【試乗】ホンダ N-BOXスラッシュ 試乗レポート/今井優杏(3/4)
- 筆者: 今井 優杏
- カメラマン:茂呂幸正
サイドのクーペライクな形はレンジローバー・イヴォークのよう
さて、インテリアと外装のカラーリングに気を取られ、ちょっとその事実に気づくのにタイムラグが生まれてしまったのが車高の変更だ。
前から見たら確かにN-BOXのカオをしているのに、ちょっとサイドに回り込んでみれば、あれ?なんだかクーペライクなんである。レンジローバー・イヴォークのようなウインドウ形状とルーフの傾斜を持っている。
N-BOXスラッシュはベースとなったN-BOXよりルーフを100mmも低くしてあるのだが、単に車高を下げているのではない。屋根をバッサリとカットして、低くてワイドなアメリカンスタイルを実現させているのである。
実はこれ、N-BOXが発売されたときに、デザイナーが「ルーフをカットしたらかっこいいんじゃない?」と、ちょっとした遊び心で画に手を加えて壁に貼っておいたら、社内で大ウケしたのだとか。
N-BOXスラッシュ誕生のキーとなった、ホンダのモータースポーツの聖地「鈴鹿工場」
しかし、ここからN-BOXスラッシュの誕生までにはいくつもの神風が吹いたのだという。 そのキーとなるのが『SKI』というホンダの新しい取り組みだ。これは設計から生産までをすべてホンダのモータースポーツの聖地である鈴鹿工場で完結する、というもので、『SKI』とは鈴鹿・軽・イノベーションの頭文字だ。
これまでは栃木で行っていた設計を鈴鹿に統合し、より魅力的な軽自動車の文化を植え付けていこうとする新しい体制なのだが、このキックオフのイベントに展示されたのがまさにN-BOXスラッシュのモックアップ(模型)だった。内装には“ダイナー”、赤×チェッカーフラッグ柄を持って行ったという。
これが工場の中でひときわ注目を集めるモデルとなる。モックだから乗ってはいけませんよ、と言っているのによじ登る女の子や、契約書を交わす勢いで質問攻めをしてくる工員さんなどが続出した。しかも工場が直結しているからこそ、このクルマをこのまま発売するにはどうしたらよいか、というところまで考え始めてしまったというのだ。
このため、コンセプトを一般的に希釈してマイルドにして発売するのではなく、発売されたようにエッジィなテーマのまま発売することになったのだとか。そしてめでたくSKI第一号は、このN-BOXスラッシュとなったそうだ。
実はこの“ダイナー”のデザイン、どっかで見たことあるなと思っていたのだ。それこそが鈴鹿のサーキットホテルの部屋の装飾であったり、またツインリンクもてぎのホンダコレクションホールであったりと、ホンダが育んできたモータースポーツの世界観に似通っていたからで、だからこそ鈴鹿の技術者の心を打ったのではないかと考えるのは、ちょっと雰囲気に酔いすぎているだろうか。
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