アウディ S1 海外試乗レポート／桂伸一(2/3)

氷上・雪上からドライ路面まで・・・冬の北欧でS1の性能を堪能し尽くす！

S1の試乗に向かった先はスウェーデン中部、冬期スポーツのメッカ、エステルスンド。もちろん目的は雪上、氷上の走破性能の検証。ところが到着した日の夕方こそ吹雪いたが、すでに目的地までの走行は終了。翌日は朝から快晴！！

この状況が数週間続いていたため、雪上も氷上も過去の話。アスファルト路面を走行中、雪を見つけると脇道にそれて雪上をグイグイ進む走破性の一端を確認する。

変更したサスペンションは、フロントが、ピボットベアリングの配置を変え、旋回中の前輪が路面に対して常に正確に接地させることで、ステアリングレスポンスとニュートラル特性を高める効果。

リアは4リンクとして、クワトロ4WDの強い駆動トルクの入力に効く。特にトレーリングリンクが加速と制動の前後方向の入力を吸収、ホイールの位置決めを確かにしながら弾力性があるため快適な乗り心地にも効く。他の3つのウイッシュボーンは横方向の入力に対してガンとして踏ん張る。ここでも変化する路面、加減速、横Gに対して後輪を垂直に接地し、挙動を安定させる効果がある。

最新のハルデックス5はユニットの軽量化と伝達レスポンスを高めている。その威力は、乗員が滑りを感じるよりも先に駆動力で押し出され、結果、滑りを感じないまま、何事もなく走行するドライバーは多いかもしれない。

イマドキ珍しい6速MTを搭載

ま、ともかくクラッチをミートした瞬間から！？・・このモンスターは小気味良く動き回る。言い忘れたが、S1は今どき潔過ぎる6MTだ。速さ、だけの話しをすればDSG他のツインクラッチがミス無く確実で速いが、欧州にはMT文化がまだまだ残る。したがって久しぶりに左足の感覚でクラッチを操作するが、ラフにドンとミートしても、どこにも曲げ、撓み等の弾性感的逃げがない。Sを名乗るだけに、各部剛性の高さはすべてが走行性能につながる。

ステア操作に対してクイックに反応するフロントだが、重要な事は応答性ではなく、旋回中の前輪の接地性の高さで、常に安定したグリップ感が得られる点がいい。舵角に応じてノーズがインを向き、追従するリアがこれも強い横Gを立ち上げて路面を捉えて離さない。グリップの変化にはクワトロ4WDが瞬時に駆動力を適正な配分で与えて、立て直してしまう。

本来、雪上の特設リンクは、雪がシャーベット状に残る程度。車輌安定装置のESPをOFFにして、無謀にアクセルを踏み込むと、アンダーステアもオーバーステアにも変化するのだが、駆動力を与えることで乱れた姿勢を前から引っ張られるように立ち直る特性に驚く。

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