オジサン世代のシビックショックを繰り返さないで!ホンダにおけるフィットとシビックの関係(3/3)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
フィットハイブリッドの頻発したリコールも悪影響
さらに、フィットハイブリッドで頻発したリコールも売れ行きに影響を与えている。現行フィットが発売された直後の2013年10月から2014年にかけて、ハイブリッドに使われる7速DCTに関係したリコールが複数回にわたり行われた。
この時には制御プログラムの書き換えでは済まず、部品の交換も発生している。ユーザーが不安を感じて販売店にクルマを約1か月にわたって預け(部品の納期も遅れた)、販売会社が運営するレンタカーを無償で貸与するケースも生じた。
当たり前だが、販売店側も不安を感じてフィットハイブリッドの販売促進に消極的になる場面もあり、ノーマルエンジン車を含めてフィットの販売を下げている。 このようにフィットの販売低迷には、さまざまな要素が関係する。
メーカーと販売店、果たしてどこまで1枚岩になれるのか
この中で特に大きな影響を与えたのは、メーカーと販売店の売る気だ。これはフィットに限った話ではない。
例えばノートはe-POWERの設定で売れ行きを伸ばしたが、背景には日本国内で売られる日産車の設計が全般的に古くなったことがある。「もはや頼みの綱はノートとセレナしかない」と、開発と販売に力を注いだことで好調な売れ行きを達成できた。
逆にいえば、メーカーと販売会社がフィットをもっと大切にすれば売れ行きは伸びる。ニュルブルクリンクの計測タイムにこだわり、モンスターマシンになった450万360円のシビックタイプRを輸入するくらいなら、フィットタイプRを開発した方が日本のクルマ好きに歓迎されるだろう。
遠すぎる“夢”は“カベ”と読む。
1.5リッターのノーマルエンジンを積んだフィットRSが205万920円だから、高回転域指向のエンジンにチューニングしてボディと足まわりを強化しても、235万円くらいでフィットタイプRを成立させられる。
また今ではCR-Zが廃止されてハイブリッドと6速MTの組み合わせを選べないが、これを260万円前後のフィットハイブリッドタイプRで実現する手もあると思う。ホンダにはフィットをもっと大切にしていただきたい。
比較的若い読者諸兄の中には、フィットでクルマの楽しさを知った人も多いだろう。私のようなオジサン世代のシビックに相当するのが、今の若年層にとってはフィットだと思う。
オジサン世代が昨今のシビックで味わった落胆を、今の若い人達に味わわせてはならない。
[Text:渡辺陽一郎]
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