アルファード人気やレクサスミニバン投入の背景にある、中国富裕層の深層心理とは

  • 筆者: 加藤 久美子
  • カメラマン:LEXUS・加藤 博人・オートックワン編集部

年2800万台超の新車が売れる巨大市場「中国」で日本の高級ミニバンはブームを起こせるか?

2009年にアメリカの新車販売台数を超え、世界一の自動車王国となった中国。かつてはセダン中心だった市場も2000年代初頭以降はSUVの人気が急拡大し、セダンにひっ迫する販売台数となっている。そして、近年は日本のお家芸?ともいえる「高級ミニバン」の人気がじわじわと高まっており、このたびの上海モーターショーでトヨタ自動車がアルファードに加えて、ヴェルファイアを発売。さらに、LEXUSは初のミニバンLM300hの導入を世界発表した。

>>中国富裕層のプライドをくすぐる、日本製ミニバン[画像50枚超]

中国でのミニバンとはどんな車?

中国でのミニバンは「微型バン」(日本の軽ワンボックスサイズ)と「MPV」(微型バンより大きなミニバン)にカテゴリー分けされており、2018年の販売台数において合計シェアは約7.8%である。しかし、7.8%といっても、年間2800万台超が売れる中国では210万台を超える。

アルファードやヴェルファイア、そしてLEXUS LM300hはともにMPVにカテゴライズされるが、その中でもとくに高級・超高級なモデルとなる。実際、このような高級MPVは中国ではまだ少数派だ。MPV自体、ビジネスユースがほとんどで、高級なものはVIPの送迎車となる。日本のような「ミニバン=ファミリーカー」という使われ方はほとんどない。

また、日本では車高低め&エアロパーツで武装したミニバンが人気だが、中国を含むアジアでは光り物を多用するなどしたゴージャスな外観と、豪華装備満載の内装が人気だ。中国では最低地上高の高さがステイタス…とは言い過ぎだが、都市部を除いてはまだ舗装されていない道路や段差のある道路が多いため、ロードクリアランスをしっかり確保した車に人気が集まる。VIP送迎時に凹凸の激しい道路でお腹がつかえて走れなくなったりしたら大変な恥となる。中国でSUVが人気なのも同様の理由がある。

富裕層に大人気のアルファードに加え、新たにヴェルファイアも追加

さて、2010年の北京モーターショーで初披露され、同年から中国での発売が開始されたアルファードは日本(三重県・トヨタ車体 いなべ工場)で生産を行い、中国に輸出されている。日本からの輸入車とあって、中国での販売価格は諸々含めて1500万円以上の超高級車となるが、富裕層に大人気の車である。

トヨタ中国広報に、中国における高級ミニバン市場の現状について話を伺った。

筆者:中国におけるアルファードはどのような存在でしょうか?

トヨタ中国広報:中国ではアル・ヴェル共にMPVというカテゴリーに入ります。ショーファーカーとしての利用が多く、会社トップやお金に余裕のあるお客様で、個人ユース(自分で運転する)は少ないですね。中国では高級ミニバンのニーズが高まっており、広汽トヨタで販売中のアルファードに加え、このたび一汽トヨタにヴェルファイアを追加しました。アルファードとヴェルファイアで、日本のようなキャラの違いはあまりないのですが、お客様ニーズにお応えるできるよう選択肢を増やしました。

筆者:今後、中国でのミニバン市場(MPV)は拡大すると予想されていますか?

トヨタ中国広報:アル・ヴェルを含むミニバン(MPV)市場は現状6%(2018年)程度ですが、今後増えると予想しています。ただし、最終的にはお客様が判断するものであり、お客様にトヨタ車を選んでいただけるように、今後も魅力ある商品を開発していきたいと思っています。

<ちなみに>

トヨタ車の中でとくにアルファードの人気が高まっているわけではなく、2018年の販売台数5車種は、1位カローラ、2位レビン、3位カムリ、4位RAV4、5位ハイランダーだそう。とくに販売台数の伸びが大きいのは、カローラ(2010年約17万台→2018年約38万台)とRAV4(同9万台→15万台)の2車だが、トヨタ車全体で2010年の約85万台から2018年は約148万台に販売台数が伸びている。

アルファードなどの高級ミニバンが富裕層に大人気となる「知られざる深層心理」とは

※写真はアルファード ロイヤルラウンジ(4人乗り:日本仕様)

中国のお金持ちは日本や欧米の高級車が大好きである。トヨタも日産も、GMもメルセデスもアウディも中国の自動車メーカーと合弁会社を作り、中国市場向けに数多くの車を生産、販売してきた。

しかし、中国のさらなるお金持ち、いわゆる富裕層と言われる人々がもっと好む車がある。それは…本当の意味での外国車だ。中国では生産をしていない、日本やドイツから輸入された高級車こそ、富裕層にとっては真の高級車となる。関税を引き下げたとはいえ、諸々の経費で値段もかなり高額となるがそこもまた、富裕層のプライドをくすぐるのだろう。

ちなみに中国では、トヨタブランドの車でも現地で生産された車には、後ろに「一汽豊田」(第一汽車とトヨタ自動車の合弁会社で生産された車という意味)、や「広汽豊田」(同じく広州汽車との合弁)などの漢字のエンブレムが付けられる。

しかし、中国では生産していないLEXUS全車やアルファード、ヴェルファイアにはこれらの漢字エンブレムはつかない。ドイツや日本で生産された本当の外国車…富裕層にとってはこれこそが最高のステイタスであり、真の高級車だと考えている。

超人気のアルファードに続いて、このたびヴェルファイア、そしてLEXUS初のミニバンLEXUS LM300hまでが投入されて、今後、中国での高級ミニバン市場はますます拡大していきそうだ。

[筆者:加藤 久美子/撮影:LEXUS・加藤 博人・オートックワン編集部]

【レクサス公式動画】ntroducing the Lexus LM

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加藤 久美子
筆者加藤 久美子

山口県下関市生まれ 自動車生活ジャーナリスト 大学時代は神奈川トヨタのディーラーで納車引き取りのバイトに明け暮れ、卒業後は日刊自動車新聞社に入社。出版局にて自動車年鑑、輸入車ガイドブック、整備戦略などの編集に携わる。95年よりフリー。2000年に第一子出産後、チャイルドシート指導員資格を取得し、チャイルドシートに関わる正しい情報を発信し続けている。 得意なテーマはオリジナリティのある自動車生活系全般で海外(とくにアメリカと中国)ネタも取材経験豊富。愛車は22年間&26万km超の916アルファスパイダー。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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