トヨタ 新型 クラウン ハイブリッド[14代目・2012-2013年モデル]公道試乗レポート/渡辺陽一郎(2/3)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:和田清志
4気筒であることを実感させない静粛性と動力性能
新型クラウンハイブリッドは、穏やかに発進させるとエンジンは始動せず、モーター駆動のみになる。この段階は電気自動車と同じだから、きわめて静か。使われるモーターは1KMという型式で、先代のクラウン ハイブリッドや「レクサス GS450h」と同じだ。アクセルペダルの踏み込み量を20%程度に抑えてスルスルと加速すれば、ハイブリッドらしさを味わえる。
走行状況によっても変わるが、時速40km前後でエンジンが始動。この時は少しザワザワした4気筒の振動を感じた。それでも「プリウス」、「SAI」、「レクサス HS250h」に比べてエンジンの始動は分かりにくい。周囲が騒がしい時は、まったく気付かないこともあった。
巡航状態に移るとエンジンの回転は下がり、軽くアクセルペダルを踏み増した時は、反応の素早いモーターが駆動力を支援する。ほかのハイブリッドと同様、これもノイズを抑える上で効果的だ。
登坂路でアクセルを踏み込んだ時は、モーターが出力を高めると同時にエンジンの回転も上昇。4気筒であることを意識したが、平坦路では6気筒との違いをほとんど感じない。
このあたりはユーザーによって評価が変わるが、4気筒モデルとしてはとても快適だと思う。今ではドイツの「アウディA6」も直列4気筒の2リッターターボをベースにしたハイブリッドを用意するが、アクセルペダルを少し踏み増しただけでも、しばしば4気筒を感じさせる。クラウンのハイブリッドは、特に静粛性という意味ではV型6気筒に近い。
また、動力性能を従来のガソリンエンジンに当てはめれば、これは3リッタークラスに相当するだろう(実際、先代クラウン ロイヤルにあった3.0リッターモデルは廃止された)。巡航中に緩い加速をする時など、前述のモーターの支援もあって、実用回転域の駆動力を高めた扱いやすいエンジンを連想させる。
快適性を取るならやはりロイヤルサルーン
乗り心地と走行安定性は、ロイヤルとアスリート、さらに装着されるタイヤによっても異なる。
快適性を重視するならロイヤルサルーン。路面のデコボコを上手に吸収して、いかにもクラウンらしい乗り心地になる。操舵に対する反応は穏やかで、路面の感触が分かりやすいタイプではないが、後輪の接地性を含めて走行安定性に不満はない。試乗車が履いていたタイヤは16インチ(215/60R16)のミシュラン・プライマシーLC。指定空気圧は、転がり抵抗の低減を目的に250kPaと高めだ。それでもハイブリッドは車両重量が1650kgに達するためか、硬さはなかった。
違いを感じたのは2.5リッターのノーマルエンジンを積んだロイヤルサルーン。車両重量は1560kgでハイブリッドよりも90kgほど軽い。16インチタイヤはブリヂストン・トランザER33で、サイズと空気圧はハイブリッドと同じだが、ややザラザラした粗さを伴った。これが同じノーマルエンジン仕様でも、17インチ(215/55R17)のミシュラン・プライマシーLCになると、指定空気圧が230kPaに下がって、硬めではあるがスッキリした乗り味になる。
250kPaの16インチタイヤが標準装着、230kPaの17インチはオプションという設定を含め、ノーマル/ハイブリッドともに組み合わせは共通だが、それぞれ乗り心地が微妙に違う。快適性が重視される車種だから、購入時には、可能であれば複数の試乗車を乗り比べて判断したい。
ロイヤル系同等のバランス感覚に機敏さをプラスしたアスリート系の足回り
いっぽうアスリートは、スポーティー指向とあってロイヤルサルーンとは足まわりが違う。ショックアブソーバーの減衰力を調節できるAVSも装着した。17インチタイヤが標準装着で、オプションでは18インチも選べる。
この組み合わせは17インチが良い。タイヤはロイヤルサルーンの17インチと同じ。試乗車は銘柄も共通だったが、乗り心地はAVSをノーマルモードに設定しても少し硬めであった。サスペンションの設定が異なるほか、ホイールのリム幅もロイヤルの7Jに対して、アスリートは7.5Jと少し左右に引っ張る。
なので乗り心地が硬めになる(しかし不快なほどではない)代わりに、同サイズのタイヤを履いたロイヤルサルーンに比べて操舵感は少し機敏。後輪の動きは落ち着いていて、バランス感覚はロイヤルサルーンと同等に良好だ。ロイヤルサルーンの運転感覚が穏やかすぎると感じたなら、アスリートを検討すると良い。
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