BMW 新型8シリーズクーペ 試乗|“おしゃれクーペ”として乗るだけではもったいなさ過ぎる!? M850i xDriveの実力を試す

BMW 新型8シリーズクーペの実力とは

BMWで一番大きな数字を持つ8シリーズ。その2ドアクーペモデルが日本上陸を果たした。しかも試乗したのは、580psのV8ツインターボエンジンを搭載する「M850i xDrive Coupe」である。

数字がでかけりゃ、とにかく偉い!? いやいや、今回の場合は必ずしもそうではない。確かにBMWはグレードの数が増えるほどにその値段とステータスが上がっていく。

けれど8シリーズの場合は、その数字が階級の高さを表すというよりも、むしろ「既存の枠からひとつ飛び抜けた存在」を表している。

今回の試乗で、私はそう感じた。

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8シリーズクーペはBMWでもっとも美しさと優雅さを兼ね備えたモデル

現在のBMWはかつての「厳めしさ」よりも、どちらかといえば「エレガントさ」にキャラクターを寄せている傾向にはあるのだが、それでも8シリーズはBMWいち美しく、優雅だ。そして決して己を大げさには誇示しない、アンダーステートメント感が強い。

果たしてその控えめさにアーリーアダプターやお金持ちが飛びつくのか? もっと押し出し強く行かないと、初代8シリーズのように消えちゃわないか?

そんな心配もなくはないのだが、一方でこの能力を誇示しない控えめさこそが、8シリーズ クーペの本質的であり魅力なのだ。

そしてこうした本質は、見た目以上に走りの質感で表現されている。そこが何ともBMWらしいと私は思う。

“エレガンス”とは裏腹なパワートレイン

エンジンの排気量がいまどき4394ccもあり、さらにそのV8ユニットは、ツインターボで武装されている。その最高出力は昨今のハイパワー競争から見れば控えめな530ps/5500rpm。

しかし750Nmというばかげた最大トルクは1700pmという低い回転域から解き放たれ、4600rpmまでこれを保ち続けるから、その走りに退屈はない。

全開時の排気音は、正直無粋。「ブーッ、ドゴドゴドゴッ」と唸るようなV8ユニットの排気干渉にはエレガンスのかけらもなく、かつてのシルキーシックス(BMWの直列6気筒エンジン)や、ウルトラシルキーなV12時代とは比べものにならない。

しかし530psのパワーはM3やM4のようにパーンと跳ね上がることがなく、低回転域から分厚いトルクで押し上げるように発揮されて行くから、恐怖感なくアクセルを踏み込むことができる。

これはまさに大排気量エンジンをツインターボ化したことによる、緻密な過給圧制御がもたらした恩恵だ。

分厚いトルクの恩恵により、恐怖感なくアクセルを踏める

そしてこのV8エンジンを無粋と感じながらも嫌いになれなかったのは、それがレーシングBMWである「M6 GT3」のサウンドやバイブレーション、そしてパワー特性と酷似していたからだと思う。

トルキーながらも回転上昇感が滑らかで、パーシャルスロットル時の追従性が高い。そのターボサウンドは色気こそないが低音重視で、同じV8でも先代M3のように乗り手の心理を追い込まない。

だから蛮勇を振り絞るというよりは、積極的にそのエンジンフィールを楽しむことができるのだ。

荷重をかけるほどに見えてくる、BMWの“真骨頂”

こうしたエンジンに対して、シャシーも極めて懐が深い。

まずはワイドなトレッドと長いホイールベースが走りを支える。ハンドルを切ればイージーにノーズが入り、コーナーではきちんと姿勢が安定する。

切るほどに接地感が高まるステアリングフィールの明確さと自然さはBMWの真骨頂。このときリアサスは安定し過ぎずしかし不安定にはならず、絶妙な伸び方をする。

タイヤに荷重を掛ければ掛けるほどその走りは極まって行き、それまでの大人びた走りがウソのようにピュアなものとなる。フレンドリーかつ紳士的だけれど根はどう猛、というキャラクターは正に“M”の血である。

その影ではアクティブステアリングや後輪操舵、可変式のスタビライザー、可変ダンパー等々がめまぐるしく制御を行っているのだろうが、運転している限りそこに違和感を感じることはない。FRの走りが染みついているBMWだからこそ、制御パラメーターにもそれを盛り込めるのだと思う。

そしてアクセルを踏み込めば、コーナリングフォースは縦方向のトラクションへと確実に変換されて行く。ゆっくり走らせてもその上質なGの移り変わりを楽しめるところに、8シリーズの贅沢さがある。

ボディの良さも走りには効いている。

7シリーズで軽量化に積極利用されたカーボン・コアボディは、もちろん本来の目的も果たしながら8シリーズでは、センタートンネル部分の剛性向上に役立てられたという。

現行7シリーズが誕生してからBMWのボディは重厚さよりも軽やかさが際立つようになったが、確かにM850iには、それだけでなく一本の芯が通っている感じがする。

そして「xDrive」の制御も大きく貢献しているはずだ。“はず”だというのは私自身、このM850iには全く4WDを感じないから。強いて言えば“曲がり過ぎない”ところが4WDライクかもしれないが、基本的にターンインでもターンアウトでも、アンダーステアを感じないのである。

唯一の問題は“クセがない” 日本で乗るにはもったいない?

M850iに唯一問題を挙げるとすれば、それはあまり“クセ”がないことだろうか。

特に車輌の個性を決めるダンパーの味付けは、Z4同様に良い意味で存在感がなく、タイヤのキャラクターを、そのままステアリングへと反映する。

ボディサイズこそ大きいが、ルックスも前述の通りアンダーステイトメント系。つまりアウトバーンもない日本でM850iは、あまりに自然で乗り心地が良いだけの高級クーペになりかねない。

それで十分なのかもしれないが、M850iをお洒落クーペとして乗るだけではもったいなさ過ぎる、と私は思う。

[筆者:山田 弘樹/撮影:和田 清志]

新型8シリーズクーペ M850i xDrive 主要スペック

BMW 新型8シリーズクーペ M850i xDrive 主要スペック

全長

4855mm

全幅

1900mm

全高

1345mm

ホイールベース

2820mm

乗車定員

4名

車両重量

1990kg

エンジン種類

V型8気筒DOHCガソリン

駆動方式

4WD

排気量

4394cc

エンジン最高出力

390kW(530PS)/5500rpm

エンジン最大トルク

750N・m(76.5kg・m)/1800~4600rpm

トランスミッション

電子油圧制御式8速AT

メーカー希望小売価格(消費税込)

17,140,000円

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山田 弘樹
筆者山田 弘樹

自動車雑誌編集者としてキャリアをスタート。輸入車雑誌 副編集長、アルファ・ロメオ専門誌編集長等を経て、フリーランスのモータージャーナリストに。レース参戦なども積極的に行い、走りに対する評価に定評がある。AJAJ会員。カーオブザイヤー選考委員。記事一覧を見る

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