編集長を長く務め、スーパーカー専門誌『ROSSO』の総編集長を担当した後、フリーランスとして独立。2011年からクルマとヒトに照準を絞った「モノ書き兼エディター」として活動中。自動車イベントではトークのゲストとして声が掛かることも多い。世界各国のスポーツカーやヒストリックカー、新旧スーパーカー、世界に数台の歴史的な名車や1000PSオーバーのチューニングカーなどを筆頭に、ステアリングを握ったクルマの種類は業界でもトップクラス。過去の経歴から速いクルマばかりを好むと見られがちだが、その実はステアリングと4つのタイヤさえあるならどんなクルマでも楽しめてしまう自動車博愛主義者でもある。1964年生まれ。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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