王者“アルファード”も最初は挑戦者だった! 20年に及ぶLクラスミニバン「トヨタ アルファード」成功への歴史を振り返る
- 筆者: 遠藤 イヅル
- カメラマン:TOYOTA・NISSAN・MOTA編集部
Lクラスミニバンの王者、トヨタ アルファード。現行型の3代目は2015年の登場だが、発売5年を経た2020年度の平均販売台数は9000台近い売れゆきを見せている。どのトヨタディーラーでもアルファードが買えるようになった効果もあれど、コロナ禍という世相を考えると、驚きの数字といえる。でもアルファードが売れるのには、理由がある。力強いデザイン、高級感あふれる内装、高い静粛性と乗り心地を持ち、それでいてミニバンの使い勝手の良さ、多人数乗車も可能なのだから。かつてのバブル期に、高級セダンたるクラウンが、同じような販売台数を記録していたことを思い出す。
そんなアルファードも、初代がデビューして早いもので約20年。3世代にわたるキング・オブ・ミニバンの軌跡を、足早に振り返ってみたい。
忘れてはいけない!? アルファードの前身「グランビア」
クルマの売れ筋がセダンやハッチバックだった時代から、高級1BOXワゴンの需要は少なからずあった。そこでトヨタは1995年、トヨタ初の3ナンバー専用車体・短いボンネットを持ったミニバンスタイルの上級1BOX「グランビア」を送り出した。
だが1997年、日産は「キャラバン/ホーミー エルグランド」を発表。商用車と共用しない専用車体、押し出しの強いデザイン・優れた操縦性、強力なV6 3.3Lエンジンによって、時には月間1万台以上を売るほどのヒット作に。高級ミニバンというジャンルを開拓した。それを受けてトヨタはグランビアのマスクをド派手に変更し、兄弟車の「グランドハイエース」も揃えてエルグランドに対抗した。
打倒エルグランド! 売れる要素を盛り込んだ初代アルファード
しかしそれでもエルグランドに勝てなかったため、トヨタは「打倒エルグランド」を決意。エルグランドを研究した成果を盛り込み、2002年に初代アルファードを登場させた。
縦置きエンジン・後輪駆動だったエルグランドと異なり、アルファードは横置きの前輪駆動としたことで、フロア高が抑えられ居住空間が拡大。エルグランド以上に大きなヘッドライトとグリル、ふんだんに用いられた木目調パネルなどの内外装で、さらなる高級感をアピールした。トヨタの計算は見事に当たり、アルファードはコンスタンスに販売台数を伸ばしていった。
一方のエルグランドは、ほぼ同じタイミングで2代目に発展したものの、販売面ではアルファードに差をつけられてしまった。これには、当初ガソリンエンジンがV6 3.5Lしかなかったエルグランドに比べ、アルファードでは、燃費や税金の面で有利で、販売価格も下げられる直4 2.4Lエンジンを設定したことも理由だった。
初代アルファードには、販売店の違いによって「アルファードG」と「アルファードV」があったが、細かい意匠を違える以外、基本的に内容は同じだった。
2003年には燃費面でさらにアドバンテージを広げたハイブリッドモデルも設定。対エルグランドのみならず、Lクラスミニバン市場でも盤石の体制を築いていくこととなる。
初代のコンセプトを熟成した2代目アルファードはハイブリッドモデルも進化
2008年、2代目アルファードが登場。この際、アルファードVは「ヴェルファイア」として独立した。
2代目アルファードではエスティマとの差別化のため、グレード構成のメインが280PSを誇るV6 3.5Lエンジン搭載モデルへ移行した。コンセプトは初代を踏襲しており、エクステリア上でも、特徴だったリアスライドドアのウインドウ形状が残されたほか、インテリアの高級感は一層アップ。延長されたホイールベースによってさらに室内は広くなり、3列目シートの跳ね上げ方法も改善された。これらの地道な改良も功を奏して、2010年頃にはアルファード+ヴェルファイアの年間販売台数は約10万台に達している。
2011年にはマイナーチェンジを行ない、その際にハイブリッドモデルが復活した。メカニズムは「THS II」に発展。駆動方式は電気式4WDの「E-Four」である。10・15モード燃費は16〜19km/Lをマークした。
なおこの代から、中国市場など海外での販売も始めており、日本同様にエグゼクティブカーとしても高い評価を得ている。
さらなる力強さと高級感を手に入れた3代目アルファード
そして2015年、現行型の3代目アルファードが2代目ヴェルファイアとともにリリースされた。
外観デザインは、一目見てアルファードとわかる意匠を残しつつ、ワンモーションフォルムからあえて短いボンネットの高さを強調するスタイリングに変更。メーカー自らが「アクが強い」と称するほどに目一杯広げられた巨大なグリルも目を引いた。
グレード構成は、従来通り標準スタイルとエアロ系の2本立てだが、後者ではさらにド派手で押しの強いマスクを得た。高級セダン・リムジンの代わりに、VIPカー用途でも使用される「高級車」としてのポジションを得たアルファードだけに、内装の仕立てやデザインは、もはやミニバンという枠を超えた設えとなった。
走りの質も磨きがかかり、ミニバンながらも不安のない操縦性を実現。直4ガソリンおよびハイブリッド版のエンジンは2.5Lに変更されたが、ハイブリッド版の燃費はJC08モードで18〜19km/L台となっており、同モードでは16〜17km/L台だった2代目よりも数値が向上している。
2017年のマイナーチェンジでは、フロントマスクが一層派手に。いまや顔のほとんどがメッキグリルなのでは?という威圧感だが、ますます売れ行きに拍車がかかっているのは、冒頭に示した通りである。
デビュー20周年である2022年に登場すると噂される4代目アルファードは、どんな姿やコンセプトで出現するのだろうか。今から楽しみに待ちたいと思う。
[筆者:遠藤 イヅル/撮影:TOYOTA・NISSAN・MOTA編集部]
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