スズキ スペーシア 試乗レポート/渡辺陽一郎(3/4)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:オートックワン編集部
フロントスタビライザーが非装着の「G」グレード
ならばGはどうか。タイヤは13インチで、ボディの傾き方を制御するフロントスタビライザーが省かれている。全高が1,700mmを超える軽自動車としては不安を誘う。
試乗を開始すると、14インチタイヤを履くXに比べて、細かな振動を伝えにくいことに気付いた。指定空気圧は高めで快適とはいえないが、Xに比べると違和感は少ない。操舵に対する反応は、Xよりも鈍く曲がりにくい。先に述べた背の高い軽自動車に多いパターンだ。
スタビライザーが非装着ながらも、グラッと唐突に傾く不安感はなく挙動を鈍く抑えてバランスを取っている。この使い分けは、ワゴンRに比べて進化した。
ワゴンRの場合、フロントスタビライザーを備えたスティングレーの走りは良いが、標準ボディは非装着でタイヤは14インチになりバランスに欠ける。
その点、スペーシアは穏やかな方向で安定させる13インチ、適度に曲がりやすいフロントスタビライザー付きの14インチという組み合わせで不都合を感じにくい。ここまで緻密に足まわりを煮詰めたなら、横滑り防止装置も備えるべきだろう。サイド&カーテンエアバッグも欲しい。
これらを装着すれば、「もはや安全性でもコンパクトカーに負けません」と胸を張れる。
ターボ車・4WD車含め全車がエコカー減税100%適合
ターボのJC08モード燃費は26km/L。ノーマルエンジンとは違って、ワゴンRスティングレーTの26.8km/Lを下まわるが、動力性能を考えれば立派だ。エコカー減税の免税(100%減税)も受けられる。
Tを運転していて「多角的なダウンサイジングだ」と感じた。居住空間の広さ、荷室の容量や使い勝手の高さは、背の高いコンパクトカーと同等かそれ以上。動力性能も1.1リッタークラスだ。
その一方、ボディは大幅に小さくて燃費性能はコンパクトカーの平均水準を上まわる。加えて税額が安い。進化した軽自動車であると同時に、コンパクトカーと同等の機能を小さなボディとエンジン、安い税額で利用できる。
リアシートを畳んで得られる広い荷室、豊富な収納設備などは前身のパレットに準じるが、スペーシアでは前述のようにリアサイドウィンドウに引き出し式のロールサンシェードを装着。
グローブボックスの内部にボックスティッシュを収めれば、インパネトレイの小さな開口部からティッシュペーパーを取り出せる。子育て世代のユーザーをターゲットに、さまざまな工夫を盛り込んだ。ユーザーのすべてがボックスティッシュの使いやすさを求めるとは限らないが、このような装備にスペーシアの世界観や考え方が象徴されている。
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