メルセデス・ベンツの3列シートミニバン、新型「Vクラス」海外試乗|開発のベンチマークは“アルヴェル”!?(2/4)
- 筆者: 今井 優杏
- カメラマン:メルセデス・ベンツ日本
日本にも導入予定の新世代ディーゼルエンジンがイイ
冒頭に述べたとおり、新しいVクラスではエンジンも新世代ターボディーゼルのOM654型に変更される。
現行モデルで日本市場にも導入されていたV220dのエンジンは直4 2.2リッターのOM651型だったが、新ディーゼルエンジンのOM654型は直4 2リッターで、すでにEクラスやGLE、CLSなどに搭載されているモノ。同社初のオールアルミ製で軽量、ナノスライドというシリンダー内にスリット(切り込み)を入れてフリクションを低減、などといった手法を駆使して設計され、環境負荷や新世代の排出ガス規制にも適合し、なおかつパワーと静粛性を兼ね備えているという、信頼性の高いエンジンだ。
なお今回のビッグマイナーではディーゼルエンジンのみを刷新・搭載することが発表された。今、日本でラインナップしている現行Vクラスのガソリンエンジンの販売の継続に関して本国のエンジニアに尋ねると、併売するが刷新はされないということだった。よって、新型はディーゼルのみのラインナップからスタートすると予想出来る。
ドイツ本国では3種類の出力違い版が用意される
このOM654型エンジンには、3種類の出力が用意されていた。もっともパワフルなV300d、真ん中の250d、そして220d。
日本導入は220dであることが予想されるから、220dのスペックだけ記しておけば、最高出力は163ps、最大トルクは380Nmを1,200~2,400rpmで発揮するという心強い数字が並ぶ。
今、SUV×ディーゼルという図式は日本でもトレンドになりつつあるが、その潮流を今度はミニバンでも楽しめるということになる。
ディーゼル×ミニバンといえば三菱の新型デリカD:5が思い浮かぶが、サイズ的にも価格的にも競合するとは考え難い。トヨタのアルファード/ヴェルファイアと真っ向勝負するラグジュアリー・ミニバン界において、ただでさえVクラスにはディーゼルの選択肢があるというだけで大きなセールスポイントになっていたのに、さらに新世代に進化しているんだから魅力的なことこの上ない。
もっと付け加えるならば、組み合わされるのはVクラス初搭載となる9速AT。これにより、同速度域でのギアの選択肢が増え、静粛性や制振、また気持ちの良い加減速を多分に演出している。
ミニバンでも乗り味や静かさは“メルセデス”クオリティ
そう、実際に乗って驚いたのは「わあ!ミニバンなのにメルセデス・ベンツだ!」ということなのだ。
メルセデス・ベンツに抱くイメージとは、高い剛性感、フレキシブルに動くサスペンションからもたらされるフラットなキャビン、また操舵量に対してよく曲がるタッチの軽いステアリングなどなど、やはり「高級車」然とした期待値の高さだと思う。
何度も言うが、正直、先代までは「商用車の延長」といった感じは拭えなかった。リアはややバタつくし、ハンドリングもトラックみたいによっこいしょ、とマンパワーで回していくようなイメージだったし、アクセルの踏み込みに対する反応もルーズだった。更に言うならブレーキのタッチも、少しおおげさに言えば『もしかしてこれフル積載に合わせ込んでんじゃないの?』的過敏さも持っていたと思う。
それがどうだろう! 新型はもう、すべてがジェントルに生まれ変わったのだ。
まず、高い静粛性である。
今回は3列シートのミニバンということで、後部座席にも積極的に試乗したが、ハンドルを握るドライバーと、さほど大声でなく会話できたのは驚きである。そして、途中で何度も「あれ?これって本当にディーゼルだっけ?」と確認するほどに、独特のディーゼル音も抑えられている。
エンジンマウントを工夫したのかな?と思い開発陣にインタビューしてみると、そうではないという。このような背高のクルマの場合、マウントで制振をどうにかしようとすると、余計にウワモノがふらつくのだそうだ。なので、彼らからの返答は、「それは新型の9Gトロニック(9速AT)の恩恵が大きい」、ということ。さらに、エンジンユニットがオールアルミ化したことで、マイナス25キロの減量に成功し、これも制振に寄与している、ということだった。
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