日産 キャラバンが2017年7月13日マイナーチェンジ!ライバルのハイエースに快適装備で勝負を挑む!
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:日産自動車&茂呂幸正
日産 キャラバンが2017年7月にマイナーチェンジ
街中で頻繁に見かけるのに、意外に知られていないクルマがワンボックスボディのバンだろう。身近な物流を受け持つ重要なツールで、カテゴリーとしては「小型キャブオーバーバン」と呼ばれる。その主力車種の日産キャラバンが2017年7月13日にマイナーチェンジを行ったので、内容を見ていきたい。
最も分かりやすい変更として、外観の刷新がある。フロントマスクには以前から日産車を象徴するV字型グリルを装着していたが、新型では下側に向けて拡大され、日産車らしさが一層強調された。
ヘッドランプも変更を受けている。ハロゲンヘッドランプを標準装着することは以前と同じだが、オプションでLEDが選択可能になっている。もちろんデザインも変わった。
また、リヤコンビネーションランプ(テールランプ)には、新たにLEDを使っている。これにより後方からの視認性が向上して、外観の見栄えも向上させている。
サイドターンランプ付きドアミラーは、従来型ではディーラーオプションとしていたが、新たにデザインを変えてメーカーオプション(最上級のプレミアムGXは標準装着)に変更した。
新型キャラバンの価格はボディタイプによって細かく変わるが、最も安いのはバンの2WD ロングボディ標準幅標準ルーフの277万円で、ガソリンエンジンを搭載する“DX”グレードだ。
最も高いのはバンの4WD ロング標準幅標準ルーフの381万円で、ディーゼルエンジンを搭載する“プレミアムGX”グレードになる。
内装ではGXとプレミアムGXに装着されるハンドル形状の変更や、シート生地の質感を高めるなどの変更が施されている。グレード構成では、バン仕様の場合、ベーシックなDX、上級のプレミアムGXの中間に位置する仕様として、VXを新たに加えている。
安全装備については、緊急自動ブレーキを作動できるインテリジェントエマージェンシーブレーキとVDC(横滑り防止装置)を、バンの全グレードに標準装着した。以前は全幅が1695mmの仕様のみに採用され、1880mmのワイドボディは非設定だったが、これを拡大している。ただしワゴンとマイクロバスには用意されていない。以前と同じくバンのみの設定だ。
なおキャラバンのインテリジェントエマージェンシーブレーキは、日産の小型/普通乗用車に採用されるタイプとはメカニズムが異なる。乗用車では単眼カメラをセンサーとしているので歩行者も検知するが、キャラバンはミリ波レーダー方式でカメラは備わらないため、歩行者を検知できない。作動速度の上限は単眼カメラ方式と同じで時速80kmだ。
開発者によると「単眼カメラはフロントウインドー上部の内側に装着するが、キャラバンはその位置が高いために、上側から見降ろす配置になって十分な効果が得られない。そこでフロントグリルの内側に装着するミリ波レーダー方式にした」という。それでもキャラバンは配達などに使われて市街地を走ることが多く、歩行者への対応が必要だ。
同様に安全性を高める装備として、4ナンバー登録のバンでは日本初採用となるインテリジェントアラウンドビューモニターを設定した。ボディの前端と後端、左右のドアミラーに小型カメラを装着。この画像を合成することで、車両の周囲を上空から見たような映像としてルームミラーやカーナビの画面に表示する。視野内に歩行者など移動物が検知された時は、表示とブザーで警報する安全機能も備えた。
インテリジェントアラウンドビューモニターは日産の乗用車に幅広く装着されるが、キャラバンはミニバンと違ってドアミラーがボディの先端に位置しており、後端までの距離が長い。ドアミラーに装着された小型カメラの視認範囲も後ろ側に向けて大きく広げている。映像の歪みが生じやすく、開発には乗用車とは違う難しさがあったという。
このほか快適装備も進化させて、バックドアオートクロージャーを採用した。バックドアが半ドア状態になれば自動的に全閉するため、力強く閉める必要がない。バンのプレミアムGX、ワゴン/マイクロバスのGXに標準装着され、バンのDXやVXにもオプション装着できる。
開発者は「バックドアの開閉音は、住宅街などでは反響して騒音になりやすい。そこでオートクロージャーで静かに閉まるようにした」という。
フルオートエアコンも新たに設定された。バンのプレミアムGX、ワゴン/マイクロバスのGXに標準装着され、温度を設定すると空調の吹き出し口まで自動的に調節される。
オーテックジャパンが手掛けたカスタムモデルである、NV350キャラバンライダーも変更を受けた。
従来型に比べると大型メッキグリルの形状が繊細になり、新たなライダー専用オプションとしてアルミホイール、サイドシル/リアアンダープロテクター、ルーフスポイラーが用意され、フルエアロ仕様に発展させることが可能だ。
このほかライダーには、専用防水シート、専用マーカーLEDなどを備えたインテリアパッケージを設定していたが、これをプロスタイルパッケージに変更した。15インチアルミホイールやLEDヘッドランプも加えている。
商用車イメージの強いキャラバンが、快適装備を充実させる理由とは
以上のようにキャラバンはマイナーチェンジで主に快適装備を充実させた。この背景には大きく分けて3つの理由がある。
まずはキャラバンを使って仕事をするユーザーの快適性を高めることだ。商用車の場合、職種によっては就業時間の大半を車内で過ごす。運転席の座り心地の良し悪しが慢性的な疲労、さらにいえば安全な運転に影響することもあるから手を抜けない。
例えばフルオートエアコンとマニュアルエアコンの使い勝手は、ユーザーによって評価の優劣が分かれるが、フロントウインドーの曇りを除去するデフロスタースイッチなどは、フルオートエアコンが使いやすい。安全性を高める効果もある。
2つ目はキャラバンをトランスポーターなど趣味のツールとして使うパーソナルユーザーが約20%いることだ(ライバル車のトヨタハイエースは40%近くに達するといわれる)。荷室の広いミニバンとしての需要もあり、ワンボックスワゴンとしての充実した機能が求められる。
エンジンの選択肢も魅力で、キャラバンであればエルグランドに設定のない2.5リッターのディーゼルターボを選べる。ハイエースにも当てはまることだが、ディーゼルが欲しいためにキャラバンを購入するユーザーもいる。
3つ目はハイエースとのライバル競争だ。1年間の登録台数は、キャラバンが約2万7000台、ハイエースは約8万3000台に達する。キャラバンの売れ行きはハイエースの33%程度だ。この差を挽回すべく、キャラバンは商品力の向上に力を入れる。
キャラバンはハイエースに装着されない機能として、以前からラゲッジユーティリティナットを装着していた。荷室に予め捩じ込み式の穴を開けておき、ユーザーが必要に応じて棚やネットを装着できるようにする配慮だ。
今回のマイナーチェンジでは床面部分にも穴を加えて合計32箇所とした。ビジネスやレジャーの使い勝手を高める機能として、ハイエースに対する優位性になる。
安全装備のインテリジェントエマージェンシーブレーキ、移動物の検知機能を備えたインテリジェントアラウンドビューモニターも、ハイエースに差を付けるところだ。
逆にスライドドアの電動開閉機能は、キャラバンの場合、ワゴンとマイクロバスのみの設定でバンには用意されない。スライドドアオートクロージャーにとどまるが、ハイエースでは、バンのスーパーGLにオプション設定される。ハイエースの装備が勝るところもある。
ちなみにキャラバンとハイエースの販売格差が広がった一番の理由は、従来型キャラバンのボディ剛性が低かったことだ。少なくとも1980年に発売された2代目、1986年の3代目ではキャラバンが見劣りした。
例えば4輪のうち、1輪だけを歩道に乗り上げて駐車した場合、以前のキャラバンではボディに歪みが生じて、バックドアやスライドドアの開閉が困難になった。段差のないところに置くと元に戻るが、これでは仕事の効率が悪化する。
そしてビジネスで使う人達は、同業者同士で情報交換を活発に行うから「キャラバンはダメ、選ぶならハイエース」という評価が定着した。
キャンピングカーも同様だ。いわゆる「バンコンバージョン/バンをキャンピングカーにコンバート(変換)する仕様」は、特別な事情がない限りキャラバンは使われなかった。キャンピングカーの製造者は「キャラバンのボディはヤワい」と口をそろえた。
この点を日産の開発者に尋ねると「キャラバンのボディが弱いというのはもはや昔話。2012年に発売された現行型は、ハイエースに劣る面はまったくないが、今でも都市伝説のように語り継がれている」という。
クルマは高額商品だから誰でも間違った買い方はしたくないが、商用車はなおさらだ。読者諸兄も、仕事で使うツールは、保守的な選び方をされることがあると思う。仕事に支障が生じるのは最も困るから、安全な方を選ぶ。
このような背景から、以前のキャラバンの売れ行きは、ハイエースの17%程度だった。安全装備の充実などによって33%まで持ち上げたが、互角に勝負できるようになるまでは、これから相当な時間を要するだろう。
安全装備を充実させ、ワンボックスカーを使った時に多くのユーザーが感じる運転席の乗り降りのしにくさなどにも、目を向けていく必要がある。
またハイエースはトヨペット店の専売車種とされ(姉妹車にネッツトヨタ店のレジアスエースバンもあるが)、ユーザーを入念にフォローしている。
店舗数だけで見ればトヨペット店が約1000店舗、日産は2100店舗と多いが、キャラバンはノートやデイズと一緒に売るから販売力が下がりやすい。今後も、キャラバンは地道に商品力と信頼性を高めていくことが大切で、それは高額商品としての本来的な売れ方でもあるだろう。
今回のマイナーチェンジに際しての取材会では、高温の耐熱試験、マイナス40〜90度の寒冷試験、昼夜を問わずスライドドアを開閉する耐久試験、デコボコの激しい路面のテスト走行などを見学できた。
同様の試験は当然のことながらハイエースでも行われており、メーカーと販売会社の実力が問われている。
[Text:渡辺陽一郎 Photo:日産自動車/茂呂幸正]
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