日産 新型(3代目)エクストレイル オフロードコース試乗レポート/渡辺陽一郎(2/3)

  • 筆者: 渡辺 陽一郎
  • カメラマン:日産自動車/オートックワン編集部
日産 新型(3代目)エクストレイル オフロードコース試乗レポート/渡辺陽一郎
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新型を買う時に注意すべきは、走りの変化

日産 新型(3代目)エクストレイル

動力性能は、車両重量が1500kgのボディに2リッターエンジンを組み合わせだから、パワフルではない。それでも最高出力は147馬力(6000回転)、最大トルクは21.1kgf-m(4400回転)だから、先代型に比べると10馬力/0.7kgf-m高い。直噴式を採用した効果で、2リッターエンジンでは余裕がある部類だ。2000~3000回転付近でも相応の余裕を感じた。

CVT(無段変速AT)の制御も見直され、アクセル操作に対する加減速の正確性を高めている。

そして最も大きく進歩したのが走行安定性。先代型は操舵角と車速の割にボディの傾き方が大きかったが、新型エクストレイルは収まりが良い。左右に唐突に振られる印象もなく、背の高さをあまり意識させない。

日産 新型(3代目)エクストレイル
日産 新型(3代目)エクストレイル日産 新型(3代目)エクストレイル

背景にある理由の筆頭はボディ剛性の向上だ。プラットフォームは先代型と共通だが、ボディの底面に位置するフロント側の骨格、サイドシル(ドアを開いた時に見える敷居の部分)の下側などを効果的に補強した。

ホイールベース(前輪と後輪の間隔)が先代型に比べて75mm拡大したことも見逃せない。全長は5mmしか伸びていないから、前後のオーバーハング(ボディがホイールよりも前後に張り出した部分)を短く抑え、慣性の影響を受けにくい。

特にリア側のオーバーハングは約50mm短くなり、コーナリング時における後輪の接地性を高めている。

このほか全幅が30mm拡大されたのを受けて、トレッド(左右のホイールの間隔)もフロント側で35mm、リア側で30mm広がった。さまざまな要素が重なって走行安定性を向上させている。操舵に対する正確性も高まった。

その代わり、前述のように乗り心地の柔軟性は先代型を少し下まわる。先代型のゆったりした運転感覚が、少し機敏で安定性を重視する方向に発展したと考えれば良い。

先代型のユーザー、あるいは先代型が好きだった人が新型エクストレイルを買う時に注意すべきは、この走りの変化だろう。走行安定性が高まったので総合レベルは向上したが(新型だからそうでないと困る)、ゆったりと伸縮するサスペンションは、先代エクストレイルの大切な持ち味だった。直線基調の重厚な外観とも良くマッチして、独自の世界を築いていた。走行安定性が少々悪くても、十分に補える魅力があったわけだ。

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視界と取りまわし性に注意

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そこが新型エクストレイルでは「良くできた普通のSUV」に近づいた。走破力は十分にあり、防水加工を施したシートなども健在で実用性は先代型と同等だが、フィーリングの部分で差が生じた。些細なことのようだが、SUVを好むユーザーにとっては意外に重要だろう。

もうひとつ注意したいのは視界と取りまわし性だ。先代型は直線基調のボディで、なおかつサイドウインドーの下端も低めで視界がとても優れていた。サイドウインドーを降ろして後ろを振り返ると、後輪が少し視野に入る。車庫入れの時に便利なだけでなく、側方視界が優れていることの証でもあった。

ところが新型エクストレイルでは後輪は見えず、ボンネットもボディの前端に近づくと視野からはずれる。加えてサイドウインドーの下端が後ろに向けて持ち上がるので、斜め後方もやや見にくい。先代型の視界は今日の3ナンバー車では最高峰だったから、新型に代替えするなら車庫入れや縦列駐車を試したい。

[次ページへ続く]

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

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