【比較】SLK・Z4・フェアレディZロードスターを徹底比較 ~ロングドライブも快適な上級オープンモデル~(2/4)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:和田清志
フロントマスクとボディサイドのデザインをバランス良く仕上げている
メルセデス・ベンツの顔立ちには、フロントグリルの上部に小さなエンブレムが立ち上がる古典的なエレガンスマスクと、グリル内部に大きなスリー・ポインテッド・スターを備えたアバンギャルドマスクの2種類がある。
基本はあくまでもエレガンスマスクだが、今の日本で売られるEクラスやCクラスを見ると、E250、C180といった最廉価グレード以外、すべてアバンギャルドマスクだ。Sクラスがエレガンスマスクを基本としたのは救いだが、E/Cクラスについては、伝統と格式のあるメルセデス・ベンツの造形として疑問を感じる。
実際、上級グレードのエレガンスマスクを希望するユーザーも相応にいて、お金をかけて変更するケースもあるほどだ。
その点、SLKのアバンギャルドマスクは正真正銘といえるだろう。このマスクは先の項目で触れた初代の300SL、190SLから始まり、その後のクーペモデルへと受け継がれていったということもあり、今のSLKが装着するのも筋が通る。近年のメルセデス・ベンツの世界戦略によってアバンギャルドマスクを幅広く採用し始めたセダン系とは意味合いが違う。
見栄えの面でもバランスが良い。セダンにこのマスクを付けるとコワモテの印象になるが、クーペはボディサイドも鋭角的なデザインなので、素直にスポーツカーの造形として受け取られる。
全幅は1845mmとワイドで、正面から見るとかなり迫力があるが、全長は4145mmと短い。少し角度を付けて眺めれば、尊大なイメージはない。メルセデス・ベンツでありながら、威張り感を抑えたところもSLKの魅力だ。
試乗したグレードはSLK200で、直列4気筒の1.8リッターエンジンにターボを装着する。トランスミッションは6速MT仕様となり、趣味性の感じられる仕様に仕上がっている。
後輪駆動を象徴するような伸びやかで美しいデザイン
BMWの全体的な特徴は、縦置きエンジンの後輪駆動車を象徴するような「ロングノーズ・ショートデッキ」の外観デザインだ。ボンネットが長くトランクフードは短い。
今のセダンの3シリーズの大半は小型で短い直列4気筒エンジンを搭載し、直列6気筒はアクティブハイブリッド3のみ。それでも外観からは、直列6気筒の雰囲気を感じる。
となれば、Z4こそがBMWの本命かも知れない。ボディを横方向から眺めると、ボンネットがとても長いからだ。
デザインも絶妙だ。近づいて見ると複数のラインが入っていて複雑な造形だが、少し離れるとそれが適度な陰影に感じられる。
そして一見すると筋肉質だが、ボディ全体の見栄えは女性的だ。ボンネットが低く抑えられ、脚の長いスラリとした大人の女性を感じさせる。AKB48が好きな若い読者諸君には早いかも知れないが、オジサン世代になるとこの魅力が分かると思う。
そして先の項目で触れたBMW 507のイメージとも重なる。ボディの側面は、サイドウインドーの下端が後方へ直線的に持ち上がるウェッジシェイプではない。フロントフェンダーで持ち上がったベルトラインが、ドアのあたりで少し下がり、再びリアフェンダーで持ち上がるように見せている。個人的にはフロントマスクをもう少し柔和に仕上げて良いと思うが(507が好きだし…)、躍動的と上品さを上手に両立させた。
試乗したグレードはZ4 sドライブ35is。直列6気筒の3リッターエンジンにターボを装着し、最高出力は340馬力(5900回転)、最大トルクは45.9kg-m(1500回転)に達する。しかもアクセルペダルを瞬時に深く踏み込むと、オーバーブースト機能によって51kg-mのトルクを発生させる機能も備わる。
歴代モデルがアメリカ市場に焦点を合わせて開発され、今でもその傾向が残る
メルセデス・ベンツ SLKとBMW Z4は電動開閉式のハードトップを装着するが、日産 フェアレディZは、固定されたルーフを持つクーペが基本だ。今回取り上げるロードスターは派生モデルで、電動開閉式のソフトトップを備える。
この違いは初代フェアレディZの生い立ちとも関係する。「Z」の名称が付く前のフェアレディは、ソフトトップのオープンボディが基本だった。なので初代Zも企画段階ではオープン、クーペ、リアシートを備えた2by2、ワゴンまで検討された。このうち、北米に輸出した時のセキュリティ、当時のソフトトップの製造精度などから、固定式のクーペを選んだ経緯がある。
そして北米で発売すると、カッコイイ外観、直列6気筒エンジン、日本車ならではの低価格で大ヒット。さらに選択肢を充実させるべく、一度は廃案になった2by2を5年後に市販した。今の日産は世界販売台数の85%以上を海外で売るが、フェアレディZは海外向け商品の先駆けで、常に北米を見ながら発展してきた。
この傾向は1989年に発売された4代目まで色濃く続き、オープンモデルは3代目までTバールーフだった。4代目でソフトトップを設定したが、あまり売れていない。
大幅に路線を変えたのは先代型の5代目で、リアシートを備えた2by2は廃止。2シーター専用に原点回帰させた。このモデルからソフトトップのロードスターも人気を高めている。
なので先代型とコンセプトを踏襲した現行型は、4代目までとは指向性が異なるが、SLKやZ4に比べると依然としてアメリカ指向が強い。ボディ全体の塊感が強調され、強大なパワーで突っ走るイメージだ
エンジンはV型6気筒の3.7リッターを搭載。小排気量ターボが全盛の時代背景を考えると、古典的な印象を与えるが、そこもフェアレディZらしさだろう。
デザイン・スペックの総評
スポーツカーというものは、運転の楽しさや内外装が大切で、その車種の生い立ち、メーカーのブランド性も問われるジャンルであろう。
ここで取り上げた3車種は、いずれも長い伝統を持つ。SLKとZ4は、その車種だけを見れば歴史は浅いが、前述のように初代190SL、507を思わせる。デザインも現行型だけを見たのでは判断できない。
欧州車のSLKとZ4、日本車のフェアレディZで明確に異なるのは、メーカーの統一された表現があるか否かだろう。SLKのスリー・ポインテッド・スターはメルセデス・ベンツの、Z4のキドニーグリルはBMWの象徴で、ほかの車種とも共通化される。
しかしフェアレディZとセレナやマーチは共通性が乏しい。新型スカイラインはインフィニティのエンブレムを掲げるほどだ。
このあたりは車好きとしては寂しいが、日本車の伝統でもある。共通性に縛られず、複数のブランドを設けた多角な戦略により、今日の繁栄が築けた。2013年の世界販売台数は、メルセデス・ベンツが146万台、BMWはミニとロールスロイスを加えて196万台、日産は510万台。メーカーの生き方の違いが、スポーツカーのデザインにも影響を与えている。
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