スバルの四駆を“雪上”で徹底解剖!レガシィB4・インプレッサ・フォレスターなど「ACT-4」編(1/2)
- 筆者: マリオ 高野
- カメラマン:島村栄二/富士重工業
ひとつの車種に最多で4種類の四輪駆動システムを設定
スバルは1972年に量産乗用車の四輪駆動車を世界で初めて発売したことで有名ですが、1991年に「アルシオーネSVX」を発売してからは、“ひとつの車種に最多で4種類の四輪駆動システムを設定”するようになった特異なメーカーです。同じ車種なのに、ターボとNAのエンジンの違いやATとMTのミッション違いでそれぞれ搭載する四輪駆動システムを使い分けているメーカーはスバルの他にありません。普通に考えると、生産効率やコストを重視して総合力に優れた汎用性の高いシステムに一本化したくなるところですが、スバルは販売車種が少ないにもかかわらず4種類もの四輪駆動システムを長年設定し続けてきました。
その理由は、グレードやパワートレーンの仕様ごとにユーザーの嗜好や駆動力に対する要求内容が大きく異なると考えてきたからです。
簡単に大別すると、
「ターボエンジンのMT車」=「ガチでスポーツ走行を楽しみたい人」
「ターボエンジンのAT車」=「高性能エンジンを気軽に楽しみたい人」
「NAエンジンのAT車」=「幅広い層に対応」
「実用車でNAエンジンのMT車」=「降雪地域での需要、および一部のマニア向け」
といった感じで、各グレード/各仕様ごとの想定ユーザーに最適な四輪駆動システムを搭載。
一言で四輪駆動システムといっても、駆動配分の仕方ひとつでクルマの走りや乗り味は大きく変わるため、スバルは様々な需要に対応できる個性豊かな機能をもつ四輪駆動システムをいくつも設定し、乗用車向けAWD(四輪駆動システム)のパイオニアとして幅広い用途に応えてきたのです。
4種類すべてに共通するのは「どんな路面状況でも危険な状態に陥らないこと(アクティブセイフティ)」という安全思想が基本にあり、4種類すべてのシステムを「常に四輪を駆動する〝完全なフルタイムAWD〟」としています。
通常時は前輪、または後輪のみを駆動し、その駆動輪が空転してから四輪駆動に切り替わるタイプのシステムを「オンデマンド式」と呼び、スバル以外のメーカーでは、乗用モデルの多くにこれを採用。ドライ路面などの通常時は二輪駆動とすることで省燃費化や低振動・低ノイズ化をはかれるメリットがあります。 センサー感知や駆動力制御の技術が進んだ今では、駆動輪が滑った瞬間(あるいは滑ることが予知された瞬間)から四輪駆動状態となるなど高性能化が顕著になりました。
スポーツカーではポルシェが「911カレラ4」で古くから採用し、極限的な運動性能に達しています。
また、オンデマンド式の中でも滑りやすい路面での発進時などに、補助的に四輪駆動状態となる簡素化したシステムを「生活四駆」と呼び、小型車や低価格車、またはハイブリッド車で電気モーターが駆動を補助するタイプのクルマに採用されます。
これらのオンデマンド式も四輪駆動システムとして正しい姿のひとつであることは間違いありませんが、四輪駆動車の販売比率が異様に高いスバルは、四輪駆動システムの開発と生産の実績がケタ違いに大きいため、フリクションロスや振動・ノイズ、高重量化などの四輪駆動システムのデメリットを最小限に抑えるノウハウが豊富。そのため、二輪駆動から四輪駆動へ切り替わる瞬間のタイムラグや、走行中に駆動方式が切り替わることで生じる挙動の変化などの危険リスクを徹底的に排除できる“常時四輪駆動”がベストであると考えているのです。
そんなスバルが展開する4種類の四輪駆動システムの性能と特性の違いについて、たいへんわかりやすく体感できる雪上試乗会が開催されたので、そこでの印象を元に低μ路上であらわとなるそれぞれのシステムの個性や機能の違いを紹介しましょう。
試乗会場として用意されたのは、真冬の北海道・新千歳モーターランド内の特設コースと周辺の一般道で、圧雪路、アイスバーン登坂、氷上、ドライ&雪氷ミックスなど、様々な低μ路でスバル各車の乗り味と各四輪駆動システムを試すことができました。
残念ながら、時間的な制約により四輪駆動システムの中で「ビスカスLSD付きセンターデフ」を搭載する車両は用意されなかったのですが、これは筆者マリオ高野の個人所有車(インプレッサG4 1.6i/初代インプレッサWRX)で雪上/氷上ドライブを経験し尽くしているので、その日常での印象をお伝えします。
タイヤは、全車ともブリヂストンのスタッドレスタイヤ「ブリザックVRX」を装着していました。
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