トヨタ 新型クラウン 公道試乗│若返りを図り、スポーティサルーンに生まれ変わった15代目(2/2)
- 筆者: 河口 まなぶ
- カメラマン:小林 岳夫・茂呂 幸正
新たな時代の高級サルーンに相応しい感触の2.5リッター ハイブリッド
では、次は実際に走ってどうだったか?に移ろう。今回試乗したのは2.5リッターのハイブリッドを搭載した「G」と、2リッター直4ターボを搭載したRSアドバンスの2車種だった。
まず最初に乗ったのは2.5リッター ハイブリッドのG。これは走り出しからして驚かされた。
なぜならタイヤの最初のひと転がりがとても滑らかで、スゥっとスムーズに走っていく様はドイツの高級車にもない優れた感覚だったからだ。
このGに装着されていたタイヤは、専用開発となる17インチサイズのヨコハマ ブルーアースで、ショックアブソーバーはトキコ製だと伺った。開発でもとにかく、走り出しの滑らかさや低速域のスムーズな感覚を大切にしたそうで、そこには確かに新たな時代の高級サルーンに相応しい、そしてトヨタのクラウンに相応しい感触があったといえる。
GA-Lプラットフォームの良さ
今回のクラウンは、レクサス LCやLSも用いられているTNGAのGA-Lプラットフォームを共用する。このプラットフォームにおける僕の印象として、LCでは高速域での直進性が、LSでは乗り心地の硬さがやや懸念だった。もっとも使っているサスペションや細かな構成等は違うため、一概には言えないが、果たしてそれがクラウンではどうか?に興味があったわけだ。
しかしながら乗り心地に関しては、このGのノーマルダンパーの17インチはとても好印象で、これがGA-Lプラットフォームの良さと言われたら納得できるものに仕上がっていた。とはいえ今回は、撮影中心だったこともあり、街中と郊外のゆるやかなワインディングのみの試乗だったため、速度域は全般的に低めであったことは付け加えたい。その意味では高速での直進性は確認できなかったが、エンジニアの方はその辺りもだいぶ良いものになっていると胸を張って語ってくれたのだった。
2.5リッターのハイブリッドは全開にするようなシーンではまだゴムバンドフィールは残るものの、そうした使用は日常域ではないわけで、回してもせいぜい3000回転くらいまでだろう。そう考えるとアクセルと加速の関係は、さほど気にならないし、そのくらいの領域ではしっかりモーターの後押しを感じさせてくれてこちらも悪くない印象だった。
もっとも最近では、48Vを使ったマイルドハイブリッドが登場しており、こちらの方がむしろフルハイブリッドのトヨタのクルマよりも、発進時の滑らかさや力強さを巧みなフィーリングとともに実現していることを考えると、THSは今後さらにフィーリング面での改善が要求されるだろうとも思えた。つまり全体的に悪くはないが、フルハイブリッドとして出力もトルクも大きなモーターを使用しているメリットを、フィーリングにも活かして欲しいというのが本音だ。
繊細ながらも心地よいステアリング・フィール
そして今回のクラウンで、先の乗り心地の良さとともに驚いたのがステアリング・フィールの良さ。フロントサスペンションがダブルジョイントになり、路面からの衝撃をうまく吸収できるようになったこともあって、ステアリングシャフトのゴムのカップリングを外すことができたという。これもエンジニアの自慢のポイントのひとつ。これによって操舵にダイレクト感が増し、情報伝達も豊富になったという。その結果、路面の状態を巧みに伝えつつ、不快な振動等は排除したステアリング・フィールが生まれた。
実際に乗ってみると、操作感が軽く滑らかなのに情報伝達はしっかりしており、とてもスッキリとした感触を伝える。今までの、まったりとしたステアリング・フィールからガラリと代わったため、これまでのユーザーは一瞬軽すぎと感じるかもしれないが、モノとしての良さはこちらが上だろう。特にこの17インチタイヤとノーマルのダンパーの組み合わせでは、繊細ながらも心地よいステアリング・フィールを味わえたのだった。
2リッター ターボのRSアドバンスでは硬さが気になった場面も
そして次に試乗したのは2リッター ターボのRSアドバンス。聞けばこのモデルが、今回のクラウンの中では最もスポーティだという。他のエンジンを搭載するRSやRSアドバンスに対しても、このモデルだけがフロアにブレースを入れたりするなどして、走りを徹底強化したそうだ。今回のクラウンでは、クラウン史上で初めてニュルブルクリンクでテストを行なったことを謳っているが、まさにこのモデルがそこから生まれたのだろう。
もっともニュルでの開発の話を聞いてみると、ニュルを走らせたのは一度だけとのことなので、あくまでも走りの確認をしたということだろう。実際、ここで定常的にテストすると、もっともっと深みが増す部分があるはずだ。
それはさておき2リッター ターボのRSアドバンスは、走り始めから端的に硬さが気になった。
このモデルは専用開発のブリヂストン・レグノを履いており、ショックアブソーバーはAVSとなる。つまり電子制御の可変タイプだ。
試乗会場の周辺道路は、滑らかな路面と荒れた路面が混在する。滑らかな路面では悪くないが、路面が荒れると振動が激しくスポーティにもほどがあると思えてしまう。ちなみに走行モードは5段階に切り替えられるがコンフォートでもハッキリと硬い。
せっかく専用開発したレグノだが、今回の試乗会のような街中等が多いシーンでは美味しいところが見えづらい。伊豆のサイクルスポーツセンターのような高入力、高応答なシーンでは気持ち良さが得られるのかもしれないが、今回荒れた路面では、ランフラットタイヤを履いているかのような(もちろん、実際は非ランフラットタイヤ)ドタバタも気になるところだ。
スポーティなテイストだが、更なるブラッシュアップに期待
エンジンは245ps/350Nmで動力性能に不満はない。踏み込めば爽快な加速が生まれる。ただしその気持ち良さと引き換えに燃費は12.8km/Lとなる。もっともクラウンユーザーは燃費はあまり気にしないだろうが、実用燃費を考えると燃料タンクとの関係で割と頻繁にガソリンスタンドに行くことになるのではないだろうか。
さきのダンパーの硬さによって、走りのスポーティな感覚は強くある。運動性能的にも高そうな印象を与えてくれる。
しかしながら、先に試乗したGの17インチとノーマルダンパーの組み合わせの美味しさが忘れられないし、あれができたのに何故こっちはガサツなのか? と思えてしまった。この辺りをエンジニアにも聞いてみたが、AVSはこれまでの機構の延長であり、やはり本音としては新たな世代のものを開発したいという。
確かにその通りで、電子制御による減衰力調整が行える割に、体感できる乗り心地の幅(スポーティからコンフォートまで)がやや狭いと感じるのは、世代の古さか制御の限界か。最近の欧州のサルーンが採用している電子制御の減衰力可変システムに比べると、ちょっと見劣りする感があるのは否めないところだ。
とはいえ、この印象は2リッター ターボのRSアドバンスに限った話。他のRSやRSアドバンスは、ブレース等は入らないとのことなので、もう少し穏やかな乗り味・走り味が生まれているかもしれない。この辺りも機会があれば確認はしたいところだが…。
新設「クラウンRS」のスポーティテイストを河口まなぶはどう評価したのか!?
それはさておきまとめてみると、走りに関しては標準車のGの17インチ、ノーマルサスが好印象で、これは多くの人が想像するクラウンらしさが走りに表現されていた。一方で2リッター ターボのRSアドバンスはヤンチャ過ぎた感が強い。クラウンであれば、もう少し懐の深い落ち着きとスポーティを融合して欲しいと思ったのだった。
しかしながら、販売のことを考えたらRSやRSアドバンスなのだなと思えるのも事実だ。この手のサルーンは欧州のライバルも含め、売れるのはスポーティな仕様である。実際にクラウンも先代の販売比率では、アスリートが6割を占めていたとのこと。
平均年齢が66歳のクルマの6割が、スポーティなアスリートを選んでいるという事実…。そこからもサルーンはスポーティ、が鉄板なのである。
RSの外観で17インチのノーマルダンパーという組み合わせが欲しくなる
なので僕は今回、結論として思ったのだが、今回のクラウンにもう1つグレードを追加したら良いのではないか?ということ。
僕のアイデアは、外観はRSで走りは標準車の17インチとノーマルダンパーという組み合わせである。
平均年齢66歳の6割がアスリートを選んでいた理由は、世のサルーンの流れとも合わせて、間違いなくスポーティが魅力だったからだ。しかしながら、魅力を感じるスポーティは見た目が多くを占めるのも事実。誰だって走りは心地よいことに越したことはないわけで。
もっとも今回のクラウンでは、まだ乗れてない仕様がたくさんあるから、僕の思うようなモデルがそこには隠れているのかもしれない。
けれど、少なくともRSは、現状のAVSではなく新世代の進化したものを採用した方が、絶対に高い評価が得られるはずだ。
実はこれ、同時に開催されたカローラスポーツの試乗会でも感じたこと。カローラスポーツもAVSより、KYBのノーマルダンパーの方が走り出しが滑らかで好印象だった。その意味でも、次の進化に期待したいRS系である。
そして進化したRSならば、これぞ40~50代が輸入車からの乗り換えも意識するのではないだろうか?
[TEXT:河口 まなぶ/PHOTO:小林 岳夫・茂呂 幸正]
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