トヨタ 新型オーリス 試乗レポート／松下宏(3/3)

こちらが本来の姿！？ 1.8リッター版は活発な走り

1.8リッターエンジン搭載車には「180G」と「RS」があり、それぞれに“Sパッケージ”の設定がある。

このうちRSは“6速MT車のみ”という今どきのクルマとしては驚きの設定だ。新型オーリスがスポーティさを追求したクルマであることを象徴するグレードである。

また、1.8リッター車はいずれもリアサスがダブルウィッシュボーン式とされているのが特徴だ。

RS“Sパッケージ”のマニュアル車に乗ると、クルマを操っているという実感を感じる。特にCVT車と比べたら、走りの実感を格段に強く感じる。短いストロークでキチッと決まるシフトレバーの操作感も上々だ。

同じ1.8リッターでもRS用のエンジンはCVT用のエンジンに比べて僅かながら動力性能が高められていて、よりスポーティな走りが可能だ。トランスミッションの違いのほうが大きいので、動力性能の差は分かりにくいが、ボディに見合った実力で楽しく走らせることが可能だ。

6速MTのギア比はやや低めに設定されていて、その分だけ力強い走りが可能。逆にいえば、時速80kmで2000回転、時速100kmでは2600回転くらいで回るため、高速燃費などがあまり良くないかも知れない。

足回りや1.5リッターエンジンの搭載車とはギア比が大きく異なるステアリングのフィールなどは、初代オーリスで感じたヨーロピアンテイストにあふれたものとは違い、乗り心地にも配慮したかなり柔らかめの印象。

といっても単に柔らかいだけの足回りと違って操縦安定性とのバランスに優れていて、今の時代の足回りはこうした味付けのほうが適しているのだが、初代オーリスのインパクトが今でも鮮明に記憶に残っているだけに、物足りなさを感じる部分もあった。

ATでも楽しめる180G“Sパッケージ”の走り

AT車限定免許のユーザーがスポーティな走りを楽しみたいなら、180G“Sパッケージ”が良い。CVT仕様だが、7速シーケンシャルシフトマチックに加えてパドルシフトも備えているので、相当にスポーティな走りが可能。気持ち良い走りが楽しめる1台だ。

180GのCVTにはスポーツモードも備えられていて、これを選択するとアクセルを踏み続けていても、5,000回転と6,000回転あたりでステップを刻みながら加速していく感じになる。高速道路の合流などのときに、加速感を実感できる設定だ。

スポーティさの追求が今回のオーリスの大きなテーマとされたが、スポーティさという価値観はクルマに必須のものとはいえ、今の時代にマッチしたものとはいえない。エコであったり、多人数乗車であったりするのが、今の時代のクルマに対する一般的な価値観である。

あえてそれに挑んだオーリスのクルマ作りは評価されるべきだと思うが、それがどれだけ多くのユーザーに受け入れられるかは、なかなか難しいだろうと思う。

特に6速MT車だけが設定されたRSについては、今どきの若いユーザーがAT車限定で運転免許を取得するのが普通であることを考えると、どれほど売れるかは疑問である。

オーリスは良いクルマとしてまとめられたが、クルマのデキにかかわらず、その行く手には険しい道のりが待っていると思う。

トヨタ 新型「オーリス 180G“Sパッケージ”」主要諸元

全長x全幅x全高：4275x1760x1460mm／ホイールベース：2600mm／車両重量：1280kg／エンジン型式：2ZR-FAE／エンジン種類：直列4気筒 DOHC／総排気量：1797cc／最高出力：143ps(105kW)/6200rpm／最大トルク：17.6kg-m(173N･m)/4000rpm／使用燃料：無鉛レギュラーガソリン(※RSは無鉛プレミアムガソリン)／トランスミッション：Super CVT-i(自動無段変速機)／駆動方式：前輪駆動(FF)