ポルシェAG デザイナー 山下 周一氏 インタビュー|日本人デザイナーが世界を志した理由(1/3)
- 筆者: トクダ トオル(MOTA)
- カメラマン:ポルシェジャパン・MOTA(オートックワン)
日本人唯一の現役ポルシェデザイナーに直撃インタビュー
ポルシェAG エクステリアデザイナー、山下 周一さんが2019年5月、新型911のジャパンプレミアに合わせ来日した。
日本人のポルシェのデザイナーは山下さんでわずか3人目、しかも現役デザイナーとしてはただおひとりの存在だ。そんな山下さんの独占インタビューが叶った! デザイナーを志したきっかけから、ポルシェに入社した経緯、そして新しい911(タイプ992)について…
気になることやお聞きしたいことは山盛りに渋滞している! さっそく色々と伺ってみよう。
>>ポルシェ911(タイプ992)デザインスケッチの数々を画像で見る[画像ギャラリー]
山下さんがデザイナーを志したきっかけ
まずは、山下 周一さんがデザインの道を志したきっかけについて聞いてみた。
1961年、東京に生まれ大阪で育った山下 周一さん。漠然と立体造形のデザインに興味を持っていたこともあり、高校卒業後はデザイン学校へ進むことになる。卒業後はモデルを製作する会社に入り、コンピュータやステレオコンポなどのデザインに携わった。
そんなある日、研修で渡欧し、ドイツフォードの日本人デザイナーと出会う機会を得た。そこでカーデザイナーという職業があることを知り、俄然クルマのデザインに興味がわいた山下さんは、カーデザインの専門誌に載る、今まで見たことがないようなカッコいいデザインスケッチの数々にワクワクする日々を送るようになった。
「カーデザイナーになりたい。しかし20代半ばの自分ではもう遅いのでないか。」
思い切ってドイツフォードのデザイナーに相談したところ「キミはアートセンターに行ったほうがいい」と背中押しされたという。
アートセンター(Art Center College of Design)は、アメリカ・カリフォルニアにある総合芸術大学として、世界的にも有名な存在だ。工業デザイン以外にも映画や写真など様々な学科があり、著名な監督や写真家、工業デザイナーなどを輩出し続けている。
英語の試験に加え、ポートフォリオ(作品集)を10数点提出し審査を受け、1990年に晴れて入学することが出来た。初代のレクサス LS(トヨタ セルシオ)やホンダ NSX、ユーノス ロードスターなど、日本の自動車メーカーがひとつの到達点に至った時期とも重なり、山下さんが通うトランスポーテーション科の生徒の中で1割程度は日本人が占めていたという。
欧州メーカーからオファーを受けた!
アートセンターは全8学期のセメスター制。山下さんは欧州の自動車メーカーに興味を持っていたこともあって、4学期を過ぎた頃に当時スイス・モントルーにあった分校に転籍した。卒業後、世界の自動車メーカーへ自らのポートフォリオを送る中、メルセデス・ベンツが当時横浜にデザインスタジオを創設する時期だったということもあり、タイミング良く同社からオファーを受けた。
山下さんは日本のスタジオで約5年働いた後、ドイツの本社デザインスタジオに異動。そこでドイツの同僚たちのマイペースな働きぶりを目にする。日本のようにガシガシと働くのではなく、与えられた仕事をじっくりこなす様子は、山下さんの肌にも合った。
その後スウェーデンのサーブに移籍。ドイツとはまた違う、北欧特有の空気を感じることが出来たのは貴重な経験だったと語る。また同社ではサーブのアイコン的モデル「サーブ900」の伝統を重んじており、現場でも常に意識しながらデザインをしていた。これはのちにポルシェでも、同様の経験をすることになる。
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