アウディ R8 V10 plus試乗|フラッグシップスポーツは先端技術の塊(3/4)
- 筆者: 山田 弘樹
- カメラマン:小林 岳夫
最後の美酒”大排気量自然吸気エンジン”の搭載を貫くこと
そんなR8がスポーツカーファンを唸らせているポイントは、面白いことに超高性能な自然吸気のV10エンジンを搭載していることである。ライバルたちが環境性能の理由からこぞってターボ化を推し進めるなかで、大排気量NAエンジン搭載を貫く姿勢には「いつまでやるの?」という興味をそそられるし、実際このV10には「最後の美酒」と言える豊かで鋭い味わいがある。
彼らがこのエンジンを作り続ける影にはきっと電動化があったのだろう。R8をダウンサイジングターボ化する前にEV化を実現して、来るべき未来に向けて緩やかにスイッチして行こうとしていたのではないかと思う。
ともあれこのユニットもダウンサイジングターボに負けない立派な低中速トルク型であり、実用域ではその排気量を活かしてエンジン回転を跳ね上げずとも、常識的な走りを常識的な音量でこなすことができる。
そしてスクランブルボタンをひと押しすれば、その強大なトルク(560Nm!)を使って、610psの最高出力が発揮される8250回転まで一気にエンジンを回しきる。
そのフィーリングは超高回転におけるパワーの追求のみを狙った、前時代的な快楽とはほど遠い。しかしバルブやカムといった動弁系が規則正しく回り、シリンダーの爆発が感じ取れるようなアウディらしい精密感がドッと後ろから押し寄せてくる。現代的なレーシングカーのエンジンフィールだ。これだけどう猛で高品質なV10エンジンを、普通に走らせることができることには本当に脱帽する。
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