ポルシェAG デザイナー 山下 周一氏 インタビュー|日本人デザイナーが世界を志した理由(2/3)
- 筆者: トクダ トオル(MOTA)
- カメラマン:ポルシェジャパン・MOTA(オートックワン)
“あの”911をデザインしたい!
2006年、ケン・オクヤマ(奥山 清行)さん(現・KEN OKUYAMA DESIGN 代表)、内田 和美さん(現・富山大学教授)に続き、ポルシェの歴史で3人目の日本人デザイナーとなった山下さん。ポルシェからのオファーは「非常に嬉しかった」。そして「“あの”911をデザインしたい!」と強く意気込んだことを良く覚えているという。
1963年、ドイツ・フランクフルトモーターショーで発表されたスポーツカー、初代「ポルシェ 911」は、50余年に渡り世界のスポーツカーを代表するモデルとして進化し続けてきた。コンパクトだった初代から比べれば、代を重ねるごとにボディサイズも随分と拡大しているはずなのだが、しかし歴代911は全て、どこからどう見ても“911”以外のナニモノでもないという不思議。デザインが果たす役割は非常に大きい。
そんなポルシェ「911」とは、一体どんなクルマなのだろう。
山下さんが入社した2006年当時、ポルシェでは既に大小さまざまなモデルが登場し、ラインナップを急速に拡充していた頃だ。そんな中でも「911は不文律である」と山下さんは明言する。全ての中心には911があり、そこからボクスターやSUVのカイエンがあるという位置付けだ。それはもちろん今も、そしてこれからも変わらない。
911らしさとは、いったい何なのか
ポルシェの場合、新規プロジェクトについてはデザインスタジオの全員に参加する権利が与えらえている。新しいプロジェクトが立ち上がり、キックオフのオリエンテーションが実施されると、各デザイナーは自由に手を挙げることが出来るのだ。
山下さんも、911のプロジェクトに参加できたことは「オリンピックに参加出来たかのように強烈な喜びがあった」と話す。
プロジェクトが始まると、デザイナーたちはそれぞれの想いをぶつけながらスケッチを描く。中には相当にトガッたスケッチを描く人もいるのでは?と尋ねると、そうした画は「いつか淘汰されていくもの」と山下さんは話す。全てのデザイナーが、911の伝統的な不文律、言い換えれば「911らしさ」「ポルシェらしさ」に照準を合わせてデザインしているため、ブレたりすることはないという。
それではその「911らしさ」とは一体どういうことだろうか。
「もちろんその解釈は人それぞれです。ことデザイナーに関しては言語化というよりも、歴史的モデルのモチーフにインスパイアされることが多いです」。ある人は930のリアフェンダーに、またある人は917レーシングカーのショルダーラインにそれぞれ「ポルシェ」を感じ、その考察と現代的な解釈を加えてデザインを施していく。
そこで気になる最新911、タイプ992の話題に移っていく。
新型911(タイプ992)は“Timeless Machine”
新型911の発表会で掲げられていたメッセージは“Timeless Machine”(タイムレス・マシーン)。時代に左右されず、わが道を往く姿勢を表したものだ。実際に目の当たりにするととてもシンプルで、研ぎ澄まされたかたちだとわかる。
そしてサイドから見ても、正面から、後ろから、上から見ても、新型はやはり911である。山下さんも「まごうかたなき911」と新型を紹介していた。
中でも山下さんが推すのは、左右のリアランプを一直線に繋ぐLEDのライトストリップ。911らしさ全開のリアフェンダーからつながるワイドなフォルムを強調するものだ。山下さん曰く、薄暗い夜に見ると「“ビシっ!”と音が聞こえそうなくらい」キマッていると太鼓判を推す。
同様の意匠表現はパナメーラやカイエンなどの他モデルにも見ることが出来るが、テールゲートなどない911だけは、どこにも無粋な分割線が入ることもない。だから最も純粋に表現できたのだという。
目指したのは「さらにスポーティに、さらに力強く、さらにモダンにする」こと
911らしさを最も象徴するリア周りの造形は、ポルシェのデザイナーにとっても最も魅力的で挑戦しがいのある部分だと山下さんは話す。
RR(リアエンジン・リア駆動)という独特なレイアウトの関係で、前後のトレッド(左右タイヤ間の幅)が大きく異なるのがポルシェ911のメカニズムにおける特長で、それはまるで「猫を上からみたようなフォルム」(山下さん談)となる。
しかし新型のタイプ992ではフロント側もワイド化。ほぼリアと同じになった。おかげで992はコークボトルライン(コカコーラの瓶のようにくびれたフォルム)のグラマラスさや力強さがより強調された。
さらに空気の取り入れ口やマフラーといった様々な機能要素を、前後バンパー下の黒いインサート部にまとめシンプル化。ワイド感や低重心さを表現した。これまで別々の独立した存在だったリアガラスとリアエンジンの空気取り入れ口も、新型911では一体化させた。
このような様々なチャレンジが、新しい911を非常にシンプルでモダンなかたちに見せている。
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