ホンダ S660 公道試乗レポート/嶋田智之(5/5)

ホンダ S660 公道試乗レポート/嶋田智之
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エンジンは“ヤル気”テイストで気持ちいい!

ホンダ S660

エンジンも結構気持ちいい。元をただせばNシリーズの実用ユニットがベースだけど、各部のチューンナップによって、かなり“ヤル気”なテイストを手に入れている。

レスポンスは鋭いしターボラグも極めて少ないし、低回転域からハッキリとしたトルクを感じさせながら、スムーズに力強く吹け上がっていく。6速MTでは7,700rpm(CVTは7,000rpm)まで回る。

いかにもターボ車然とした中速域より上でのヒューンという音や、スロットルをオフにしたときのパシュッ!というブローオフバルブの音、いかにも3気筒らしいサウンドながら回転の上昇に従って音質が変わっていく感じも、気分を高めてくれる。

じゃ、速いのか?と問われたら、そこは64ps。ストレートで物凄くスピードが伸びるわけじゃない。けれど、走っていてじれったさを感じることがないくらいには速い。660ccで初めて100Nmを超えた104Nm(10.6kgm)のトルクが元気のいいコーナーの立ち上がり加速を可能にしてくれるし、なによりエンジン全体が小さいくせして全身でドライバーを楽しませようとしてるような雰囲気があるから、実際の速度そのものがナンボのものか、そういえば走ってる間中はほとんど気にしたことがなかった。

S660の楽しさに、ニヤケ顔が止まらない!

ホンダ S660

そう、S660はエンジンだけに限らず、どこもかしこもそんな具合なのだ。例えば、ステアリングの驚くほど滑らかなフィーリングと饒舌なインフォメーション。例えば6速MTの、手首の返しひとつでコクッと決まる小気味のいい感触。例えばスロットルペダルやクラッチペダルの、軽々しさのない適度な重さ。

そうした感覚が左右する部分のチューニングも念入りに行われていて、それらがひとつになって開発陣の「気持ちいいスポーツカーを作りたかったんだ」という想いを伝えてくるかのよう。ぶっちゃけ、僕なんかはそこ一点だけでも感涙モノだと感じてしまうくらい。

ホンダ S660

だから、街中をフツーに走ってるだけでも、僕はずっと楽しかった。嬉しかった。自分がニヤニヤしてるのが判ってるのに、止められなかった。止める気もなかったけど。いったい誰だよ、日本人には心に響くスポーツカーなんて作れない、みたいなアホなことをいったのは。そんな気分である。

もちろん、もうちょっとエンジンの回転落ちが素早い方がいいとかタイヤはここまでグリップ力が強くなくてもいいだとか、自分の好みと少し違うところもあるし、粗を探そうと思えば出てくるモノだってあるだろう。でも、そんなことより何より、こうした日本からしか生まれないマイクロスポーツカーが熱い気持ちを持った人達の手によって生み出されたことを、思い切り喜びたいじゃないか。

そうそう、忘れるところだった。最後にひとつ。僕はスポーツ(=操縦)するのが好きだしフィールが抜群だから6速MT仕様が気に入って、そっちを中心にお話を進めちゃったけど、そもそもオープンスポーツカーには、また違った側面もある。

スポーツ(=気晴らし)するために気に入った風景の中を自分に合ったスピードで走ったり、散歩代わりに出掛けたりするのが使い方のメインなのだったら、むしろCVTがいいかも知れない。

それなら恋人あるいは奥さんと、6速MT仕様と何ら変わらない“曲がる楽しさ”体験を共有できるしね。

スマホアプリでS660のエンジンサウンドが「マクラーレン F1」に!?

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嶋田 智之
筆者嶋田 智之

本人いわく「ヤミ鍋系」のエンスー自動車雑誌、『Tipo』の編集長を長く務め、スーパーカー専門誌『ROSSO』の総編集長を担当した後、フリーランスとして独立。2011年からクルマとヒトに照準を絞った「モノ書き兼エディター」として活動中。自動車イベントではトークのゲストとして声が掛かることも多い。世界各国のスポーツカーやヒストリックカー、新旧スーパーカー、世界に数台の歴史的な名車や1000PSオーバーのチューニングカーなどを筆頭に、ステアリングを握ったクルマの種類は業界でもトップクラス。過去の経歴から速いクルマばかりを好むと見られがちだが、その実はステアリングと4つのタイヤさえあるならどんなクルマでも楽しめてしまう自動車博愛主義者でもある。1964年生まれ。記事一覧を見る

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