レクサス RC F 試乗【前編】|大幅に進化した“サーキットマシン”を富士スピードウェイで試す!(2/3)
- 筆者: 山田 弘樹
- カメラマン:和田 清志
相変わらず最高の自然吸気エンジン
まず最初にそのステアリングを握ったのは、ベースとなる「RC F」だった。
許された周回数はインラップ/アウトラップを含めた2周のみ。実質1周のアタックだったため、モードは最上級の「SPORT+」、VDCはオフで走った。
相変わらずエンジンは最高だ。いや、正確には実に細かな改良が施されているからさらに良くなっているはずだが、残念ながら自然吸気エンジンの改良はターボほど簡単には体感できない。ましてや直接前期型と比べたわけではないから「相変わらず」という表現になったが、それでもやはり気持ち良いのだ。
豪快かつキレのあるエンジン
まず耳を刺激するのは、その豪快かつキレのある吸気音だ。
今回開発陣は、なんとエアクリーナーボックスの内部に「エアロスタビライジングフィン」を初めて採用した。
これはもともとボディのエアロダイナミクスを整えるパーツであり、現行トヨタ車のサイドミラーや、テールランプに装着されるポピュラーなパーツである。
その役目は、空気の流れを整えることであり、RC Fの場合は吸入管の内壁に生じる境界層(流速が遅い部分)を、このフィンガ創り出す清流で取り除く。これによってより多くの空気がエンジン内部に届くようになり、アクセルレスポンスも向上したのだという。
さらにエンジンの高い位置にあるインテークマニホールドは鋳造後に機械加工され、10kgから9.3kgへと軽量化されたという。
エンジンを支えるマウントはリア側を新設計。さすがはレクサスと思わされるのは、ゴム硬度を上げるのではなく、むしろ下げてNVH(ノイズ・ハーシュネス・バイブレーション)を低減していることだ。しかしゴム断面は増えているため、アクセルによるエンジンの横揺れや、慣性モーメントに対応できている。実際全開でアクセルを踏み抜いてから急激にオフするような場面でも、大きくて重たいV8がスナッチするようなフィールはなかった。
またターボのように凶暴なトルク変動がなく、トップエンドまでスカッと回るエンジン特性。481PSというパワーを使い切れる贅沢は、闇雲な速さよりも満足度が高い。
ステアリングの応答性もアップ
このエンジン以上に感心したのは、ステアリング応答性の向上だった。
正直に言えばV8エンジンの重さはまだまだ感じる。しかしターンインでは操舵初期に立ち上がる接地感が、これを切り込み切るまで途切れなくなった。アンダーステアも確実に減っている。
これはAVSアブソーバー(ザックス製ソレノイド内蔵式30段可変タイプ)の効果だけでなく、ステアリングギアボックスのラックブッシュ硬度を従来比1.5倍に引き上げた効果も高いようだ。最大荷重が掛かった際にフロント左右タイヤのアライメントがバンプ変化しなくなり、ステア追従性が上がったのだという。
リアサスペンション周りの動きはまだまだ保守的
対してリアサスペンション周りの動きは、まだまだコンサバな印象を受ける。ドライバーとしてはいち早く外側2輪へとGを移して旋回体制に入りたいのだが、この荷重移動が遅い。結果として、フロント2輪だけで曲がる感じが強くなっている。同じFRのライバルであるBMWは、この動きが非常にスムーズで早い。
もっともこれは試乗車に装着されていたTVD(トルクベクタリングディファレンシャル)の制御が安定志向だからかもしれない。
メカニカルグリップだけでイメージすればもう少しだけリアサスペンションを伸ばしたい気持ちにさせられるが、既に時速250km/h近い速度からのフルブレーキングでは、リアが僅かに振られるほどのストロークが出ている。そして姿勢を水平常態に保ってからターンしているため、この安定性はディファレンシャルのロック率が高いからではないか? と推測した。
その上で回頭性を高めるのであれば、LCのような後輪操舵こそが適切なのではないかと思うが、レクサスにその考えはなかったようだ。
また、そもそも論を言ってしまえばRC Fは、まだまだ遠慮している。フロント255/35R19、リア365/35R19というタイヤサイズは、思い切ってもっと幅を増やし、大経過してもよかったと思う。
>>感じられたのは、トラクション性能の高さ[次ページへ続く]
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