トヨタ 新型クラウン(プロトタイプ)試乗&解説|自ら”茨の道”を選んだトヨタの意図とは(2/3)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:茂呂 幸正
新型クラウンの走行性能&乗り心地
ここからは、新型クラウンのプロトタイプモデルに試乗した結果を、グレードごとに評価してゆく。
まずすべてのグレードに共通することは、走行安定性の向上だ。プラットフォームを刷新してホイールベースも70mm伸びたから、4輪が踏ん張る。特に後輪をしっかりと接地させるから、直進時でもカーブを曲がる時でも常に安心感が伴う。旋回中に危険に遭遇して回避操作をする時も、後輪が乱れなければ、落ち着いてハンドルやブレーキを操作できる。
ステアリングの支持剛性も高まり、小さな舵角から車両の向きが正確に変わるようになった。
要はボディの基礎部分から入念に造り込んだ結果、サスペンションが正確に動くようになっている。そうなれば走行安定性と併せて、乗り心地も向上する。重厚感が伴い、かつてのクラウンのような柔らかさは無いが快適だ。車両の挙動が穏やかなことも、安定性と乗り心地を両立できた秘訣となる。
新型クラウン グレード別評価|2.0ターボRS
2リッターのターボエンジンは、3.5リッターの自然吸気エンジンに匹敵する動力性能を発揮する。低回転域における過給効果の落ち込みも気にならず、8速ATの変速制御も含めて、先代型に比べると熟成された。
先代型はターボのクセが少々気になり、ロイヤルサルーンにはV型6気筒の2.5リッターエンジンを残したが、新型は2リッターターボに統合できた。高回転域の吹き上がりが活発だったりする特徴はないが、動力性能は1700kg少々の車両重量に合っている。
RSのタイヤサイズは18インチ(225/45R18)で、試乗車が装着する銘柄はブリヂストン・レグノGR-001だ。指定空気圧は前後輪ともに240kPaであった。
ショックアブソーバーの減衰力を可変させる機能が備わるが、全般的に乗り心地は硬い。それでも粗さはなく、引き締まり感が伴う乗り心地に仕上がっている。ショックアブソーバーを硬めに設定すると操舵に対する反応が機敏になり、軽快な運転感覚を味わえた。
新型クラウン グレード別評価|2.5ハイブリッドG
2.5リッターハイブリッドは、4気筒エンジンでも滑らかな加速感が特徴だ。通常の走行では、反応の素早いモーターの駆動力が立ち上がってエンジンを支援する。動力性能は自然吸気の2.8~3リッターに相当する。
アクセルペダルを深く踏み込むと、エンジン回転が先行して高まり、速度が追いかけるように上昇した。8速ATの2リッターターボに比べると、ハイブリッド特有の違和感とも受け取られるが、エンジン音は静かで滑らかに回る。
最もクラウンらしいパワーユニットだ。
タイヤサイズは17インチ(215/55R17)で、試乗車が装着する銘柄はヨコハマ・ブルーアースであった。指定空気圧は前後輪ともに240kPaとなる。
操舵に対する反応は18インチのRSに比べて穏やかだが、乗り心地は適度に柔軟でショックを直接的には伝えない。2.5リッターのハイブリッドを搭載したGは、快適性と安全性に重点を置いた以前のロイヤルサルーンに近い。
新型クラウン グレード別評価|3.5ハイブリッドRSアドバンス
このタイプは、V型6気筒の3.5リッターエンジンにハイブリッドを組み合わせて、動力性能は4.5リッター並みだ。有段ギヤを組み込んで10速の疑似変速が可能で、幅広い回転域で動力性能が高い。アクセルペダルを深く踏み込むと、登坂路でも活発に加速する。
エンジンノイズはレクサス LS 500hと同様意識的に響かせているが、少々わざとらしく耳障りに感じる。もう少し大人っぽい印象が好ましい。
また、V型6気筒エンジンにハイブリッドシステムを装着したので車両重量は1900kg近くに達する。カーブを曲がる時にも、ボディの重さを意識させる。
そしてカーブの出口付近でアクセルペダルを踏み込むと、高い動力性能も加わって、シャシーと足まわりに過剰な負担をかけてしまう。ほかのグレードと違って、横滑り防止装置の介入も頻繁だ。
タイヤはブリヂストン・レグノだが、もう少しグリップ性能を高めると良いと思う。
駆動方式は後輪駆動のみで、4WDを選べるのは2.5リッターハイブリッドに限られるが、動力性能と安定性のバランスを考えると、3.5リッターのハイブリッドにも4WDが欲しい。
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