三菱 グランディス 試乗レポート
- 筆者: 西沢 ひろみ
- カメラマン:島村栄二
激戦の繰り広げられるミニバンモデルに新風を巻き起こす
ダイムラーの開発の手が加わった第二弾として、超激戦区のミニバンクラスに出現したのが新型グランディスだ。キャッチフレーズは、TVコマーシャルでもお馴染みの「世界のわがまま」。きっと、世界中の人たちの希望を聞き入れて作られたミニバンなのだろう。新型グランディスは、83年に発売された初代シャリオから数えると4代目にあたる。だが今回から、シャリオのネーミングが外れた。新たなコンセプト、新たな方向性の強い主張が伺える。
ミニバンはファミリーにとっての週末用であり、運転するのはパパ。ウイークデーのママ用の足クルマは、別に所有しているというのが従来の図式。ところが新型グランディスは、地球環境に力が注がれる今の時代、ミニバンは女性の日々の足に変わってきていると考えた。ライバル車と大きく違っているのは、ここを重視して開発したところだ。
三菱ブランドのアイデンティティを受け継ぐ新型グランディス
オーソドックスなプロポーションと三菱のデザインアイデンティティであるフロントマスクのドッキング。新型グランディスのスタイルは、想像していたよりもずっと印象が薄かった。ブランドの統一化を目指し、全車に共通化が図られているフロントマスクが見慣れているせいだろう。フロントウインドーの傾斜がかなりきついのも、フロントマスクからデザインする手法が取られ、一番かっこよく見えるカタチを作り上げた結果だそうだ。インテリアは、メタル調の加飾を施したスポーツ内装と木目調をあしらったエレガンス内装の2タイプを用意する。コルトで好評だったフリーカスタマイズシステムを導入しているおかげで、10色から選べるボディカラーとは別に、自分の趣味で選べるのがうれしい。
女性ユーザーを意識した内装は好印象
6&7人乗りの室内の座り心地は、最大のライバルにあたるオデッセイより居心地がよく、イプサムよりちょっと狭く感じた。特にサードシートは、座面幅や足元スペースは十分にあるのに、大柄な男性が座るとヘッドクリアランスがほぼゼロになってしまうのが残念だった。シートアレンジメントは、セカンドシートのチップアップ&クッション部の高さを3段階に変えられる機能、左右分割床下収納のサードシートが自慢だ。
女性ユーザーを意識した機構は、ユースフルシートと呼ばれる助手席座面下の収納。助手席の座面を持ち上げると出現するこの収納は、ブレーキング時にバッグや小物が床にころがらないのが魅力だ。コルトにも採用されているが、新型グランディスは一歩進んで取り外し可能な専用のトートバックが付く。気になったのは車幅感覚がつかみにくいこと。小柄な体型の女性には、狭い路地の走行やすれ違い、駐車がしづらいのでは、と感じた。
日常での使い勝手がよいフラットトルクなエンジンが魅力
新開発となる2.4リットルのエンジンは、三菱初のゲート式インパネシフトのスポーツモード4速ATと組み合わせられる。カムが低速モードから高速モードに切り替わるのは3500回転だ。乗ってみると、ホンダのVTECエンジンほどの低回転域と高回転域の明確な差や、高回転域での吹き上がりの気持ちよさは味わえない。どちらかというと、誰もが乗りやすいと感じるフラットトルクが持ち味。121kwのパワーはあらゆる場面でちょうどよく、スムーズな変速とともに日々の扱いさすさが伺えた。
乗り味は16インチタイヤを履くエレガンス-XのFFがミニバンボディを感じさせない軽快な身のこなしを見せる。操舵に対して素直に向きを変えてくれるし、左右に連続するコーナーもそこそこ楽しめる。ブレーキを強く踏むと荷重がフロントにかかりすぎるきらいはあるけど、安定感と乗り心地のよさを持ち合わせたバランスのよさが感じられた。17インチタイヤを履くスポーツ-Xは路面への接地感が薄く、ロールの修まりもはっきりしない。軽すぎるパワステの手応えももう少し欲しいところだ。多少サスに手を加えた方が、スポーティな走りが楽しめた気がする。
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