VW排ガス不正問題の真相、問題の根底には「世界一」へのこだわりか(2/2)
- 筆者: 清水 和夫
- カメラマン:VW AG/AUDI AG
アメリカの大学調査により発覚
アメリカでは販売から何年か後に排ガスの抜き打ちテストを実施する。テストは室内で、車体が動かないように固定し、ローラーの上にタイヤを乗せた状態で、決められたモード走行にて行う。
タイヤが回ってもステアリングが動かない状態が続くと、コンピューターは室内試験だと認識し、ディフィート・デバイスが起動。エンジンのEGR(排ガス還元装置)を使って大量の排ガスをシリンダーに戻し、燃焼温度を下げる。結果的にNOxが低減して、規制値をクリアできるというわけだ。
今回の事態は、とある環境NPO団体がアメリカの大学に依頼し、実際の走行下での排ガスを調べたところ、VWのNOx排出量だけが最大40倍と異常な値を示したことで発覚した。対象となるモデルは2008年から2015年までのゴルフ、パサート、ジェッタ、ビートル、アウディA3の2リッター・ディーゼル車で、合計48万2000台に及ぶ。
NOxと燃費と性能のバランスを取るのが困難だったため、VWは厳しいアメリカの規制をクリアするために、やむなく違法なデバイスを使ったのだと思った。しかし、ドイツから続々とニュースが舞い込み、真相は意外な方向に発展していく。
問題のディーゼル車は約1100万台にも
10月1日時点の情報では、問題のディーゼル車は約1100万台に達する。アメリカで指摘されたのは48万台だが、欧州やアジアでもディフィート・デバイスが使われたらしい。
ドイツの報道によれば1100万台の内訳は欧州だけでVW乗用車が500万台、アウディ210万台、シュコダ120万台、セアト70万台、VW商用車180万台、残りは中国や韓国で市販されたものだという。
問題のディーゼル車はどの規制値を狙って開発されたのだろうか。欧州のユーロ5はアメリカの規制よりも厳しくなく、多くのメーカーがクリアしていた。それにも関わらず、VWだけがディフィート・デバイスを使用している。
ここからは想像だが、ディフィート・デバイスを使えば、燃費性能を犠牲にしないで済むし、複雑で高価な触媒にコストをかけないで済む。ディフィート・デバイスを使うことに慢性化し、罪の意識が薄れていたのではないか。当時の欧州では120g規制と言われるCO2規制の方が社会の大きな関心事であった。
法令遵守よりも世界一をかけた熾烈な販売台数の競争が原因?
「それにしても……」と日本メーカーのディーゼルを開発するエンジニアは首をかしげる。ユーロ5なら規制クリアはそれほど難しくない。制御プログラムを作っていたのはドイツのメガサプライヤーのボッシュ。VWとボッシュはディーゼル技術で世界をリードしていたはずだった。
それなのになぜこのような事態が起きたのか、未だに疑問が残る。ボッシュは不正プログラムを量産車に使うことは違法だと通告したと述べているが、ブランドへの信頼感の失墜は避けられない。
問題の根底には2000年以降の急速なグローバル化があるのではないか。トヨタもGMもホンダも、2000年代の10年に大リコールを体験した。法令遵守よりも世界一をかけた熾烈な販売台数の競争が原因なのかもしれない。
VWにはウミを流し、一日も早く元気なワーゲンに戻って欲しい。そのときはVWのディーゼル車を堂々と買いたいと思うのだ。
[Text:清水和夫]
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