ホンダ N ONE 新型車解説(2/2)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:原田淳
個性的な外観とは裏腹に、N BOX同様の機能性・快適性と十分な室内空間を確保
外観はかなり個性的。空間効率が重視される背の高い軽自動車は、外観が似通った印象になるがN ONEは違う。「N360」をモチーフにしたことで、遠方からでも明確に識別できる。
内装に目を向けると、N BOXと同様のシートアレンジを可能にしたこともメリットになっている。リアシートは床面へ落とし込むようにコンパクトに畳めて、フラットで容量の大きなボックス状の荷室に変更できる。リアシートの座面を持ち上げれば、1240mmの室内高をフルに使い、車内の中央に背の高い荷物も積める。
N BOXと同様、リアシートのスライド機能が備わらないことは欠点だが、4名乗車時でも荷室容量に不足はない。ラゲッジボードを水平にセットすれば荷室が上下に2分割され、下側はアンダーボックスになる。ボードを起こせばひとつの空間になって大きな荷物も積みやすい。
ボンネットを短く抑え、ホイールベースは長いので、居住空間も十分に確保される。室内高の数値はミラココアと同じながら、窮屈な印象はなく、リアシートの足元空間も十分。全高が1610mmに達する軽自動車らしく、大人4名が快適に乗車できる。
シートは前後ともにベンチタイプを採用。サイズに余裕があり、座り心地は快適だ。フロントシートの中央にはアームレストが装着されてリラックスできる。
インパネは水平基調のデザイン。スイッチ類は比較的高い位置に装着され、エアコンはATレバーの左側に備わるものの、操作に支障はない。メーターは大径で見やすく、カーナビやオーディオの操作性、視認性も満足できる。
エンジンはノーマルタイプとターボを設定。動力性能はN BOXと同じで、ノーマルエンジンは最高出力が58馬力(7300回転)、最大トルクが6.6kg-m(3500回転)。ターボは64馬力(6000回転)、10.6kg-m(2600回転)になる。
車両重量はノーマルエンジン搭載車が840~850kg。ターボが850~860kg(いずれも前輪駆動の2WD)。ワゴンRの車両重量が800kgを下まわることを考えれば、軽量とはいえないが、背の高いスライドドアを装着したN BOXよりは90kgほど軽い。ノーマルエンジンでも、登坂路などを除けば力不足はほとんど感じないだろう。
ターボは10kg-mを超える最大トルクを2600回転で発揮するため、走りに余裕がある。1200ccクラスのノーマルエンジンを積んでいる感覚で運転できる。
2WD仕様のJC08モード燃費は、ノーマルエンジン仕様がムーヴと同じ27km/L。アイドリングストップも併用して燃費性能を向上させた。ターボは数値が少し下がるが22.4~23.2km/Lだ。ノーマルエンジン仕様では、エコカー減税によって購入時に支払う税額が免税(100%の軽減)になり、ターボでも75%の減税。税額が安くなるメリットも大きい。
バリエーションは、標準ボディと上級指向のプレミアムに大別される。
プレミアムはフロントグリルをメッキで縁取りして、開口部が大きく見えるデザイン。ボディの側面や後部の下側にもメッキパーツが備わり、リアゲートの上部にはスポイラーを装着。15インチサイズのアルミホイールはスポーティーなデザインだ。
エンジンの組み合わせは、標準ボディにはノーマルのGとターボのツアラーを設定。それぞれに装備を上級化したLパッケージも用意される。
プレミアムも同様で、ノーマルエンジンとターボのツアラー、Lパッケージも選べる。すべての仕様に2トーンカラースタイルを設けたことにも注目したい。
横滑り防止装置やスマートキーは、N BOXと同じく全車に標準装着。Lパッケージにはサイドカーテンエアバッグが装着され、オプションでサイドエアバッグも付けられる。
ボディの傾き方を抑えるフロントスタビライザーは、標準ボディのGとG・Lパッケージ以外は標準装着。ターボのツアラーでは、フロント側のディスクブレーキが放熱効果の優れたベンチレーテッドタイプに変わる。Lパッケージには、スーパーUVカットガラスなども装着される。
機能や装備に対して価格を割安に抑えた買い得グレードは、標準ボディのG・Lパッケージ(124万円)。ベーシックなGに前述のサイドカーテンエアバッグ、ディスチャージヘッドランプ、運転席の上下調節機能など12万円相当の装備を加え、価格アップは9万円だ。ワゴンRで売れ筋のFXリミテッド(124万9500円)よりも若干安く、価格競争力を強めている。
登坂路の多い地域に住むユーザーには、標準ボディのツアラーLパッケージ(137万円)がピッタリ。ターボの装着で動力性能が向上し、クルーズコントロール、アルミホイール、パドルシフト、前述のフロントスタビライザーやベンチレーテッドディスクブレーキも備わる。ノーマルエンジンのG・Lパッケージに対する価格アップは13万円だから、装備の換算額を差し引けば、何と2~3万円でターボが装着される計算だ。
この割安感もライバル車対策。137万円前後には、モコG、アルトラパンT、eKスポーツRなど、価格を抑えた軽自動車のターボモデルが顔を並べる。その中でN ONEの標準ボディツアラーLパッケージは、動力性能、安全&快適装備ともに大幅に勝っている。
一方、プレミアムの価格は、Lパッケージで比較すると、標準ボディに対して15~16万円高い。ターボのツアラーLパッケージ同士を比べると、前述のように標準ボディが格安だから、プレミアムの割高感は否めない。ユーザーが内外装の上級化にどの程度の価値を見い出すかにより、損得の判断が分かれるだろう。
以上のようにN ONEは、外観デザインでN BOXをベースにする制約を受けたものの、居住性が優れシートアレンジも多彩だ。動力性能と燃費も高い次元で調和させた。
そして価格は割安。「エコカー減税」がクルマ選びの重要な基準になると、ユーザーは税額だけでなく、さまざまな出費を気にするようになる。特に軽自動車では価格競争が激化しており、N ONEも低価格化による対応を図った。
となればほかのメーカーも黙ってはいられない。例えばダイハツは先ごろタントを免税に格上げし、標準ボディにもエアロパーツを装着したGスペシャルを設定。価格はN BOXG・Lパッケージと同じ134万円で対抗している。タントエグゼカスタムRSは、5万円の値下げを行ってワゴンRスティングレーTよりも価格を1万円弱安く抑えた。
N ONEを含め、今の軽自動車は、高機能化、低燃費化、低価格化が著しい。その魅力は光輝いて見えるほどだ。コンパクトカーをはじめとするほかのジャンルは、相当に力を入れないと軽自動車に勝てないだろう。顧客をゴッソリと奪われてしまう恐れがある。軽自動車以外のジャンルにも力を入れて、日本車全体の輝きを取り戻して欲しい。
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