日産 新型エクストレイル 速攻試乗|自動運転”プロパイロット”がさらに使いやすく進化した
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:原田淳
”SUVの王道”日産 エクストレイルがマイナーチェンジ
最近はクルマの価格が上昇傾向にあり、しかもクルマへの興味が薄れたこともあって、小さな車種に乗り替えるユーザーが増えた。このような市場環境の中で、比較的高い価格ながらも堅調に売れているのが日産 エクストレイルだ。月別の販売ランキングを見ても、売れ筋グレードの価格が250~300万円の車種では上位に位置する。
エクストレイル人気の秘訣は、SUVの本質を突いているからだろう。
SUVが人気を高めた理由は、大径サイズのタイヤを装着するなど外観に力強さを与え、しかもボディの上側はワゴンに準じた形状だから、居住性や積載性も優れていることにある。つまり、カッコ良くて実用的なことがSUVの魅力なのだ。それはエクストレイルの特徴とも一致する。近年はカッコ良いが実用性は二の次、というSUVもあるが、エクストレイルはSUVの王道をど真ん中に突き進むことで、根強く支持を集め続けている。
このエクストレイルが2017年6月8日にマイナーチェンジを行った。詳細は新型エクストレイル/最新情報をご覧いただくとして、今回は試乗した印象をお伝えしたい。
新型エクストレイルにも自動運転技術”プロパイロット”を新搭載
エクストレイルのマイナーチェンジで最も注目されるのは、日産セレナに続いて運転支援機能のProPILOT(プロパイロット:高速道路 同一車線自動運転技術)を20Xと20Xハイブリッドにオプション設定したことだ。
プロパイロットは単眼カメラを使うインテリジェントエマージェンシーブレーキ(緊急自動ブレーキ)の応用技術に位置付けられる。車間距離を自動制御しながら追従走行を行えるクルーズコントロールの機能と、車線の検知による操舵支援の機能を併せ持つ。
プロパイロットのオプション価格は、ドライバーの死角に入る後方の並走車両などを知らせる後側方車両検知機能、ハイ/ロービームの自動切り替え機能などとセットにして14万400円だ。おおむね妥当な価格に収めた。
高速道路で違和感なく使えたエクストレイルのプロパイロット
新型エクストレイルのプロパイロットを高速道路で実際に試すと、違和感なく使うことが出来た。
まずはプロパイロットの操舵支援だが、車線を検知して進路を調節するためにハンドルが細かく左右に動くことはあるが、セレナのプロパイロットに比べるとその度合いが小さい。
セレナは標準ボディの全幅を5ナンバーサイズに抑えた高重心のミニバンだから、走行安定性を確保することも視野に入れて操舵感を鈍く抑えており、反応の遅れもあってプロパイロットの修正操舵量が増えてしまう。
その点でエクストレイルは比較的正確に反応するから、プロパイロットの制御も的確に行われ、ハンドルをあまり動かさずに済む。
車間距離の制御もエクストレイルのほうが上手に行う印象だ。エンジンはセレナと同じだが、最大トルクはエクストレイルが若干上まわり、なおかつ車両重量は4WDの20Xでも1540kgだから、セレナの2WDに比べて100kg以上軽い。加速力に余裕があり、先行車が加速した時の反応遅れも抑えた。
新型エクストレイルのプロパイロット開発者は「プロパイロットの作動はセレナと基本的に同じだが、車両が異なるためにバランスを取った」という。セレナが発売されて約10か月を経過したことも考えると、制御の進化もあるだろう。
改善の余地はあるが、プロパイロットは確実にドライバーの疲労を軽減してくれる
それでも、今後熟成を重ねる余地はまだ残る。
例えば時速80キロ前後で走行中にハンドルの舵角が40度前後に達すると、制御が曖昧になってくる。舵角が大きな状態で車線(路面に引かれた白線)を見失うと危険だから、もともとプロパイロットはカーブの曲がり具合が深くなると制御を弱めるが、この段階のコントロール性はセレナに比べると向上したものの、良好とはいえない。
プロパイロットの車間距離設定は、スイッチ操作によって長/中/短の3段階に調節可能だが、一定にしていても、高速道路の緩い登降坂では先行車との車間距離が伸び縮みする場面があった。
全車速追従機能によって停車する時も、やや滑らかさに欠ける。停車寸前のブレーキ圧力の抜き方を、もう少し綿密に行うと良い。
以上のように改善点はいくつかあるが、交通量が過密ではない高速道路を時速80~90キロで流すように走るなら、プロパイロットの実用性は十分に高い。
インターチェンジを降りたり、サービスエリアに入る時を除けば、操舵角も大きくはならない。ハンドルを保持して、制御が途切れた時のために靴の底をペダル側に向けておく必要はあるが(足を投げ出すような運転姿勢は危険)、ドライバーの疲労を抑えられる。
従来モデルと変わらない緊急自動ブレーキの進化にも期待したい
むしろ課題となるのは、緊急自動ブレーキを作動できるエマージェンシーブレーキだ。
セレナ、エクストレイルとプロパイロットの採用車種を拡大させながら、肝心のエマージェンシーブレーキは以前から進化していない。安全性は快適性よりも重要だから、プロパイロットに開発力を注ぐなら、エマージェンシーブレーキも進化させるべきだ。
今のところ緊急自動ブレーキの作動上限速度は時速80キロ(歩行者は時速60キロ)とされ、車両に関しては高速道路の制限速度を下まわる。今後はせめて時速100キロまで引き上げたい。
スバルのアイサイトは歩行者と併せて自転車も検知するが、日産のエマージェンシーブレーキでは自転車が検知対象に含まれない。今回のエクストレイルマイナーチェンジに伴い、新たに車線逸脱防止支援システムが備わり、車線逸脱時には車線内に引き戻す制御を行うが、路肩の歩行者に近づいた時、反対側へ操舵するのを支援する機能はない。夜間走行時における歩行者の検知能力を高めるなど、緊急自動ブレーキを進化させる余地はまだ多い。
特に最近の交通事故死者数の内訳を見ると、歩行中の事故が自動車乗車中のそれを上まわる。各種の安全装備などによって乗車中の死者数が減ったのは喜ばしいが、歩行者に対する安全確保が急務になってきた。
まずはエマージェンシーブレーキを進化させ、その検知能力や制御機能の向上に応じて、プロパイロットの性能を高めるのが本来のあり方だ。ほかのメーカーを含めて、安全機能と運転支援の優先順位を間違えてはならない。
新型エクストレイルハイブリッドは回生量の拡大で実燃費も向上
プロパイロット以外でも、日産新型エクストレイルのマイナーチェンジでは、運転感覚に関係する変更点が挙げられる。それは、エクストレイルハイブリッドの回生量の拡大だ。
以前からエクストレイルハイブリッドはアクセルペダルを戻すと駆動用モーターが発電を行い、駆動用電池に蓄える回生を行っているが、改良後は回生量を15%増やした。
そのためにアクセルペダルを戻した時の減速感が強まっている。従来のノーマルエンジン車でいえば、エンジンブレーキが強くなったような印象だ。最初は少し戸惑うが、慣れるとアクセルペダルによって減速の仕方をコントロールできるから、運転がしやすく感じる場面もある。
なお回生効率が高まったことで、ハイブリッド2WDのJC08モード燃費が20.6km/Lから20.8km/Lに向上した(4WDは20.0km/Lで変更はない)。
2リッターは市街地や峠道、ハイブリッドは高速道路の走行が適している
新型エクストレイルのタイヤサイズは、2リッターノーマルエンジンを搭載する20Xが従来の17インチから18インチに拡大された。ショックアブソーバーの減衰力など足まわりの設定は従来と共通だから、タイヤサイズの拡大に伴い乗り心地は少し硬めに感じるが、粗さはなく、引き締まり感が伴って不快には感じない。
タイヤの指定空気圧は従来と同じで前輪が230kPa、後輪が210kPaとなる。17インチを履いたエクストレイルハイブリッドが燃費重視で転がり抵抗を抑えるため、280/260kPaと高めの指定空気圧なるのに比べると大幅に低く、乗り心地の悪化を抑えた。
18インチ化のメリットは、17インチでは少し鈍く感じる操舵感が若干機敏な方向に変化したことだ。峠道などで運転がしやすく、ハイブリッドに比べると軽快感が伴う。
対するエクストレイルハイブリッドは、ノーマルエンジン車に比べて車両全体の動きが大人しい。カーブを曲がる時は、ボディが少し重く感じる。その代わりモーター駆動を併用するから、エンジンの回転が下がる巡航中にアクセルペダルを少し踏み増した時など、加速が滑らかに立ち上がる。
つまりノーマルエンジンは市街地や峠道、ハイブリッドは高速道路の走行をそれぞれ得意とする。後者の使い方では走行距離も伸びるから、燃費の節約効果が大きなハイブリッドと相性が良い。ノーマルエンジンと比べた時の車両価格差、燃料代のバランスを考えても、1年間の走行距離が1万5000kmを超えるとハイブリッドを選ぶメリットが生じる。
このほか20Xと20Xハイブリッドには、ハンズフリー機能を備えたリモコンオートバックドアが装着され、バックドアの下側で足を出し入れすると開閉が可能だ。
機能が全般的に向上するとともにインパネ周辺も上質な造りに
内装では20Xの2列シート仕様の後席に、3列シート仕様の2列目と同様のスライド機能が加わった。4名乗車時でも荷室を拡大できる。
後席の分割可倒機能も、従来の60:40%から40:20:40%の比率になった。中央だけを倒すと2名がゆったりと座り、中央には長い荷物を積める。機能が全般的に向上して、インパネ周辺の質感も高めた。
現行エクストレイルは、全長が4690mm、全幅が1820mmだから、ボディサイズは2リッタークラスのSUVでは大柄な部類に入る。もう少しコンパクトな方が好ましいが、さらに小さくするとトヨタ C-HRやホンダ ヴェゼルのようになってSUVらしさが薄れる。
ライバル車の中で、例えばスバル フォレスターはエクストレイルよりもボディが少しコンパクトで、緊急自動ブレーキは自転車も検知する高機能なアイサイトを搭載するが、インプレッサがプラットフォームを刷新した今ではモデル末期の印象が強い。次期フォレスターには進化形のアイサイトツーリングアシストも加わるから、これを待ちたい。
こういった競合SUVの置かれた状況を考えると、日産エクストレイルは積極的、消去法的の両方から選ばれるのだろう。それだけに安全装備を進化させる責任も重い。
大量に売れる車種の安全性が高まれば、事故防止の効果も高く期待できるからだ。
[レポート:渡辺陽一郎/Photo:原田淳]
日産 新型エクストレイル 20X HYBRID(4WD)スペック
全長x全幅x全高:4690x1820x1730mm/ホイールベース:2705mm/乗車定員:5人/車両重量:1640kg/駆動方式:4WD/エンジン種類:DOHC筒内直接燃料噴射直列4気筒(MR20DD)/総排気量:1997cc/エンジン最高出力:147ps(108kW)/6000rpm/エンジン最大トルク:21.1kgf・m(207N・m)/4400rpm/モーター最高出力:41ps(30kW)/モーター最大トルク:16.3kgf・m(160N・m)/駆動用バッテリー種類:リチウムイオン電池/トランスミッション:エクストロニックCVT/燃料消費率:20.0km/L[JC08モード燃費]/タイヤサイズ:225/65R17/メーカー希望小売価格:309万8520円(消費税込)
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