今、改めて考える「トヨタ問題」/河村康彦(2/2)

今、改めて考える「トヨタ問題」/河村康彦
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やってはいけなかった全額負担サービス

ただし、リコールを発表する以前にプリウスのブレーキ・プログラムを一部変更した事に対する「リコール隠しではないのか?」という疑問に対しては、自分はいわゆる“アップデート”に当たる事象と考える。

「仕様および装備は予告なく変更する事があります」というのはカタログにも断り書きが表記されている事柄。トヨタでは、今後はこうした細かなリファインの内容も逐一国交省に報告を入れると発表したが、それが手続きの煩雑化に繋がり、開発者がその面倒を避けるために細かな改良の実施に対してむしろ消極的になるという可能性は、今後少々危惧をされるポイントだ。

ところでトヨタは、今回の全米でのリコール対象車の保有者に、修理期間中のタクシー代やレンタカー代を全額負担すると発表した。恐らくこれも、日本流儀の“誠意の見せ方”であろうと理解は出来る。

が、個人的にはそれは「やってはいけなかった事柄」ではないかと考える。何故ならば、これによって「リコール修理に伴うタクシー代やレンタカー代はメーカー負担」という前例が作られた事になるからだ。

トヨタが“元気な日本車”を牽引して欲しい

となると、もはや事はトヨタだけの問題では済まず、他メーカーでの今後のリコールにも同様の要求が起きるのは必至だろう。

もちろん、日本では「アメリカでは無料なのに負担しないのか」という声が挙がりかねない。今回の判断は、そのあたりの影響までを踏まえての事だったのであろうか?

そして何よりも、こうしたさらなる負担増が生まれる事を回避するために、社内上層部に報告が至る前の“現場”段階で、新たな『リコール隠し』の温床となってしまう可能性が恐ろしい。

というわけで、どうもこのあたりにもここに至るまでと同様の「付け焼刃的な判断」の香りが感じられてしまうのは自分だけだろうか。

冒頭に述べたように、事はいまだ進行形だ。

率直に言って、ここしばらくは収まりそうにないし、今後は訴訟や裁判といった面倒なハナシも出てくるだろう。まるで他人の弱みをあら捜しするように訴えを起こす、というのはもはやアメリカの“恥部”のひとつに等しいと個人的には思うのだが、トヨタがそうした国で商売を行い、巨額の利益を得て来た事も事実であるのだ。

排ガス規制に燃費規制と、これまで厳しい試練に打たれるたびに国際競争力を増してきたのが日本の自動車産業。トヨタには、是非とも今回の一件を糧として、品質とテクノロジーで世界のライバルを圧倒する“元気な日本車”を牽引する商品を世に送り出して欲しいと思う。

それが、今回の件で漫然とした不安を抱かされるに至ったトヨタ車ユーザーに対しても、最高の「償い」という事になるのではないだろうか。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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