ホンダ 新型CR-V 徹底解説|国内復活モデルはHVや3列目シートを設定し、ライバルに挑む!
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:オートックワン編集部・本田技研工業株式会社
ハイブリッドや3列シート仕様7人乗りなど用意し、新型CR-Vが復活
最近はSUVカテゴリーの人気が高まっている。ホンダではコンパクトなヴェゼルを用意するが、2018年8月30日に新型CR-Vを発表した。生産と納車を伴う発売は、1.5リッターターボエンジン搭載車が8月31日、ハイブリッドは11月1日だ。
CR-Vの初代モデルは1995年に発売され、フルモデルチェンジを重ねたが、2016年に4代目の販売終了とともに国内から一度撤退した。
そのCR-Vが復活したわけだ。新型の5代目は、海外では2016年に登場したから、日本では2年遅い発売になる。
ちなみに先代型の4代目は売れ行きが伸び悩み、ヴェゼルが好調に売れていたから、5代目は国内で発売されなかった。その後、SUVの市場環境も変わり、改めて新型CR-Vの発売に踏み切った。新型となる5代目CR-Vはハイブリッドの設定などメカニズムが新しく、3列シート仕様の7人乗りを用意することも特徴だ。
Lサイズに近いミドルサイズSUV
新型CR-Vのボディサイズは、全長が4605mm、全幅は1855mm、全高は2WDが1680mmで4WDは1690mmになる。全長はスバル フォレスター、日産 エクストレイルなどに近いミドルサイズだが、全幅は少しワイドでLサイズの領域に入る。
ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は2660mmで、最小回転半径は5.5mだ。この数値はミドルサイズSUVの平均水準になる。
ボディがワイドでボンネットは見えにくく、ボディ後端のピラー(柱)は太めだから、斜め後方の視界も良くない。ミドルサイズではあるが、狭い裏道や駐車場での取りまわし性はLサイズに近いから注意したい。
2.4リッタークラスの動力性能をほこる1.5リッター直噴ターボエンジン
エンジンなどのパワートレーンは、先に述べた1.5リッターの直噴ターボと、スポーツハイブリッドi-MMDと呼ばれる2リッターエンジンをベースにしたハイブリッドを用意する。
1.5リッターの直噴ターボは、ホンダのステップワゴンやシビックにも採用されるが、新型CR-Vが搭載するのはターボチャージャーから燃焼の仕方まで幅広く見直した進化版だ。使用燃料をレギュラーガソリンとしながら、最高出力は190馬力(5600回転)、最大トルクは24.5kg-m(2000~5000回転)に達する。シビックが搭載するプレミアムガソリン仕様と同等以上の性能を発揮する。
この動力性能は2.4リッターエンジンに匹敵するが、JC08モード燃費は、2WDのEX(5人乗り)が15.8km/Lだ。三菱 エクリプスクロスの1.5リッターの直噴ターボが15km/L(2WD)、エクストレイルの2リッターエンジン搭載車が16.4km/L(2WD)だから、動力性能を考えると新型CR-Vも効率が高い。
3リッタークラスに相当するスポーツハイブリッドi-MMD
スポーツハイブリッドi-MMDも、運転感覚を見直した。このシステムでは、エンジンは主に発電機を作動させ、発電された電気を使ってモーターを駆動して走る。そのためにエンジンは効率の良い回転を保てるが、そこを突き詰めると、速度の上下動とエンジン音が噛み合わなくなる。エンジンは速度に関係なく、効率の良い回転域で回り続けるからだ。
このような高効率な制御ができるのは、スポーツハイブリッドi-MMDのメリットだが、ドライバーに違和感が生じることも多い。特にアクセルペダルを踏み増した時は、発電量を増やすためにエンジン回転も高まるが、速度の上昇感覚以上に回転とエンジン音が増える時がある。速度はアクセル操作に応じて制御されるから、機能に問題ないが、ドライバーはエンジンが過剰に回っている気分になってしまう。新型CR-Vではこのあたりの感覚も見直した。
スポーツハイブリッドi-MMDの動力性能は、ノーマルタイプのガソリンエンジンに換算すると3リッタークラスに相当する。モーターはアクセル操作に機敏に反応するから、アクセルペダルを踏み増した直後の瞬発力が高い。追い越し加速などでは余裕を感じる。
2WDのJC08モード燃費は25.8km/L、新たに導入された実用燃費に近いWLTCモード燃費は21.2km/Lとなる。1.5リッターのハイブリッドを搭載するコンパクトなヴェゼルのJC08モード燃費は、2WDで23.4~27km/Lだから、ボディサイズや動力性能の違いを考えると、スポーツハイブリッドi-MMDは効率が高い。
そしてハイブリッドも含めて、すべての仕様に2WDと4WDを用意したことも新型CR-Vの特徴だ。
エクストレイルやアウトランダーより快適な3列目シート
室内空間は全長が4600mm前後のSUVでは広い部類に入る。ホイールベースが2660mmと長く、空間効率が優れている。
注目されるのは、7人乗りの3列目に配慮して開発されたことだ。SUVの3列目だから、ミニバンと違って床面は燃料タンクの張り出しによって高まっている。腰が落ち込み膝の持ち上がる姿勢になるが、3列目に座る乗員の足が2列目の下側に収まるようにした。
SUVの3列目シートは、概して「補助席だから付いていればいい」と安易に開発されることが多いが、新型CR-Vはアジア地域における3列シートSUVのニーズが高まったこともあり、真面目に造り込んだ。マツダ CX-8の3列目には負けるが、エクストレイルやアウトランダーよりは明らかに快適で、トヨタ ランドクルーザープラドと比べても少し勝る。片道45分以内の移動であれば、2列目シートを前方にスライドさせて3列目の足元空間を広げ、大人が多人数で乗ることも可能だ。
ベースグレードでも充実の装備内容
安全装備は、ほかのホンダ車と同様、ホンダセンシングを標準装着する。ミリ波レーダーと単眼カメラをセンサーに使い、歩行者や車両を検知して緊急自動ブレーキを作動させる。追い越し禁止なども含めて、道路標識をマルチインフォメーションディスプレイに表示することも可能だ。車間距離を自動制御できるクルーズコントロール、車線の中央を走れるように操舵の支援をする機能も採用した。
グレードは1.5リッターターボ、2リッターハイブリッドともに、EXと上級のEXマスターピースを用意する。1.5リッターターボには、前述のように2列シートの5人乗りに加えて、3列シートの7人乗りを設定した。ハイブリッドは2列シートのみだ。駆動方式は、すべての仕様に前輪駆動の2WDと4WDがある。
装備内容はEXでも十分に充実する。安全関連ではホンダセンシング、サイド&カーテンエアバッグ、LEDヘッドライト、スイッチで操作できる電子制御パーキングブレーキなどを標準装着した。
快適性を高める装備では、ホンダインターナビ&リンクアップフリー、左右独立温度調節式フルオートエアコン、8ウェイ運転席電動パワーシートなどが備わる。外装パーツでは18インチアルミホイールを装着した。
そしてマスターピースになると、本革シート、助手席の電動調節機能、電動パノラミックサンルーフ、両手に荷物を持っている時でもテールゲートを開閉しやすいハンズフリーアクセスパワーテールゲート、ルーフレールが備わる。
新型CR-V(ガソリンエンジンモデル)の価格をライバルと比較
価格は最も安い1.5リッターターボの2WD・EX(5人乗り)が323万280円だ。
ライバル車を見ると、三菱 エクリプスクロスの1.5リッターターボを搭載した2WDのGが270万6480円で、カーナビを加えると290万円前後だ。新型CR-Vは30万円ほど高い。
マツダ CX-5に2.5リッターガソリンエンジンを搭載した最上級の25S・Lパッケージは、本革シートなどを備えて2WDが298万6200円になる。CX-5と比べても、CR-Vは約20万円高い。
トヨタ ハリアーは、動力性能は下がるが2リッターのノーマルエンジンを積んだエレガンスが294万9480円で、ディーラーオプションのカーナビを加えて325万円前後になる。つまり新型CR-Vの価格はハリアーに近いが、動力性能の違いを考えると、CR-Vが少し割安だろう。CX-5とハリアーの中間的な値付けだ。
3列シートの7人乗りと、2列シートの5人乗りで価格を比べると、7人乗りはEXの場合で19万1160円、EXマスターピースでは22万3560円高い。後者には本革シートが備わるため、3列シートの追加に伴う価格上昇も大きい。
SUVの2/3列シートの価格差は、エクストレイルが7万2360円、ランドクルーザープラドが15万4440円だから、新型CR-Vは価格の上乗せが大きい。新型CR-VはSUVながらも3列目の居住性に配慮したので選ぶ価値が生じるが、価格は割高になってしまう。
EXマスターピースとEXとの価格差は、5人乗りが36万720円、7人乗りは39万3120円に増える。本革シートが装着されるから、7人乗りは価格差が増えた。それでもEXマスターピースには11万円前後に価格換算される電動パノラミックサンルーフも含まれ、36~39万円の価格差であれば、買い得ではないが割高ともいえない。
2WDと4WDの価格差は21万6000円で、これは妥当な範囲に収まる。4WDの最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)は、1.5リッターターボが210mm、ハイブリッドが200mmだから、悪路のデコボコを乗り越えやすい。4WDを積極的に選びたい。
新型CR-V(ハイブリッドモデル)の価格をライバルと比較
ハイブリッドの価格はEXの2WDが378万4320円だ。1.5リッターターボとの差額は、ハイブリッドの付加的な機能を含めて55万4040円になる。ステップワゴンの場合は、装備の違いを補正して実質47万円だ。ライバル車同士の価格競争も激しく、ハイブリッドを少し割安にした。オデッセイは2.4リッターエンジン搭載車との比較で58万円ほど高い。新型CR-Vのハイブリッドは、これに近い価格設定だ。
実用燃費をJC08モードの85%、レギュラーガソリンの価格を1リッター当たり145円で計算すると、55万4040円の価格差を燃料代の節約で取り戻せるのは、13万kmを走った頃だ。ただし減税額も異なるので、もう少し短い距離で取り戻せる。ハイブリッドでは、動力性能が増えてエンジンノイズが小さくなるため、走りの質も向上する。この点を考えると、予算が許せばハイブリッドは選ぶ価値が高い。
ハイブリッドの価格もハリアーに近い。ハリアーハイブリッドエレガンスは、後輪をモーターで駆動する4WDを備えて377万4600円だ。カーナビを加えて400万円前後になる。新型CR-VハイブリッドEXの4WDも400万320円だ。以上のように新型CR-Vハイブリッドの価格は、ハリアーと同程度と考えれば良い。
“一度日本を見限って廃止したクルマ”CR-Vの未来や如何に
新型CR-Vは3列目シートの居住性にも配慮され、全幅は少しワイドだが、実用的なSUVに仕上げた。1.5リッターターボ、ハイブリッドともに動力性能が優れ、後者は燃費効率も満足できる。
それだけに価格の割高感が惜しい。3列目シートの単価なども含めて、もう少し割安にすると良い。価格はハリアーに近いが、このSUVはトヨペット店の主力とすべく、国内市場を重視して開発されたから質感の見せ方が巧みだ。
その点で新型CR-Vは、海外市場を重視した実用的なミドルサイズSUVだから、20万円少々安くするとバランスが取れる。1.5リッターターボのEX・2WD(5人乗り)が299万円くらいだ。カーナビや18インチアルミホイールが装着されてこの価格なら、相応に注目される。ステップワゴンスパーダホンダセンシング(285万2280円)に、カーナビなどを加えて300万円少々だから、子育てを終えたユーザーがミニバンから乗り替える時も20万円安いと都合が良い。
新型CR-Vの1ヶ月の販売目標は1200台で、先代型の販売実績を大幅に上まわるが、新型車としてはもう少し意欲が欲しい。価格を割安に抑えて、1ヶ月に1800台程度(今のCX-5が約1600台)はねらってもらいたい。
CR-Vは一度日本を見限って廃止したクルマだ。頭を下げて「改めてお願いします」と戻ってくるなら、価格を含めて相応に良心的な態度を見せるべきだ。日本のユーザーは、そんなに甘くない。
[TEXT:渡辺 陽一郎/PHOTO:オートックワン編集部・本田技研工業株式会社]
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