アウディ R8 5.2 FSIクワトロ 試乗レポート(3/3)
- 筆者: 松田 秀士
- カメラマン:オートックワン編集部
レーシングドライバーから見た、R8 V10のポテンシャルの高さ
私は、スーパーGTでガヤルドのステアリングを握る身だからとても興味が湧く。
コースインして1コーナーをクリアし、高速の左Aコーナーにアプローチした途端、R8 V10はこれまでのアウディ・クワトロシステムとは思えない挙動を示した。
ステアリングの切れ角に、忠実にフロントタイヤが切り込む。そしてリヤタイヤは、スライドを始めスタビリティコントロールシステムが作動する。
他のアウディモデルならリヤを軸にアンダーステアとなり、それを収めるためにスタビリティコントロールが作動するもの。それ以外は何も起こらない、超安定主義なのだ。そんな操縦性が、サーキット走行をつまらなくしていたのも事実。
しかし、R8 V10はそれとは真逆。
まるでMRマシンのようなアジリティ(回頭性)を持っている。
それもそのはずで、R8 V10のクワトロシステムの前後トルク配分は通常15:85で、最大でも30:70をリミットとしている。
つまり、4WDの常識的な数値である50:50にはならず、常にリヤ寄りな駆動配分とすることで、スポーツカーらしいハンドリングに仕上げている。
スタビリティコントロールを完全にOFFにして走ってみたが、アクセルでクルマの向きを変えるドライビングが駆使でき、レーシーな走りにもよく応えてくれる。それでいて、デイリーユースも可能な優しさを持っているのだ。
実際、サスペンションはこの手のスポーツにしては驚くほどよく動き、乗り心地もマイルド。
それを可能にしているのがオプションのマグネチックライドコントロール(磁性体ダンパー)だ。
スポーツとノーマルの2種類のモードが選べ、瞬時にして変化する。
可変ダンパーの中ではトップクラスの性能を持っている。
価格とパフォーマンス性能のバランス
これまでのR8は、ドライサンプ方式の4.2L V8エンジンの1モデル。
そして、今回追加されたV10は同じくドライサンプ方式を採用する5.2Lだ。
他に、V10エンジンはS6(5.0L)とRS6(5.0L+ツインターボ)にも搭載されるが、ドライサンプ方式を採用するのはRS6とR8だけだ。
ドライサンプ方式のメリットは、サーキットなどの高速コーナリングでオイルの片寄りを起こさないことと、エンジン搭載位置を低くできることだ。
さて、R8 V10の価格は1,994万円。
0-100km/h加速が3.9秒ということは、ポルシェ ターボと同じ性能で、フェラーリF430よりも0.1秒速く、メルセデスSL600よりも0.6秒速い。
ライバルは2,000万円を越える価格帯にあるので、このセグメントではある意味リーズナブルなモデルといえるだろう。
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