トヨタ 新型ヴォクシーZS 試乗レポート|デビュー4年目のマイナーチェンジでどこが変わった!?(1/2)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:小林岳夫
日本でここまでミニバンが支持される理由とは
日本は「ミニバン大国」といわれ、海外メーカーの開発者は「なぜ日本ではミニバンがこんなに売れるのか?」と首を傾けるが、最近は売れ行きを下げた車種も多い。販売力の強いトヨタ車でも、背の低いウィッシュやアイシスは設計が古くなったこともあって販売台数が減った。好調に売れるのは、今ではトヨタ車に限らず背の高いボディにスライドドアを装着した典型的なミニバンに限られる。その意味で注目されるのが、トヨタヴォクシー/ノア/エスクァイアの3姉妹車だ。
5ナンバーサイズを基本にしたボディは混雑した街中でも運転がしやすく、全高が1800mmを超えるから車内は広い。エンジンはノーマルタイプとハイブリッドを用意するなど、好調に売れる条件をそろえた。その結果、2016年上半期(1~6月)の登録台数は、3姉妹車を合計すると9万525台に達する。この時期に最も多く売れたN-BOX(10万6231台/スラッシュとプラスを含む)、2位のプリウス(9万1246台/PHVとαを含む)に迫る台数だ。
>>トヨタ 新型ヴォクシーZS(2017年7月マイナーチェンジ)の詳細をフォトギャラリーでもチェックする
率直にいえば「大勢で乗車したり自転車を積むユーザーが、そんなに大勢いるのか?」「もっと背の低いクルマの方が、走りを含めてバランスが良いだろう」と思うが、ミニバンが好調に売れる背景には実用を超えた価値もある。
そのひとつがミニバン独特の外観だ。背が高いからフロントマスクにも厚みがあり、デザインの仕方次第で強いインパクトを持たせられる。ミニバンの実用性をさほど必要としないユーザーが、デザイン、車内の開放感、小部屋感覚などに魅力を感じて選ぶこともある。
このようなニーズも考慮に入れて、トヨタのヴォクシー/ノア/エスクァイアが2017年7月3日にマイナーチェンジを実施した。3車種ともフロントマスクに変更を加え、従来以上にコワモテな印象を強めている。詳細は「新型ヴォクシー/ノア/エスクァイアのマイナーチェンジ徹底解説」で述べているので、ここでは特にヴォクシーZSの運転感覚をお伝えしたい。
今回試乗した新型ヴォクシーZSはエアロパーツや専用のフロントマスクなどを付加して外観上の迫力を増した仕様で、内装も専用のシート地などを採用する。試乗車のエンジンは直列4気筒2リッターのノーマルタイプだ。
■新型ヴォクシー/ノア/エスクァイアのマイナーチェンジを徹底解説!ガソリンとハイブリッド、どっちが買い!?[2017/7/12]
新型ヴォクシーのボディ剛性を高めるためにとった意外な秘策
まずは、新型ヴォクシーZSのフロントマスクを眺めてみる。マイナーチェンジの変化度は新型ノアの方が大きくて違いも分かりやすいが、ヴォクシーZSもバンパー部分に設けられた開口部の台形デザインが強調された。従来型に比べると迫力を増している。LEDヘッドランプはさらに薄目になり、下側にはスリットの入ったブラックの樹脂パーツが装着されて、細長いメッキの装飾も加えた。このあたりは造形が繁雑で、手を加えすぎた印象も受ける。クルマに限らずデザインは最初の段階で完成されているから、変化させると次第にバランスを崩すのは否めない。
いっぽう、マイナーチェンジでの走りに関する変更では、ボディ剛性を高めたことが挙げられる。ただし、スポット溶接の箇所を増やしたり、骨格部分に補強を加えることはしていない。具体的には、フロントウィンドウとバックドアガラスに、高剛性ガラス接着剤を使うことで剛性を高めている。ヴォクシーなど背の高いミニバンは窓面積も広い。それだけにボディとガラスの接合を強固にすることで、車体の捩れを抑える効果が得られるのだ。足まわりはショックアブソーバーの減衰力を見直して、内部に装着されるバルブの剛性を高めた。新型ヴォクシーZSのタイヤサイズは、標準仕様の15インチに対し径を拡大した16インチタイヤ(205/60R16)を採用する。ちなみに試乗車の銘柄はトーヨー プロクセスJ54であった。指定空気圧は前後輪ともに240kPaだ。今は指定空気圧を高めて転がり抵抗を抑え、燃費を向上させる傾向が見られるが、240kPaはミニバンとして特に高い数値ではない。
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